2013-05-31 Fri 10:05
ご報告が遅くなりましたが、大修館書店の雑誌『英語教育』2013年6月号が発売になりました。僕の連載「切手の帝国:ブリタニアは世界を駆けめぐる」は、今回は、先ごろ経済危機で話題になったキプロスを取り上げました。その記事の中から、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、キプロス独立後の1964年、キプロス駐留の英軍基地内・野戦郵便局から差し出された葉書です。 キプロスは1960年に英国から独立しましたが、地中海における戦略上の拠点であったため、英国は、キプロス国家の独立を認めた後も、新政府と協定を結び、島内の英軍基地を手放さず、基地周辺のアクロティリとデケリアは、英国の“主権基地領域”として、英国の統治が継続されることになりましした。 英軍基地と主権基地領域は英国の“領土”ですから、基地内の郵便局から差し出される郵便物には、当然のことながら、英国の切手が貼られています。ただし、野戦郵便局の常として、防諜上の理由から、消印には地名は表示されず、番号が表示されているだけですが…。 1974年にトルコがキプロス島北部に侵攻し、北キプロス・トルコ共和国(国際的には非承認)を樹立しましたが、その際、トルコ軍はイギリスとの戦争を避けるため、基地領域の付近で進軍を停止しています。 こうした経緯もあって、キプロス国内には、英軍基地の返還を求める声がある一方で、抑止力として基地の存続に期待する人も少なくありません。 さて、今回の記事では、キプロス最初の加刷切手等もご紹介しつつ、キプロスとその郵便についての概要をご説明しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ イベントのご案内・明日開催です! ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-30 Thu 18:15
香港のピークトラムが1888年5月30日に営業運転を開始してから、今日でちょうど125年になりました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1988年、英領時代の香港で発行されたピークトラム100年の記念切手です。 1867年、香港の英総督府は、市街地後方、址旗山(ヴィクトリア・ピーク)の標高1700フィート(約518メートル)の地点にあった軍の保養所を接収し、総督の別荘、マウンテン・ロッジとしました。この別荘を中心に山の斜面が切り崩されて道が作られ、背後にイギリス人の家が建ち始めます。また、1873年には観光客をあてこんで、ヴィクトリア・ピーク・ホテルも開業しました。 当初、香港の“山の手”の住人たちは、海沿いの市街地との往復にはセダンチェアとよばれる籠(小型シートの余白に描かれています)を使っていましたが、やはり不便であったため、スコットランド高原鉄道の技師であったフィンドレイ・スミスが中心になって、山頂と市街地を結ぶケーブルカーの建設が計画されます。ちなみに、スミスは、ピーク・ホテルの開業に関わっていただけでなく、自身も、現在の山頂駅に隣接する土地を購入して住んでいました。まさに、“必要は発明の母”といえましょう。 スミスは、ピーク・ホテルの経営者で、香港で手広く事業を営んでいたフィニアス・ライリーを後援者につけ、1881年5月20日、香港総督のジョン・ポープ・ヘネシーに“植民地のいっそうの繁栄”と“人口の増加”を理由としたトラムの建設計画を提出するとともに、建設資金調達のため、7月2日付の官報で建設債券を公募。その後、用地買収などの準備期間を経て、1885年9月から建設工事が開始され、1888年5月28日、山頂纜車、すなわちピークトラムが開通しました。 ピークトラムはセント・ジョンズ教会ちかくの花園道(ガーデン・ロード)駅=山頂駅の間を結ぶケーブルカーで、その距離は1.3キロ、標高差は363メートル、斜度は最大27度です。 当時、車輌の部品は全てイギリス製で、スコットランド人のスミスが組み立てました。運転手や車掌など、機械を動かすスタッフは全員がイギリス人で、住民の圧倒的多数を占める中国人に対してイギリス人の能力を見せつけていました。ちなみに、トラムの運行は15分間隔で、山頂までの所要時間は約8分でした。 1888年5月28日には、香港総督のウィリアム・デボーら要人を乗せた1番列車が運行され、翌29日には開業記念として希望者が無料で乗車できました。このため、正規の営業開始は5月30日からということになります。 なお、トラムの開通に先立ち、1887年、総督府はピーク居住法令を発し、中国人をはじめ有色人種の山頂への居住を実質的に禁止しています。現在の感覚からすると露骨な人種差別ということになるのでしょうが、この時代、高温多湿の香港では、しばしば、中国人街がコレラやペストなどの伝染病の発生源となり、実際に、現地駐留のイギリス兵も少なからず亡くなっていましたからねぇ。まぁ、気持ちはわからないでもないですな。 ちなみに、拙著『香港歴史漫郵記』では、ピークトラムとその歴史についても詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-29 Wed 12:03
今月23日に世界最高齢の80歳で世界最高峰エべレスト(標高8848メートル)登頂に成功した冒険家の三浦雄一郎さんが、けさ(29日早朝)、羽田空港着の全日空機で帰国しました。くしくも、きょうは1953年5月29日にエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが人類初のエべレスト登頂を果たしてから60周年という日でもありますので、エべレスト切手の中から、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1953年10月2日にインドが発行した“エべレスト征服”の記念切手で、エべレスト頂上付近の風景が取り上げられています。“1953年5月29日”の日付が入っているのも良いですな。 さて、エべレストの初登頂に成功した2人のうち、ヒラリーはニュージーランド人ですが、テンジンの身元はちょっと複雑です。 テンジンは民族的にはチベット人ですが、正確な出生日は不明、出生地についても、エべレスト山麓のネパール・クンブ地方とする説が有力ですが、一部には、1914年の出生当時は中国の統制が及んでいなかったチベットのツェチュという説もあります。 少なくとも、幼少期にはクンブ地方で過ごしていたことが確認されていますが、その後、ネパールの首都カトマンドゥに行き、さらに、インド・西ベンガル州・ダージリンを拠点とするようになりました。なお、1940年代には一時、現在のパキスタンに相当する地域で生活していたこともあるようです。 1930年代以降、英国隊によるチベット北麓からのエベレスト挑戦にポーターとして参加したほか、インド亜大陸のさまざまな登山に参加していた経験を買われて、1953年5月、ジョン・ハント卿の探検隊に同行したことで、人類初のエべレスト登頂者となりました。 さて、登頂成功後、ヒラリーとテンジンは一躍世界的な英雄になりました。特に、テンジンの居住地であるインドでは、1947年の独立から間もない時期でもあったため、インドを植民地支配していた英国人ができなかった偉業をインド人(テンジンはネパールとインドの二重国籍です)が達成したということが大々的に喧伝されました。今回ご紹介の切手も、そうした観点から、登頂成功のニュースを受けて急遽制作され、10月2日の発行という段取りになったものと思われます。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-28 Tue 11:03
マリ暫定政府は、きのう(27日)の閣議で、当初、7月7日に予定されていた大統領選挙を、28日に延期実施する法案を承認しました。選挙で1位になった候補者の得票数が過半数に達しない場合の決選投票は8月11日に行われる予定です。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2010年に発行されたマリ独立50年の記念切手で、大統領府を背景に、民族服姿の歴代大統領の写真が取り上げられています。 取り上げられているのは、手前から、初代大統領のモディボ・ケイタ(在任:1960-68)、第2代大統領で軍事独裁政権のムーサ・トラオレ(在任:1968-91)、第3代大統領のアルファ・ウマル・コナレ(在任:1992-2002)、第4代大統領のアマドゥ・トゥマニ・トゥーレ(在任2002-12)です。このうち、民主的な選挙によって大統領が後退したのは、2012年のコナレ→トゥーレのみです。なお、1991年のトラオレ政権崩壊後、1992年にトゥーレ政権が発足するまでの間は、暫定政権として人民救済移行委員会が組織され、委員長のトゥーレ(後に大統領)が国家元首としての役割を果たしていました。 1992年に施行されたマリの現行憲法(第3共和国憲法)では、国家元首として国軍の最高司令官でもある大統領は1期5年で任期は2期までと規定されています。また、大統領は政府の長として首相を任命し、首相は国会に対して責任を負い、不信任案が可決された場合には国会を解散することができます。政党結社の自由に関しては、宗教や民族を基盤とした政党、地域政党、性別による差別を主張する政党は禁止されているものの、それ以外の規制はありません。 2012年3月の軍事クーデターでは、一時、第3共和政憲法は停止されましたが、国際的な批判を受け、同年4月、クーデターによって政権を掌握した“民主主義と国家の再建のための国民委員会”は、トゥーレ大統領の退陣を条件に、第3共和政憲法に従い、国会議長のディオンクンダ・トラオレが暫定大統領として次期大統領選挙の実施と民政への復帰を目指す、ということで旧トゥーレ政権との合意が成立。現在の暫定政権が発足しました。 冒頭にもご紹介の通り、当初、暫定政権による大統領選挙の実施は今年7月7日の予定でしたが、フランスの軍事介入により北部の主要都市を政権側が奪還した後も、マリ国内の治安が安定しないことに加え、周辺諸国へ逃れた難民の帰還問題などもあり、予定通りの実施はきわめて困難と見られていました。今回の暫定政府の決定は、当初予定から3週間の延期ということですが、その間に状況が劇的に改善されるとは考えにくいので、あるいは再延期ということもあるかもしれません。 なお、2012年の軍事クーデター以降のマリ情勢ですが、拙著『マリ近現代史』でも今年4月の時点まではフォローしておりますので、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-27 Mon 10:57
レバノンの首都ベイルート近郊のイスラム教シーア派居住区に、きのう(26日)、ロケット弾2発が撃ち込まれました。シリアの民主化要求デモが2011年3月に起きて以来、ベイルート近辺が攻撃されるのは初めてのことで、前日(25日)、レバノンのシーア派武装組織・ヒズボラがアサド政権を支援して戦闘を続けると明らかにしたことに対して、シリア反政府側についたアルカイダ系組織が報復したとみられており、シリア内戦がイスラム過激派を巻き込んで隣国レバノンに波及した格好です。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1923年12月にアレッポからパリ宛に差し出された書留便で、シリアO.M.F.加刷切手とシリア=大レバノン共用切手が貼られています。 第一次大戦中、英仏が結んだサイクス・ピコ秘密協定により、戦後、現在のシリア・レバノンならびにイラクの北部にほぼ相当する地域はフランスの勢力圏とすることが規定されます。しかし、大戦が終結した時、フランスはベイルートやアレキサンドレッタ、ラタキア対岸のルアド島などを占領していたものの、その占領地域はごくわずかで、ダマスカスを解放したのはファイサルのアラブ軍とアレンビーのイギリス軍でしたし、内陸部の広大な地域はイギリスの占領下に置かれていました。さらに、フサイン・マクマホン書簡での密約(アラブがイギリスと共にオスマン帝国と戦えば、戦後、アラブの独立国家樹立を認めるというもの)もあって、シリア地域では、ダマスカスの陥落とともに、ファイサルを首班とするアラブ政府の樹立が宣言されていました。 そこで、大戦の終結によりフランスとアラブの双方から密約の履行を迫られたイギリスは、ヴェルサイユ会議で、戦後のシリア・パレスチナ地域を、①イギリス支配の南部OETA(敵国領土占領行政区域:Occupied Enemy Territory Administration):現在のイスラエル国境とほぼ同じパレスチナ、②アラブ支配の東部OETA:アカバからアレッポにいたる内陸部、③フランス支配の西部OETA:ティールからキリキア(シリアとトルコの国境地帯で、現在はトルコ領)にいたるレバノンとシリアの海岸地帯、に分割するという妥協案を通します。 これに対して、フランスは、あくまでもサイクス・ピコ協定の遵守を求め、シリアにおける自国の権利を主張。このため、フランスとアラブの板ばさみとなったイギリスは、1919年9月、シリア地方からの撤兵を表明。これを受けて、同年11月以降、西部OETAではフランス軍が、東部OETAではアラブ軍が、それぞれ、イギリスに代わって占領行政を担当することになりました。 なお、イギリス軍の撤退を受けて、ファイサルのアラブ政府は自らの存在を既成事実化して国際社会の認知を受けるべく、1920年3月、ダマスカスでシリア国民大会を開催し、ファイサルを国王とする立憲君主制のアラブ王国の独立を宣言します。 しかし、英仏両国はアラブ王国の存在を無視し、1920年4月に始まったサンレモ会議(同年1月に発足した国際連盟の最高理事会)では、フランスは、イラク北部のモースルの支配を放棄する代償として、イギリスに対して現在のシリア・レバノンの地域を自らの勢力圏とすることを最終的に承認させることに成功。当然、アラブ側は完全独立の要求と委任統治の拒否を決議してこれに抗議しましたが、同年6月、英仏両国は、これを無視して、それぞれの勢力圏内での委任統治を開始。全シリアを軍事占領したフランスは、同年7月、ファイサルを放逐してアラブ王国を崩壊させました。 フランスはこうして支配下に置いた委任統治地域を、レバノン国・ダマスカス国・アレッポ国・アラウィ自治区に分割。各地域に知事を置き、これを高等弁務官が統括するという古典的な分割統治政策を行います。 このうち、レバノンに関しては、1920年8月、“大レバノン”が設置され、オスマン帝国時代の1860年に設置された旧レバノン県(キリスト教徒自治区)にトリポリ、ベイルート、シドンなどの海岸地区とベカー高原を加えた区域が、内陸シリアとは別の行政単位となりました。この“大レバノン”は、旧レバノン県に比べて面積は2倍以上になりましたが、キリスト教系住民が人口の過半数を維持することを最優先にして、これ以上は拡大されませんでした。これは、フランスが“大レバノン”を、イスラム教徒が多数を占める内陸シリアから分離して、中東支配の拠点として育成しようとしたためです。 しかし、経済や物流の面で、それまで“(歴史的)シリア”として一体性を持っていた大レバノンとその他の地域をただちに分断してしまうことは不可能だったため、当初は、フランス軍事占領下の“シリア”全域で使用するためのものとして、本国切手に「フランス軍事占領(地域)」を示すフランス語(Occupation Militaire Francais)の頭文字O.M.F.ならびに「シリア」の文字を加刷した切手が、ついで、大レバノンと(それ以外のフランス委任統治領)シリアは別の地域であることを明示したうえで、両地域共用の「シリア=大レバノン」加刷を施した切手が発行されました。今回ご紹介のカバーは、そうしたシリア・レバノン分割の過渡期に、シリア側で使用されたものです。 さて、今回のベイルートへの砲撃により、シリアの内戦はレバノンにも拡大した格好ですが、ヒズボラの最高指導者、ハサン・ナスララは「シリアは(イスラエルのパレスチナ占領に対する)抵抗運動の後ろ盾であり、行動しないことは許されない。必ず勝利する」と訴えています。こういう話を聞くと、あらためて、現在の国境に分割される前の“歴史的シリア”という枠組について考えさせられますな。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-26 Sun 10:27
東日本大震災の被災地の観光振興などを目的に、青森・岩手・宮城の3県にまたがる“三陸復興国立公園”が24日付で正式に誕生し、きのう(25日)、青森県八戸市で記念式典が行われました。というわけで、今日はこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1955年9月30日に発行された「陸中海岸国立公園」の小型シートで、同公園を代表する風景として、北山崎の展望を取り上げた5円切手と浄土ヶ浜を取り上げた10円切手が収められています。 北山崎は岩手県下閉伊郡田野畑村北山にある断崖絶壁、浄土ヶ浜は岩手県宮古市にある海岸です。実際の景観としては、浄土ヶ浜の岩上にはナンブアカマツをはじめとする常緑樹が群生しており(切手でもしっかり確認できます)、そのことが景勝地としての魅力になっています。したがって、僕の個人的な意見としては、切手の刷色も、逆の組み合わせの方がよかったのではないかと思います。なお、浄土ヶ浜の地名の由来については、江戸時代の天和年間に曹洞宗の僧侶が「さながら極楽浄土のごとし」と感嘆したことに由来するともいわれていますが、明確な根拠はありません。 さて、今回誕生した新公園は、旧陸中海岸国立公園(岩手・宮城両県)を中核に種差海岸階上岳県立自然公園(青森県)などを編入したもので、2014年中には南三陸金華山国定公園(宮城県)を編入する(予定)ほか、その後も、宮城県の松島など3カ所の県立自然公園の編入が進められる計画になっています。また、岩手県宮古市のキャンプ場では、大震災の津波で被災した状況のまま「災害遺構」として保存公開し、防災教育の教材として活用されます。 きのうの式典では、石原伸晃環境相が「訪れた人が震災の教訓を学びながら歩き、地域の人々との心の結びつきで被災地を活性化する公園にしたい」と、青森県の三村申吾知事が「地域が守ってきた自然が評価された。地域振興につなげたい」とそれぞれ祝辞を述べており、今後に期待したいところです。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-25 Sat 14:11
きょう・あす(25・26日)の2日間、広島の広島県立産業会館・西展示館で<スタンプショウ=ヒロシマ 2013>が開催されます。僕自身は現地へはいけないのですが、「VISIT CAUCASUS 露西亜篇」と題するミニ・コレクションを出品しています。その作品の予告編を兼ねて、展示したマテリアルの中からこんなモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、帝政ロシア時代の1915年、ダゲスタンのデルベントからベラルーシのモズィル宛に差し出された絵葉書で、国内葉書料金(3コペイカ)未納のため、到着地のモズィル・ドプラティト局で6コペイカ徴収が徴収されています。右側には、デルベントの風景を取り上げた絵面の画像も貼っておきました。 ダゲスタンは北カフカースのカスピ海に面した山岳地域で、現在のロシア連邦を構成する共和国としては、連邦内の最南部に位置し、グルジア、アゼルバイジャンと隣接しています。地名は“山が多い地域”を意味するトルコ語が由来で、多種多様な民族が混在していますが、宗教的にはムスリムが圧倒的多数を占めています。最近では、今月20日前後に相次いで首都のマハチカラで連続テロが起きたほか、米国のボストン・マラソンでのテロ事件で逮捕されたチェチェン系の容疑者出身地として報道されたこともあるので、ご記憶の方も多いかもしれません。 今回ご紹介の葉書の差出地となっているデルベントはロシア最南端の都市で、歴史的には、ユーラシア草原と柱頭を結ぶ交通の要衝で、その歴史は紀元前8世紀にさかのぼるとされています。アレクサンドロスの門の伝説の地で、9世紀にはカフカース最大の都市でした。ちなみに、デルベントという地名はペルシャ語の「閉じられた門」に由来するもので、1813年のグリスタン条約によってロシア領となりました。ロシアにおけるブランデー生産の中心地としても知られています。 さて、今回の展示は、来年のソチ五輪を前に、ソチを含む北カフカース地方の諸都市に関するマテリアルをご紹介しようというもので、競争展ではないので、テーマティクないしは郵便史の作品としてルールに沿ってきっちりまとめたものというよりも、観光案内・地理案内に近い気楽な内容となっています。なかなか日本ではなじみのない地域だと思いますので、可能な方は、ぜひ会場でご覧いただけると幸いです。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-24 Fri 11:20
きのう(23日)、マリの北部地域で仏軍が展開するイスラム過激派掃討作戦にニジェールが協力していることへの報復という名目で、イスラム過激派の“西アフリカ統一聖戦運動”が、ニジェール北部アガデズの軍施設とアーリットのウラン鉱山に対して連続自爆テロを行い、ニジェール軍兵士20人が亡くなるなどの犠牲が出ました。というわけで、今日はこの切手です。
これは、1906年に仏領オート・セネガル・ニジェールで発行された1フラン切手で、現地の女性とバライ総督の肖像が描かれています。オート・セネガル・ニジェールの地域は、現在の国名でいうと、セネガル・マリ・ニジェールにまたがる広大なもので、遊牧系のトゥアレグ人の居住地域ともほぼ重なっています。 さて、今回襲撃されたアーリットは、ニジェール北西部、アイル産地の西麓に位置しており、1969年にウラン鉱山が発見されました。そして、翌1970年から近郊のアクータで、わが国の海外ウラン資源開発株式会社、フランス原子力庁、ニジェール政府の3者による調査が開始。1974年にアクータ鉱業株式会社が設立され、1978年から採掘が始まりました。なお、アクータ鉱業株式会社の出資比率は、フランスが34%でトップを占め、ニジェールとわが国は25%ずつ、他にスペインが10%などとなっています。 ニジェール国内のアーリットとアクータの鉱脈は豊かで、最盛期の1980年代には両鉱山で世界のウラン需要の40%を占めるほどでした。ニジェールの総輸出額の90%はウランによって得られたもので、その豊富な資金は1974年に始まるセイニ・クンチェ、アリー・セブの2代に渡る軍事政権を支える原資となりました。 ところが、1989年秋の東欧革命により東側社会主義諸国が崩壊。同年末には地中海のマルタ島で東西冷戦の終結が宣言されると、戦略物心としてのウランの価値が急落。さらに、ニジェールの軍事政権は、ウラン開発には熱心だったものの、地元民の福祉には無関心であったことから、鉱山周辺では乱開発による砂漠化が進行し、トゥアレグ人たちが遊牧生活を行うこと自体が環境的に困難になっていました。 このため、生活の基盤を失ったトゥアレグ人の中には、都市に移住する者だけでなく、リビアやアルジェリアに難民として逃れる者が急増。特に、リビアのカダフィ政権は、亡命トゥアレグ人を傭兵として積極的に受け入れ、在リビアのトゥアレグ人が1985年に組織した“ニジェール解放人民戦線”を支援すると言う構図ができあがりました。 ところで、ニジェール国内では、1989年は9月に新憲法が制定され、12月の総選挙では最高軍事評議会議長(軍事政権のトップ)だったアリー・セブが新憲法下の大統領に当選し、形式的な“民政移管”が行われましたが、その実態は軍事政権とほとんど変わりませんでした。 こうした状況の下で、1990年2月9日、ニジェールの首都、ニアメのケネディ橋で学生のデモ隊を警官が鎮圧し、3人以上が亡くなるという事件が発生すると、これを機に、学生・労働者による政府への抗議行動が全土に拡大。このため、アリー・セブ政権は国内の宥和のため、難民として海外に逃れたトゥアレグ人に対して帰還して政府に協力すれば援助を行うと約束し、これを信用してアルジェリアから数千人規模のトゥアレグ人がニジェールに帰還したが、期待したような定住支援は受けられませんでした。 このため、ニジェール政府の対応に不満を持ったトゥアレグ人グループが、1990年5月、リビアならびにアルジェリアとの国境に近いチン・タバラデンの警察署を襲撃。襲撃側の25人を含む計31人が亡くなります。当初、襲撃グループは、トゥアレグの子供たちに対して、学校で彼らの言語であるタマシェク語の教育を行うことを要求していましたが、戦闘を通じて全般的な自治権の要求へとエスカレートしていきます。 これに対して、ニジェール国軍はアルジェリア国境から近いチン・タバラデンとその周辺のトゥアレグ人数百人を逮捕・拷問・殺害するなど、徹底的な弾圧で応じました。いわゆる“チン・タバラデンの虐殺”です。 虐殺を逃れたトゥアレグ人たちは、トラオレ独裁政権の統制が弱まりつつあったマリへと拠点を移して抵抗を続けましたが、そのことは、マリ国内のトゥアレグ人の反政府闘争を刺激することになり、1990年6月、アザワド解放国民運動を中心とした武装蜂起が発生しました。 この時のマリ国内での政府とトゥアレグ人勢力との内戦は1996年に和平合意が成立したものの、隣接するニジェールでは同国政府とトゥアレグ人の対立は解消されず、そのことが、しばしば、マリ国内にも深刻な影響を及ぼすという状況が続くことになります。 2012年以来のマリ北部での騒乱は、カダフィ政権の崩壊後、マリないしはニジェールからリビアに逃れていた反政府系のトゥアレグ人傭兵が大量にアザワド地域に帰還したことが発端となりましたが、ニジェール大統領のマハマドゥ・イスフによれば、すでに昨年6月の段階で、アザワドのイスラム勢力の中にはアフガニスタンとパキスタンからの原理主義系の義勇兵が参加していたといわれており、反政府闘争の主導権が次第にイスラム過激派に移っていったことで、フランスが軍事介入せざるを得なくなったという構図になっています。 いずれにせよ、かつてニジェールの混乱がマリに影響を及ぼしたのと同様に、マリ国内の混乱が世界有数のウラン鉱山を抱えるニジェールの不安定化をもたらす可能性は十分にあるわけで、今後の推移が注目されるのは言うまでもありません。 なお、このあたりの事情については、拙著『マリ近現代史』でもご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-23 Thu 13:54
きょう(23日)は、カメについて知り、カメに敬意を払い、カメの生存と繁栄のための人間の手助けをするという“世界カメの日”だそうです。というわけで、カメの切手の中からこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1963年11月23日にマリで発行された「野生動物保護」の航空切手でカンムリヅルとケヅメリクガメが描かれています。鶴と亀というモチーフは、日本では吉祥の組み合わせとしてポピュラーなものですが、今回ご紹介の切手は、そのアフリカ版という感じでしょうか。 切手に描かれたカンムリヅルは、アフリカ大陸の中央部・西部(切手発行国のマリも含まれます)の湿地や草地に棲息し、穀物の種子やカエルなどの小動物、昆虫を餌としています。一般にツルの仲間は木の枝にはとまらないのですが、この種は、ホオジロカンムリヅルとともに、例外的に木の枝に停まることができます。 一方、切手に描かれているカメについて、スコット・カタログでは“giant tortoise”という説明がついています。この語は、一般的に“ゾウガメ”と訳されていますが、日本語でいう“ゾウガメ”は、インド洋のアルダブラゾウガメと太平洋のガラパゴスゾウガメを指すことが多いようです。ただし、マリでは、この2種のどちらも野生では棲息していません。むしろ、エリトリア、エチオピア、スーダン、セネガル、ソマリア、チャド、ニジェール、マリ、ブルキナ・ファソ、ベナン、モーリタニア等に棲息するリクガメとして、ケヅメリクガメという種がありますので、切手に描かれているのはこちらではないかと思います。 ケヅメリクガメは、砂漠の周辺やサバンナに生息しており、乾季になると巣穴の中で休眠することもあります。食性は植物食で、イネ科の植物・多肉植物のほか、草、低木の葉、花、果実などを餌としています。最大甲長は83センチメートルということですので、翼長55cm,体長1m以上というカンムリヅルを背中に乗せると、たしかに、切手のようなバランスになりますな。 さて、拙著『マリ近現代史』では、今回ご紹介のケヅメリクガメが棲息するマリ周辺の砂漠やサバンナの状況についてもいろいろとご説明しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-22 Wed 11:56
1813年5月22日にリヒャルト・ワーグナーが生まれてから、今日でちょうど200年です。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1933年11月1日にドイツで発行された“ワーグナーの楽劇”の慈善切手のうち、「トリスタンとイゾルデ」を題材とした20+10ペニヒ切手です。なお、ドイツでは、この切手からナチスの鍵十字が透かしに入った用紙が使われています。 ナチス時代のドイツにおいてワーグナーの作品が重用されていた理由としては、彼が『音楽におけるユダヤ性』と題する論文を発表し、ユダヤ人とユダヤ文化の影響力を激しく非難するなど、反ユダヤ主義を鮮明にしていたことによるもので、ニュルンベルク党大会で「マイスタージンガー序曲」が演奏されたことは有名です。 さて、ワーグナーは、1849年、ドイツ3月革命に参加したかどでザクセン当局の指名手配を受けてスイス・チューリッヒに亡命しましたが、亡命中の1854年秋、トリスタン伝説に基づくオペラ作品の制作を着想。その後、ヴェーゼンドンクの妻マティルデとの恋愛を経て、1857年8月、『トリスタンとイゾルデ』の散文による筋書きに着手し、同年9月、マティルダに捧げるものとして台本を完成させました。ついで、10月1日から作曲を開始し、1858年4月に第1幕をチューリヒで、1859年3月に第2幕をヴェネツィアで、同年8月に第3幕をルツェルンで完成させました。ちなみに、第2幕以降がチューリヒで作曲されなかったのは、第1幕完成直後にワーグナーとマティルデの関係が発覚したため、ワーグナーがチューリヒを去らざるを得なくなったためです。 当初、ワーグナーは「トリスタンとイゾルデ」を小品として制作する予定でしたが、結果的に大部な作品になってしまったため、初演までには相当の困難がありました。たとえば、1861年には、バーデン公国の首都カールスルーエの劇場で上演の話がまとまりかけたのですが、カールスルーエには主役を演じる歌手がいませんでした。このため、ワーグナーは歌手を探しにウィーンに向かい、ウィーンで歌手を見つけたものの、歌手が所属する劇場はウィーン以外に歌手を出すことに反対。このため、ワーグナーはウィーンでの上演を目指したものの、人間関係や金銭問題などの様々なトラブルから上演することができませんでした。最終的に、1865年6月、バイエルン国王のルートヴィヒ2世の援助により、完成から6年後、ようやく、ミュンヘンでの初演が実現しました。 なお、今年はワーグナーの生誕200年ということでさまざまなイベントが行われていますが、切手に関していうと、祖国ドイツでの記念切手の発行は、きょう(22日)ではなく、5月2日のことでした。おそらく、何か大きなイベントが2日にあったということなのでしょうが、せっかく5月に出すのなら、きっちり誕生日に出した方がよかったんじゃないかと思うんですが…。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-21 Tue 10:29
ご報告がすっかり遅くなりましたが、『本のメルマガ』499号が先月25日に配信となりました。僕の連載「岩のドームの郵便学」は、今回は第2次大戦中のイギリス委任統治領パレスチナを題材として、いろいろと書いてみました。その中から、きょうはこんなモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1944年6月19日、英国オクスフォードから、パレスチナのベンシェメン宛に航空便として差し出されたものの、欧州大戦により航空便の運航が不可能になったため、船便により宛先まで届けられたカバーです。 大戦の勃発後、欧州大陸が戦場になり、パレスチナと英本国との間の交通に鉄道や航空機(当時、英国=パレスチナ間の航空便は、途中、給油などのため欧州大陸の都市を経由していました)を利用することは不可能になりましたが、船舶による物流は引き続き可能であした。これは、大西洋への出入口にあたるジブラルタル(ちなみにジブラルタルの周囲を領有するスペインは中立国)と、地中海のほぼ中央に位置するマルタ島を抑えていた英国が、大戦の期間を通じて、地中海の制海権・制空権を保持し続けたことによるものです。 今回ご紹介のカバーもそうした事情を反映したもので、ジブラルタル海峡から地中海を航行する船によってパレスチナ最大の港であるハイファに陸揚げされ、宛先まで届けられたものと思われます。また、カバーには、すべてのエアメールが取扱停止となっていることを受取人から差出人に知らせてほしいとの指示の入った印が押され、エアメールの表示も抹消されています。 さて、ナチスによる弾圧と戦禍を逃れてパレスチナへと逃れようとするユダヤ系難民もまた、船でハイファ港を目指すのが一般的なコースでした。 そうした中で、781人のユダヤ系難民を乗せた難民船シュトルーマ号が、1941年12月12日、ルーマニアのコンスタンツァ港を出港し、パレスチナを目指したものの、英当局はマクドナルド白書を理由に難民船の入港を拒否。シュトルーマ号は行き場のないまま地中海を迷走しつづけ、1942年2月、ルーマニアへ戻る途中、黒海で沈没し、760人以上の難民が死亡する大惨事となりました。 この事件は、ユダヤ系社会に大きな衝撃を与え、英国の責任者にあたる植民地相のウォルター・モインは彼らの怨嗟の対象となります。そして、1944年6月、資金調達のためには銀行強盗をも辞さない過激派組織の“シュテルン(正式名称は「イスラエル自由戦士団」を意味するロハメイ・へルート・イスラエルですが、創立者のアブラハム・シュテルンにちなんで、こう呼ばれることが多い)”が、事件の報復として、モインをカイロで暗殺。すでに、それ以前から、シュテルンを含む一部シオニスト過激派は反英テロを展開していましたが、モイン暗殺を機に、英国のシオニストに対する不信感は決定的になりました。 かくして、英国政府は、パレスチナ問題を収拾する意欲を喪失し、次第に、委任統治領の管理者としての責任を放棄していくようになります。ちなみに、英国のパレスチナからの撤退は1948年5月のことでした。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-20 Mon 11:38
全世界で年間2億人以上の患者が発生しているマラリアについて、アフリカと東南アジアで販売された薬のうち、約半分が薬効の不十分な“偽薬”だったことが、国連薬物犯罪事務所(UNODC)がまとめた初の報告書で明らかになりました。その主な製造元は中国とインドだそうです。というわけで、きょうはマラリア関連の切手の中からこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1962年にマリで発行された反マラリアキャンペーンの寄附金つき切手で、WHOの反マラリア運動のシンボルマークが描かれています。1962年には、今回ご紹介のマリをはじめ、世界各国でマラリア撲滅運動の切手が発行されました。これは、1955年から世界保健機構(WHO)が実施していた“マラリア撲滅キャンペーン”が一定の成果を上げたことを受け、その総仕上げとして、1962年4月7日(WHOの創立記念日)に記念のキャンペーン切手を発行しようという呼びかけに応じてのことで、旧仏領諸国では統一図案で発行されています。 さて、マリで感染する可能性のあるマラリアの大半は、最悪の場合、死に至ることのある熱帯熱マラリアで、北部のサヘル地域を除く全土で年間を通じて発生していますが、特に、雨季の6月から10月に蚊が多くなることで、患者数も増加します。マラリアは軽症であれば治療薬を服用することで治療が可能ですが、熱帯性マラリアは日本で入手可能な治療薬には耐性ができているため、万一かかってしまったら、現地の病院でお世話になるしかありません。 ちなみに、マリではマラリアが5才未満の子どもの死亡原因の1位とされていますので、各国の医療支援もマラリア対策に力点が置かれているものと思われます。近年、マリのみならずアフリカへの支援を大々的に宣伝している中国ですが、今回のようなニュースを聞くと、彼らが各地でばらまいているマラリアの治療薬もかなりな部分が“偽薬”じゃないかと疑いの目を向けてしまうのが人情というものでしょう。 “偽薬”は、それ自体が治療の役に立たないというだけではなく、効果の薄い薬の投与が続けば、抗生物質が効かない薬剤耐性マラリアなどが拡散する恐れがあります。国内では使い道のなくなった“偽薬”を、援助の名目で海外にばらまいているのだとしたら、なんとも罪作りな話ですな。 なお、拙著『マリ近現代史』では、マリ国内の保健・衛生環境や中国からの援助の歴史などについてもまとめております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ イベントのご案内 ★★★ ・6月1日(土) 11:00- 切手市場 於 東京・浅草 台東民会館 9階ホール 詳細は主催者HPをご覧ください。新作の『マリ近現代史』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。 会場ならではの特典もご用意しておりますので、ぜひ、遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-19 Sun 17:19
総務省と日本郵便が、郵便番号制度や物流網の整備などの“日本型郵便システム”を新興国や途上国に売り込むことになりました。その第一弾として、ミャンマー(ビルマ)郵便電信公社への導入が検討されており、明日(20日)、同国のミャト・ヘイン情報通信技術相が訪日し、新藤義孝総務相と会談して協力を確認するそうです。というわけで、きょうは“日本”の文字の入ったビルマ切手ということで、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで確認されます)
これは、日本占領下のビルマで、1944年9月16日、シャン地方切手にビルマ文字を加刷した5セント切手を貼ってラングーン宛に差し出されたカバーです。切手が貼られている切手つき封筒は、1943年7月1日、戦前の英領時代のジョージ6世図案の印面を×印で抹消して発行されたものです。 シャン地方はタイ・ラオス・中国に隣接する高原地帯で、第二次大戦中、旧英領ビルマの一部として日本の占領下に置かれていました。 シャン地方のうち、モンパンとケントンの2州に関しては、イギリスによって奪われたタイの失地として、1943年8月に調印された「『マライ』及『シャン』地方ニ於ケル『タイ』国領土ニ関スル日本国『タイ』国間条約」により、タイに返還されましたが、残りのシャン地方の所属は未定のままでした。 これに先立ち、同年8月1日、ビルマでは軍政が廃止され、バーモを首班とするビルマ国が独立しましたが、シャン地方に関しては、タイならびに中国と接する戦略上の要衝であるとの理由から、日本軍が引き続き軍政を継続。このため、シャン地方では、独立ビルマとは別の郵政機関を組織する必要が生じ、“大日本帝国郵便・シャン”と表示された独自の切手が発行されました。これがシャン地方切手です。 シャン地方切手は10月1日に発行されましたが、その直前の9月25日、「『シャン』地方等ニ於ケル『ビルマ』国領土ニ関スル日本国『ビルマ』国間条約」が調印され、モンパン、ケントンの2州を除くシャン州(現在の南北シャン、ワーに加え、カヤ州がその範囲に相当)は条約調印から90日以内に独立ビルマの領土に編入されることになりました。これを受けて、1944年11月1日、すでに発行されたシャン地方切手にビルマ文字を加刷し、以後、ビルマ全土で使用することになりました。 今回ご紹介のカバーは、こうした状況の下で1945年2月16日に差し出されたもので、消印の地名表示は不鮮明ですが、“THONZE”のように見えます。 ところで、今回のビルマへの日本型郵便システムについて報じた記事の中には「ミャンマーでは郵便物が途中でなくなり、数割があて先に届かないという。消印を押したり配達地に仕分けたりするのは職員の手作業なので時間がかかり、郵便番号を書く習慣も浸透していない。」という文章がありました。まぁ、たしかに、かの国の郵便局員のモラルが決して高くはなく、郵便の自動化が遅れていることも事実でしょうが、押印もすべて手作業というのはホントですかねぇ。(少なくともかつては)ビルマでも機械印が使用されていたという実績もありますので、現状で機械印が使われなくなっているということであれば、それは軍政時代の社会の停滞を象徴的に表しているということなんでしょうな。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-18 Sat 23:07
北朝鮮が、きょう(18日)、午前に2発、午後に1発の計3発の短距離ミサイルを日本海側から発射しました。とりあえず、日本の領海内には落下していないそうです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、ことし(2013年)2月25日に北朝鮮で発行された“革命絵画”の切手のうち、「命令だけください」と題された作品を取り上げた10ウォン切手です。切手は、戦車やミサイル、航空機などを背景に、いままさに、銃剣を手に突撃しようとしている兵士を描くものです。 5月2日に米国防総省が発表した年次報告書「北朝鮮の軍事力2012」によると、北朝鮮のミサイル発射装置(ランチャー)の台数は、射程1000キロ以下のスカッド系ミサイル(KN-02、スカッドB、スカッドC、スカッドER)用のモノが100基以下、射程1300キロ以下のノドン・ミサイル用のモノが50基以下、射程3200キロ以上のムスダン・ミサイル用のモノが50基以下、射程5500キロ以上のテポドン2ミサイル用のモノは未配備となっています。一般的に核弾頭ICBM(大陸間弾道ミサイル)はランチャー数=ミサイル本数で、通常弾頭SRBM(短距離弾道ミサイル)の場合はランチャー数×5~6=ミサイル本数とされていますので、今回発射されたような短距離ミサイルだと、5-600発が配備されていると推測されています。 切手に取り上げられた絵画のミサイルは何本かをまとめたスタイルになっていますので、おそらく、スカッド系ミサイルではないかと思います。まぁ、「命令だけください」というタイトル通り、上からの命令があったからこそ、今日の発射ということになったのでしょうが…。 ちなみに、「命令だけください」というのは、もともとは、1967年に作られた「수령이시여 명령만 내리시라(首領よ、命令だけください)」という革命歌(作詞:석광희、作曲:손창세)の題名です。元のタイトルからすると、命令を下せるのは、首領様=金日成のみで、息子の将軍様=金正日ではなく、ましてや孫の金正恩ではありえないのですが、金正恩体制下で発行されたこの切手では、冒頭の“首領様”が省略されているのがミソといえましょうか。あるいは、将来的に、金正恩=金日成というイメージ戦略の一環として、金正恩みずからが“(第2の)首領様”になってしまおうということなのかもしれません。 また、もともとの歌詞にあった「我等の営みは日ごとに幸福へ近づけど、南の同胞を思わば、血に滲む心臓」というフレーズが、近年、「一つの地と民族を二つに切り裂く奴等は、今日また再び我等の地を侵そうとしている」と変更して歌われているなど、「幸福な生活を送っている北朝鮮の人民が、米帝の下で不遇をかこっている南の同胞を解放しよう」という原曲のニュアンスが変更されているとの報告もあります。まぁ、さすがに、「北の方が幸福」という強弁は、現実に照らして、彼らも言いにくくなったということなんでしょう。 最近、2011年に金正日が亡くなった後の切手をまとめて調べてみる機会があったのですが、かなり興味深い情報が少なからず拾えました。それらをまとめると、新書一冊分くらいの分量には軽くなりそうなのですが、どこかの版元さんで拾ってやってくれませんかねぇ。 * 本日午後、カウンターが121万PVを越えました。いつもご覧いただいている皆様には、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-17 Fri 10:37
本年(2013年)11月、ブラジル・リオデジャネイロにおいて世界切手展<BRASILIANA 2013>(以下、リオ展)が開催されます。同展の日本コミッショナーは、不肖・内藤がお引き受けしておりますが、昨日(16日)付で新たに“現代郵趣部門”の作品を募集することが発表されましたので、その要点をご案内いたします。同展公式サイトの関連記事もあわせてご覧ください。なお、今回のご案内は現時点での情報を速報として掲載しておりますので、今後、若干の変更が生じる可能性もありますことを、予めご了承ください。 以下、昨年12月26日付の本ブログ記事、BRASILIANA 2013 のご案内 の「5.出品クラス」の末尾の追加としてお読みください。 ― Class 13 (21世紀の)現代郵趣 現代郵趣の最高水準の作品を展示して、この分野の収集を促進するとともに、郵政当局に対して21世紀以降(2001年から現在まで)に発行されたマテリアルを収集・研究しているフィラテリストが相当数存在していることを示すためのクラスで、(A)国別伝統、(B)郵便史、(C)郵便ステーショナリーの各分野での出品が可能です。 出品作品には、審査の結果、しかるべきランクの授賞メダルが授与され(註:過去に現代郵趣部門を実験的に設けていた無錫展・シャルジャー展ではメダルの授与はなし)、そのデータはFIPの公式記録にも掲載されます。なお、採点の結果、60点以下の場合はメダルではなく参加証が授与されます。 出品作品への割当フレーム数は3-5フレームで(部門全体への割当フレーム数は30フレームです)、他部門への出品と重複しての出品も可能です。なお、出品料は1フレームにつき50米ドルです。 出品の可否は、各国コミッショナー(日本では内藤です)の推薦を受けて、リオ展の組織委員会が決定することになっていますが、他の出品部門のように、国内展で金銀賞以上を受賞することという条件は付けられておりません。また、出品の申し込みは5月31日までに組織委員会宛に行うことになっておりますので、出品をお考えの方は、まず、本ブログ右側、プロフィール下のメールフォームをご利用のうえ、内藤までご連絡ください。 1人でも多くの皆様のお申込み・お問い合わせを心よりお待ちしております。 P.S. 冒頭に掲げた画像は、2011年にブラジルで発行された“受取通知(AR:Avis de réception)つき書留”料金用のシール式の無額面・永久保証切手です。ちなみに、ブラジルでは切手発行後の2012年3月1日に郵便料金の改正があり、現時点の書留料金は3レアル(本日のレートで1レアルは約50円)、受取通知の手数料も3レアルですので、計6レアルとして使用可能ということになりましょうか。 切手のデザインとしては、ワイシャツにネクタイの男性が“受取通知つき書留”を受け取ってサインしている場面が描かれており、わかりやすいですな。また、左辺と下辺の目打の一部がブラジルを意味するBRの形になっているのも良い感じです。以前、某テレビ番組で世界各国の郵便局で現在売られている切手をできるだけ集めてくれとの依頼を受けて手配したものの、実際の放送では使われなかった1枚ですが、今回の“現代郵趣部門”の対象となるマテリアルの一例として、ご紹介しました。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-16 Thu 16:18
きょう(16日)正午ごろ(現地時間午前8時半ごろ)、ヒマラヤ観光の玄関口として知られるネパール北部のジョムソン空港で、乗客乗員18人を乗せたネパール航空のチャーター機がオーバーランし、近くの川に突っ込む事故がありました。チャーター機には日本人8人が乗っており、日本時間16時の時点の情報では、このうち日本人2人を含む7人が軽傷で、ネパール人の機長1人が重傷だそうです。というわけで、きょうはネパール航空に絡んで、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1958年10月16日に発行されたネパール最初の航空切手の初日カバーです。 ネパール国内の航空路線は、当初、ニューデリーに本社を置くインディアン航空(2011年、エア・インディアが吸収合併)によって運航されていましたが、1958年7月、国営航空会社としてロイヤル・ネパール航空が創業され、同社の路線を継承しました。今回ご紹介の切手は、ロイヤル・ネパール航空による国内向け航空便の取り扱い開始に合わせて発行されたもので、手紙を咥えながら首都カトマンドゥ上空を飛ぶ鳩が描かれています。ちなみに、ロイヤル・ネパール航空による国際線の運航が始まったのは1960年のことです。また、2008年の王制廃止に伴い、同社の社名からは“ロイヤル”が削除され、現在の社名はネパール航空になっています。 さて、ネパール航空のハブ空港は、首都カトマンドゥから6キロの地点にあるトリブヴァン国際空港ですが、同空港は周囲を高い山に囲まれていることに加え、かつては、レーダー施設がなく、無線連絡と目視に余って着陸を行っていたため、事故の多いことでも知られていました。このため、日本のODAの一環としてレーダー施設が設置され、管制官の訓練や老朽化施設の修復なども行われています。 今回事故を起こしたジョムソン空港は、川の中州の強風地域にあり、飛行機の離着陸は比較的風の穏やかな早朝のみに限定されているという難空港ですので、これまでにも似たような事故がしばしば起きていたのではないかと思われます。今後、日本人観光客が増えてくれば、いずれは日本のODAで、防風対策を施した改修工事が行われるなり、近隣のより安全な場所に新空港を建設するという可能性もあるのかもしれません。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-15 Wed 12:01
きょう(15日)、ベルギーのブリュッセルでフランスと欧州連合(EU)を共同議長として、マリ支援国会合が開催されます。というわけで、マリの切手の中から、ブリュッセルに関係するものということでこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1973年9月17日に発行された“アフリカン・ウィークス”の切手です。イベント名の原語(フランス語)は“QUINZANE AFRICANE”ですが、この“QUINZANE”は、辞書的に言うと「15日もしくは当日を含む2週間」という意味です。日本語や英語にはない概念ですので訳すのが難しいのですが、スコット・カタログなどでは、とりあえず“weeks”という訳語を当てているので、僕もこれに従いました。 アフリカン・ウィークスは、アフリカ諸国の文化を広く紹介し、アフリカに対する理解を深めようというイベントで、切手には、アフリカの象徴としての仮面と、ブリュッセルの象徴としての市庁舎を組み合わせたデザインになっています。ちなみに、この時のアフリカン・ウィークスは9月15日から30日まで行われましたが、切手の発行はイベント3日目の17日です。おそらく、15日が土曜日だったので、土日を避けて月曜日の発行にしたのでしょう。 さて、マリ支援国会合は、今年(2013年)1月29日、アフリカ諸国に加え、欧米諸国や日本も参加して、エチオピアのアディスアベバで開催されました。このときの会合では、参加国や国際機関などからそれぞれ支援が表明され、マリにおけるAFISMAの軍事作戦や人道支援に対して、総額4億5,500万ドル以上の拠出が合意されたと伝えられています。 わが国からは松山政司外務副大臣が参加。マリ北部をはじめとしたサヘル地域におけるテロとの戦いを強化すべく国際社会に対してアフリカ諸国の反テロ活動への支援を呼び掛けるとともに、日本政府として、難民支援やPKO訓練センター支援など、ガバナンス・治安強化などの分野で新たに1億2000万ドルの拠出を検討していると表明しました。ちなみに、わが国は昨年(2012年)、サヘル地域に対して6300万ドルを支援しています。 今年1月のフランスの軍事介入の後、北部の主要都市は3月に政府側に奪還されましたが、トゥンブクトゥやガオでは、現在も断続的に戦闘が勃発、緊迫した状況が続いています。今回の会合は、7月に予定されている大統領選挙や国連のPKO派遣などを控えてのもので、より具体的な討議が行われるものと思われます。 なお、昨年来のマリ情勢については、拙著『マリ近現代史』でも詳しくフォローしておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-14 Tue 11:42
ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第47巻第2号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回は1963年末に発足したタノーム政権初期の状況について取り上げました。その中から、きょうはこの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1964年10月5日に発行された国際文通週間の切手のうち、世界地図を背景に手紙を運ぶ鳩から手紙を受け取る手をデザインした50サタン切手(1サタンは100分の1バーツ)で、手紙を受け取る手には、日章旗を含む各国の国旗がデザインされています。右側には、わかりやすいように、その手の部分を拡大してみました。ちなみに、外国の国旗がタイの切手に取り上げられたのは、これが最初です。 切手に国旗が取り上げられている国は、基本的にはタイの友好国ですが、人差し指の先に国旗が描かれているチュニジアとタイの国交が樹立されるのは1967年2月2日のことで、切手が発行された1964年の時点では両国間に正規の国交はありません。また、デザイン上の都合からか、一部、実際には存在しない架空の国の“国旗”も入っているのがおもしろいところです。 とはいえ、我々として注目したいのは、やはり、手首の部分、星条旗の隣に大きく描かれている日章旗でしょう。 この時期、タイと日本の関係は、いわゆる特別円問題が解決したこともあって、きわめて良好でした。 特別円というのは、大東亜戦争中、日本軍が軍費その他の費用を支払うためにタイで発行した通貨で、終戦時には15億円が日本側の債務として15億円残っていました。戦後、これをいくらに換算するかが日タイ両国の間の懸案事項となり、1955年7月9日に調印された「特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定(日タイ特別円協定)」では、債務総額を150億円としたうえで、このうちの54億円相当を5年分割でスターリング・ポンドの現金で支払い、96億円相当を投資および経済協力の供与で支払うことでいったんは解決したはずでした。ところが、現金での支払いの終了が近づくにつれ、96億円の経済協力は無償供与であるとタイ側が主張して対立が生じることになります。 このため、1961年に池田(勇人首相)・サリット会談が行われ、日タイの友好と貿易の促進という太局的見地から、日本側は96億円相当を8年分割で無償供与するものの、タイ側はそれを日本企業への事業の発注や商品の購入などに充てるということで合意が成立。翌1962年1月、「特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定にある規定に代わる協定」が調印され、特別円問題はようやく決着し、日本企業のタイ進出が促進されることになりました。 特別円問題の解決を受けて、1963年6月4日、国王ラーマ9世ご夫妻が日本を公式訪問。国王のご内意により、タイ政府の関係者が靖国神社を代理参拝したほか、タイ海軍の練習艦隊乗組員(士官候補生)による靖国神社への正式参拝も行われています。 この時の国王訪日の答礼として、1964年12月、昭和天皇の名代として皇太子明仁親王(今上陛下)ご夫妻がタイを公式訪問。その際、明仁親王は魚の養殖研究施設を視察したが、魚類の研究を生物学者としての立場から、国王と会食の際、養殖にはアフリカ・ナイル川原産のティラピア・ニラティカスという種がより効果的であるとの意見を述べられました。そればかりか、帰国後、東宮御所の池でティラピアの稚魚を養殖し、翌年、その内の50匹を国王に寄贈しておられます。 その後、国王は寄贈を受けたティラピアをチットラッダー宮殿内の池で飼育。短期間のうちに稚魚は大繁殖し、1万匹もの稚魚がタイ全国の養殖場に運ばれました。この結果、ティラピア・ニラティカスはタイを代表する魚にまで浸透し、国民の栄養状態も改善。ティラピア・ニラティカスには、華僑により“仁魚”という漢字があてられ、タイ語でも“プラー・ニン”と呼ばれるようになりました。ちなみに、“仁魚”の“仁”は明仁の名に由来するもので、“ニン魚”を意味するタイ語の“プラー・ニン”の“ニン”も仁の字に由来しています。 いずれにせよ、1964年10月に発行された国際文通週間の切手に、日章旗が取り上げられている背景には、こうした対日関係ないしは対日感情の好転があったことは間違いのないところといえそうです。 なお、今回の記事では、このほか、タイ・シルクを使った“ナショナル・コステューム”の制定と定着についても、シリキット王妃を描く切手などを題材にご紹介しております。機会がありましたら、ぜひご紹介いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-13 Mon 11:30
米国の映像制作会社、ピクサー・アニメーション・スタジオは、今秋、メキシコなどの祝日である“死者の日”を題材にした映画を公開すべく準備を進めているそうですが、それに先立ち、ピクサーの親会社、ウォルト・ディズニー・カンパニーが今月1日にスペイン語で“死者の日”を意味する“Día de los Muertos”を米特許商標庁に商標登録を出願していた問題で、ディズニー側は国際世論の囂囂たる非難を受けて昨日(12日)までに出願を撤回しました。まずはめでたいですな。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2012年にメキシコで発行された「メキシコの伝統:死者の日」の切手で、装飾されたガイコツとお菓子、蝋燭などが描かれています。 メキシコでは古来、祖先のガイコツや戦いで倒した敵のガイコツを飾る習慣がありましたが、特に、アステカ族には冥府の女神ミクトランシワトルにガイコツを捧げる祝祭がありました。その後、スペインがメキシコを征服し、カトリックが浸透すると、カトリックの祝祭である“諸聖人の日(11月1日)”と融合して、11月1-2日に盛大に祝われるようになりました。 2日間の“死者の日”のうち、1日は子供の魂が、2日は大人の魂が戻る日とされ、市街地には“死者の花”とされるマリーゴールドが飾られ、故人の遺影、十字架、砂絵、花、食物(パン、サトウキビ、柑橘類など)、ガイコツ(切手のように装飾されたものや砂糖で作られたイミテーションもあるそうです)などを並べた祭壇(オフレンダ)を前に家族や友人が集まり、故人の思い出などを語り合う日となっています。日本のお盆を陽気にしたような雰囲気で、墓地にも装飾を施して供え物がささげられるほか、バンドによる演奏や行列行進なども行われます。 視覚的に派手な祝祭だけに映像向けの題材としてピクサーも目を付けたのでしょうが、死者の日は2003年にはユネスコの無形文化遺産にも指定されており、ディズニーが、商標登録というかたちで、映画の題名のみならず、玩具、食品、衣料品などの関連商品への“死者の日”の名称使用権を独占しようとしたことは、少なくとも道義的には許されるべきことではないでしょう。実際、ディズニーによる商標出願が明らかになると、当然のことながら、米国内のヒスパニック系団体やメキシコを含む周辺諸国などから「文化は売り物ではない」、「文化の横領、搾取だ」とする反発の声が続出。世論の強い非難を受けて、ディズニーは「題名の変更が決まった」として、出願撤回に追い込まれています。 実は、ディズニー社が、こうした無謀な商標出願を行うのは今回が初めてではありません。彼らは、2011年にも米海軍特殊部隊の“SEALチーム6”の商標出願したものの、激しい非難を浴び、撤回に追い込まれたという前科があります。この時のディズニー側の言い訳は「海軍に敬意を表して」だったとか…。なんだか、中国系企業が中国で日本の地域ブランドや芸能人の名前などを勝手に商標出願し、登録を済ませてしまうのと同じメンタリティーといえそうです。 いずれにせよ、メキシコ人の魂にとって重要な“死者の日”や米国人の誇りとする“SEALチーム6”を商標出願して阿漕に儲けようという連中ですから、映画を作るという名目で「お正月」や「ひな祭り」を米国内でいつの間にか商標出願して、日本社会を食い物にするくらいのことを平気でやりかねません。どうにも、彼らに対する不信感が拭えませんな。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-12 Sun 14:30
きょう(12日)は母の日です。というわけで、母と子を描くこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1942年6月22日、仏領スーダンで発行された“現地の子供のための福祉”の名目で発行された寄附金つきの航空切手で、キリスト教のシスターに抱きかかえられて体重を測られている子供とその母親、さらに、後ろで順番を待つ母子が描かれています。おそらく、近代的な健康診断の実施により、乳児の健康を守ろうという意思を込めたデザインと思われます。 なお、切手を発行した仏領スーダンは、第一大戦後の仏領西アフリカ植民地の再編成の過程で、1921年12月1日、仏領オート・セネガル・ニジェールを改変して誕生したもので、現在のマリ共和国の直接のルーツとなります。 もともと、カトリック教会はアルジェリアやテュニジアでの信徒の拡大を目指していましたが、北アフリカの地域はムスリムの社会的な影響力が強く、住民を改宗させるのは容易なことではありませんでした。 このため、1867年にアルジェリアの大司教となったシャルル・ラヴィジュリーは、1868年にサハラ・スーダン知牧区を設定したうえで、1876年1月15日、3人の宣教師にキャラバン隊を組織させ、遊牧民のトゥアレグ人を案内役として、サハラ砂漠を越えてトンブクトゥを目指す布教の旅に送り出します。ところが、宣教師たちは途中でトゥアレグ人の裏切りに遭って殺害されてしまいました。 その後、1881年12月18日には、あらためて、サハラ越えの宣教師のキャラバンがテュニジアを出発しましたが、またしても途中でトゥアレグ人のガイドに殺害されてしまい、カトリック教会はサハラ越えのルートでトンブクトゥに入り、布教を行うというプランは断念せざるをえなくなりました。 そこで、1885年、オーギュスタン・アカール神父はサハラ越えではなく、フランスの拠点であったセネガルから西アフリカ内陸に向けて出発し、4月1日、ニジェール内陸デルタの端に位置するセグーに到着。5月2日にはデルタ北端のトンブクトゥに到達し、1899年までに、セグーにおけるカトリック教会の基盤を築くことに成功しました。これとは別に、1843年にセネガルに支部を設けた聖霊修道会も、1888年にはキータに、1892年にはカイに布教のための拠点を設定。こうして、19世紀末、現在のマリの地域がフランスの植民地になるのと軌を一にして、現地での布教活動が進められるようになりました。今回ご紹介の切手の中央にシスターが描かれているのも、こうした経緯を踏まえ、彼女たちによる現地での慈善活動とフランスの“善政”をアピールするためと思われます。 なお、現在のマリ共和国に相当する旧仏領スーダンでの、フランスによる植民地支配の功罪については、拙著『マリ近現代史』で詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-11 Sat 11:28
1953年以来の“平成の大遷宮”が進む出雲大社で昨夜(10日)、最も重要な祭事である本殿遷座祭が営まれ、2008年4月から仮殿に移っていた祭神・大国主大神のご神体が、修復を終えた本殿に戻されました。というわけで、きょうは出雲がらみの切手ということでこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1961年12月15日に発行された昭和37年用の年賀切手で“はりこのとら”として出雲張子の虎が描かれています。出雲を題材とした切手としては、これが最初の1枚です。 出雲地方では、昔から節句などに、魔除け・勝負運(商売運)の縁起として虎の玩具が飾られていました。現在の“はりこのとら”は、1877年頃、松江の名工、荒川亀斎が原型を完成させ、1880年代に出雲市今市の高橋熊市が入手し、色彩に工夫を凝らして製作したのがルーツとなっています。 “はりこのとら”の本体は、幾重にも貼られた和紙から骨格を抜き取ったもので、そこに胡粉塗料などで彩色して仕上げられます。張子のバランスを調整しながらの顔づくりと彩色が最も技術を要する点で、すべて手作業でつくられています。 なお、出雲の張子人形は、トラのみならず、十二支すべてが製作されており、1995年の年賀切手には“出雲張り子の亥”が取り上げられています。 昭和37年用の年賀切手の制作作業は、早くも1961年5月には始められており、6月1日、江守若菜、吉田豊、山之内孝夫、東角井良臣の4人による原画が完成。翌3日、郵政省の郵務局長室に関係者が集まり、原画についての討議が行われました。 その際、山之内の作品がいったんは採用に決まりかけたのですが、彼が取り上げた玩具(原画作成時にはどの地域のものか明らかではなかった)が東北地方のものであれば、前年の“金のべこっこ”と“赤べこ” に続いて東北地方のものが取り上げられるのは地域バランスの問題から具合が悪いということになり、山之内の切手の玩具が関西・西日本のものであれば採用するという留保がつけられました。 その後、調査の結果、山之内の作品に取り上げられているのは福島県の郷土玩具であることが判明し、6月13日、出雲の“はりこのとら”を描いた江守の作品が採用となり、翌14日、印刷局に原画が引き渡されました。その際、製版の参考資料として、東京駅八重洲口の大丸百貨店6階の島根県物産陳列所で購入された“はりこのとら”も郵政省から印刷局へ渡されています。 その後、6月20日、出雲市長の布野信忠が郵務局を訪問し、地元の郷土玩具である“はりこのとら”を年賀切手に採用してほしいと陳情。さらに、7月21日には、出雲市長と“はりこのとら”の生産者である高橋孝市の連名での広島郵政局長宛の切手発行の申請書と、広島郵政局長から本省郵務局長宛の切手発行の申請が提出されています。すでに切手に取り上げられることが決まっているのなら、いまさら陳情と発行の申請は不要なようにも思えますが、やはり、各地から地元の郷土玩具を取り上げてほしいとの陳情が多数寄せられている中で、陳情や発行申請が行われていなかった出雲の張子が切手に取り上げられるのはまずいという判断があったのでしょう。 この間、6月28日には、江守若菜により、竹を描く小型シートの余白の原画が完成し、同月30日、印刷局へ渡されています。 第1回の試刷回校は8月7日のことでした。このときは、トラの左側の耳の内側の黒い線を曲線に直すこと、黒色の版を濃く製版しなおすこととされ、これを受けて、同月30日、第2回試刷が提出され、9月7日、赤、赤味黄、緑、黒の配色のものが採用となりました。 一方、小型シートの第1回試刷は10月7日に提出されましたが、竹のハーフトーンの部分の緑色が弱いので修正することとなり、同月20日に第2回の試刷回校となっています。その際、竹の緑色に関しては問題が解決されたものの、背景の薄い赤色については、色が弱いだけでなく、製版が少しずれていることが指摘され、改版を条件に校了となりました。 こうして製造された年賀切手は、前年までの12月20日発行よりも5日繰り上げて、12月15日に発行されました。発行枚数も、前年までの800万枚から1000万枚に増やされています。 切手発行にあわせて、“はりこのとら”の地元となった島根県の出雲局では、12月15日から、出雲大社の鳥居と神立橋、山陰本線鉄橋を描き、白河原なでしこを配したデザインの風景印の使用を開始しましたが、この印には“はりこのとら”は取り上げられていません。 なお、この切手と昭和37年用の年賀はがき(この年から消印が省略されるようになりました)については、拙著『年賀状の戦後史』でも詳しく取り上げておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-10 Fri 12:47
きょう(10日)から愛鳥週間(バード・ウィーク)が始まります。というわけで、きょうは鳥切手の中から、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1960年2月13日にマリ連邦で発行された500フランの航空切手で、アカハラヤブモズが描かれています。 第二次大戦後の1958年、仏領西アフリカを構成していた各植民地は、完全独立を果たしたギニアを除き、フランス共同体内の自治共和国として独立。これを受けて、同年12月末、旧仏領スーダン(現マリ)の首府バマコにスーダン、セネガル、オート・ヴォルタ、ダホメ各地の汎アフリカ主義者らが集まり、新たな連邦を創設してフランスからの完全独立を目指して会議を開催。翌1959年1月17日、セネガルのダカールで開催された“憲法制定会議”において「“マリ連邦”憲法」が承認され、各共和国で国民投票にかけられることになりました。ただし、国民投票の結果、実際に同憲法を承認したのは旧スーダンとセネガルのみで、“マリ連邦”は、1959年4月4日、両者の連合体としてスタートしました。 フランスは、当初、マリ連邦の独立を承認せず、フランス本国との国家連合を求めていましたが、最終的に1959年12月11-12日にセネガルのサン・ルイで開催されたフランス共同体委員会でマリ連邦の独立を実質的に承認。1960年6月20日、マリ連邦は正式に独立を達成しました。今回ご紹介の切手が発行されたのは、この間の1960年2月のことですから、フランスによる独立承認からマリ連邦正式発足までの過渡的な時期といえます。 ところが、連邦のあり方をめぐって、旧スーダンとセネガルとの対立が生じ、2か月後の8月20日、首都ダカールに閣僚が集まり、連邦の新制度や正式な大統領の選出方法などについて討議していたところ、セネガルがマリ連邦からの独立を宣言。旧スーダン側は国連軍の派遣を要請してこれを阻止しようとしましたが、結局失敗し、1960年9月22日、旧スーダンの領域のみで、あらためて現在の“マリ共和国”として独立し、同月28日、国連に加盟しました。 これに伴い、旧マリ連邦時代に発行された切手の一部は、“マリ連邦(FEDERATION du MALI)”との表示の入った切手部分を塗りつぶし、“マリ共和国(REPUBLIQUE DU MALI)”と加刷して使用されています。冒頭にご紹介した切手の場合、以下のような加刷切手が1960年12月18日に発行されています。 なお、拙著『マリ近現代史』では、こうして発足したマリ共和国の現在にいたるまでの歴史をヴィジュアル資料も駆使してわかりやすく解説しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-09 Thu 17:22
今年(2013年)はヴェトナムとの外交樹立40周年を記念して“日越友好年”に指定されていますが、その記念イベントのひとつとして、日越友好年記念のバナーをつけた“日越友好列車”が、きのう(8日)から、ハノイ=ホーチミン(旧サイゴン)間を結ぶ南北線(通称:統一鉄道)で運行を開始しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1958年に北ヴェトナム(ヴェトナム民主共和国)で発行された“祖国再統一のために”と題する宣伝切手で、ハノイ=サイゴン間の鉄道路線図と鉄道再建工事を行う人々が描かれています。 ヴェトナムの南北線は、仏領インドシナ時代、延べ37年の歳月をかけて建設され、1935年に全長1726kmが全線開通しました。1945年に始まる第一次インドシナ戦争により鉄道路線は大きな被害を受けたほか、1954年のジュネーヴ休戦協定で北緯17度線を境界としてヴェトナム民主共和国とヴェトナム国の南北両政府が成立したことにより、全線通しての運行は不可能となりました。今回ご紹介の切手はこうした状況を踏まえて北ヴェトナム側が発行したもので、南北にまたがるハノイ=サイゴン鉄道を国土再統一の象徴として描いたものです。 その後、米国とのヴェトナム戦争で多くの橋梁が破壊されたほか、1975年の南北統一後も中国による侵略戦争(中越戦争)等があってメンテナンスが行き届かず、老朽化による鉄道の劣化は深刻な事態となっていました。 このため、ヴェトナム政府の要請を受けたわが国は、円借款事業による南北線63橋梁の改修・架け替え事業を実施。その結果、1994年から2005年にかけてはヴィン=ニャチャン間の19橋梁が、2012年10月までにドンハ=クアンガイ間の10橋梁の改修事業が完成し、現在は、残る34橋梁の改修事業が続けられています。 現在、ハノイ=ホーチミン間の鉄道での所要時間は、最短30時間ということで、ぶっ通しで乗っていても2泊3日になる勘定ですが、どうせなら、途中、フエあたりで下車して世界遺産の旧市街を散策するなどしたりして、1週間くらいかけてのんびりと楽しみたいですな。きのうスタートした日越友好列車は9月23日までの間に30往復程度の運行ということですので、この機会に、一部区間だけでも乗りに行こうかなぁ。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-08 Wed 11:56
きょう(8日)は、世界赤十字デーです。というわけで、赤十字募金の切手の中から、この1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1944年に仏領西アフリカで発行された赤十字募金の切手で、中央に、フランスの象徴であるマリアンヌの顔が描かれています。赤十字関係の切手というと切手上にも赤十字のマークが入っていることが多いのですが、今回ご紹介の切手の場合はそうではないので、ついつい見逃してしまいそうです。 1939年9月1日、第二次欧州大戦が勃発すると、1940年6月にフランス本国は降伏し、パリを含む北部フランスはドイツに占領され、南部はフィリップ・ペタンを国家主席とし、ヴィシーを首都とする親独派政権の支配下に置かれることになりました。これに対して、ドイツへの降伏を潔しとせず、抗戦継続を主張するシャルル・ド・ゴールらはロンドンに亡命して“自由フランス”を結成。フランス本国が親独派と抗戦派に分裂する中で、植民地政府の対応も割れることになります。 開戦当時、モーリタニア、セネガル、仏領スーダン(現マリ)、仏領ギニア(現ギニア)、コートディヴォワール、ニジェール、オートボルタ(現ブルキナファソ)、ダオメ(現ベナン)の8地域で構成される仏領西アフリカ連邦総督は、1939年8月10日に着任したばかりのレオン・アンリ・シャルル・カイラでしたが、彼は本国の対独降伏に抗議して1940年6月25日に辞職。このため、ヴィシー政府は、カイラの前任者で隣接する仏領赤道アフリカの総督に転出していたピエール・フランソワ・ボアッソンを西アフリカ総督に復帰させ、この地がド・ゴール派に流れるのを阻止します。 仏領西アフリカの“中立化”に成功したドイツは、西アフリカ有数の港であるダカールをドイツ潜水艦の基地として使用することを計画。このため、これを阻止すべく、自由フランス軍はイギリスの支援を受けてダカールへの上陸を試みましたが、結局、上陸は果たせないまま、撤退を余儀なくされました。これに対して、ダカールの攻略に失敗したイギリスは仏領西アフリカに対して海上封鎖を行ったため、貿易は途絶し、西アフリカの経済は大きな打撃を受けることになります。 1942年11月8日、連合軍はカサブランカ、オラン、アルジェへの上陸作戦を敢行。11月11日までにこの地域のヴィシー・フランス軍は降伏。こうした事態の転換を受けて、12月7日、ボアッソンは連合国支持を表明し、ヴィシー政権から離脱しました。 自由フランスへの合流後の仏領西アフリカ連邦では、それまで各植民地が個別に発行していた切手に代わり、連邦共通の切手が発行されました。ただし、連邦共通の切手が発行されるようになった後も、1943年以前の各植民地の切手は有効でした。今回ご紹介の切手も、そうした状況の下で発行された1枚です。 さて、先日刊行したばかりの拙著『マリ近現代史』では、現在のマリの前身にあたる仏領スーダンを中心に、仏領西アフリカ連邦が解体され、現在の西アフリカ諸国が独立していくまでの過程についても、切手などを図版として用いながらご説明しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-07 Tue 19:19
ご報告が遅くなりましたが、『(郵便局を旅する地域活性マガジン)散歩人』第21号(2013年5月号)ができあがりました。僕の連載「切手で訪ねるふるさとの旅」は、今回は新潟県の特集です。そのなかから、きょうはこの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1965年3月15日に発行された「上信越国立公園」の切手のうち、清津峡を取り上げた5円切手です。 黒部峡谷、大杉谷とともに日本三大渓谷のひとつに数えられる清津峡は、十日町市小出から湯沢町八木沢にかけての全長約12.5kmに渡って、清津川(信濃川の支流)が形成した峡谷。昭和24(1949)年に上信越高原国立公園の一部として指定されたことで観光地として有名になり、温泉街も整備されました。「上信越国立公園」の切手には、渓谷と柱状節理の迫力ある地形が取り上げられています。 さて、『散歩人』の記事では、地図をバックに、今回ご紹介の切手のほか、長岡の大花火、新潟県政記念館、十日町雪まつり、関越トンネル、五合庵と日本海、出雲崎をご紹介しています。掲載誌の『散歩人』は各地の郵便局などで入手が可能ですので、御近所でお見かけになりましたら、ぜひお手にとってご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-06 Mon 11:10
きのう(5日)、独立後初の政権交代もありうるといわれる中で投票が行われたマレーシアの総選挙は、与党連合が連邦議会下院(定数222)で過半数の133議席を確保し、マレー系政党の統一マレー国民組織(UMNO)を中核とする1957年の独立以来の長期政権が維持されました。というわけで、きょうはマレーシア切手の中から、この1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、昨年(2012年)、マレーシアで発行された新アゴン即位の記念切手です。 現在のマレーシア国家は13州からなる連邦制国家ですが、これらの各州はもともとスルターンと呼ばれる地方君主の支配下に置かれていました。このため、スルターンを頂く9州(ジョホール州・クダ州・クランタン州・ヌグリ・スンビラン州・パハン州・ペラ州・プルリス州・スランゴール州・トレンガヌ州)のスルターンが任期5年の輪番制で連邦の国家元首(アゴン。日本語ではしばしば国王と訳される)になるという制度が採用されています。 マレーシアの憲法では、アゴンは立憲君主として規定されており、その大権の多くは内閣の助言に基づいて行使されます。アゴンは首相任命の可否について判断する権利を持っていますが、内閣は下院に責任を負う議院内閣制が採用されているため、実際には、下院多数党の党首が首相に任命されるのが慣例です。なお、下院で内閣不信任案が可決された場合は、アゴンは、内閣の助言により下院を解散するか、助言を拒否して内閣を解任するか、いずれかを選択できます。 かつてのアゴンは公私にわたり法的な責任を問われない特権を有していましたが、1993年の憲法改正により私的行為についての免責特権は廃止されました。したがって、現在のマレーシアでは、理論的には、司法大臣が承認すれば、検察当局もしくはマレーシア国民は特別裁判所にアゴンを提訴することも可能です。なお、アゴンの公務に関する訴訟は、アゴン本人ではなく、マレーシア政府が被告となります。 現在のアゴンは、クダ州のスルターン、アブドル・ハリム・ムアザンで、2011年12月13日に第14代アゴンとして即位しました。彼は、1970年9月21日から1975年9月20日まで、第5代アゴンにもなっており、2度目の就任です。アゴンが各州のスルターンの持ち回りである以上、理論上、2度目のアゴンというケースはほかにもありうるわけですが、実際には、今回ご紹介のアブドル・ハリム・ムアザンが最初のケースとなりました。 即位の記念式典は2012年4月12日に行われ、新アゴンは「マレーシアが2020年までに先進国の仲間入りをするため、国民は高い道徳を備えると同時に知識と技能を身につけ、力強く前進しなければならない。国民が政策を支持し役目を果たすことなしに新たな歴史を作った国家は存在しない。国際競争に勝ち経済的に発展するだけではなく、諸外国の尊敬を得る国へと発展させていかなければならない。国民が一致団結し、政府と緊密に連携してマレーシアをさらに発展させることを望む」とのメッセージを国民に向けて発しています。 さて、今回の総選挙により、2009年4月に発足したナジブ政権は、形式的には、一定の信任を得たということになるわけですが、今回与党が獲得した133議席は改選前を下回っています。2008年の前回総選挙では、与党連合が140議席しか獲得できず、安定多数の148議席(222議席の3分の2)を割り込んだ責任を取って、当時のアブドラ政権が退陣に追い込まれたという経緯もありますからねぇ。国是であるマレー人優遇政策に対する不満もあって、人口の約4分の1を占める華人系の与党連合に対する支持離れが鮮明になっていることもあり、国王のメッセージにあるような“国民の一致団結”は「言うは易く…」という状況でしょうか。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-05 Sun 14:10
今日は拙著『マリ近現代史』の奥付上の刊行日です。いつもは、拙著の奥付上の刊行日には表紙カバーに使った切手やカバーについてご説明するのですが、きょうは“こどもの日”でもありますので、同書の扉に使ったこのマテリアルについてご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2001年に当時のマリ共和国大統領・アルファ・ウマル・コナレの名義で差し出されたカードの表紙(左の画像)とその中身です。カードを開いた左下には、国家の将来のためには子供を大切にしなくてはいけないとの趣旨で「我々の将来の道は我々の子供たちによって我々にあらかじめ示されている」との文言があり、右側にはコナレ自身のサインとともに「マリ共和国大統領と家族はあなたのご厚意に感謝いたします」との文言も印刷されていますので、おそらく、名宛人によるマリの児童福祉への貢献(おおそらく、多額の寄付でしょう)に対する礼状と思われます。なお、前に向かって歩く子供の姿を後ろからとらえた写真は、将来に向かって進むマリの象徴ということなのでしょう。ちなみに、このカードは、下に示すようなマリ大統領府の封筒に入れられて、名宛人に届けられています。 今回ご紹介のカードに署名しているアルファ・ウマル・コナレは、1946年2月2日、カイの生まれ。1969年に首都バマコの高等師範学校を卒業した後、1971年から1975年まで、ポーランドのワルシャワ大学に留学し、帰国後、歴史家としてマリ国内の大学・研究機関に勤務し、名声を得ていました。 1978年、ムーサ・トラオレの軍事独裁政権は、名目的な“民政復帰”を前にソフト・イメージを演出する目玉人事として、コナレをスポーツ文化大臣に抜擢します。しかし、1980年、コナレは政権批判を理由に解任され、以後、反体制派知識人の代表的な存在として、1989年、マリ最初の独立系日刊紙『レゼコ(こだま)』を刊行するようになりました。 マリを代表する文化人の一人であり、国民的な人気も高かったコナレに対しては、トラオレ政権も手荒なことはできなかったため、彼の周囲にはしだいに民主化勢力が結集するようになります。そして、1990年以降、まず、複数政党制の導入と言論・集会の自由を求める運動が開始されましたが、トラオレはこれを時期尚早と一蹴。これをきっかけに、経済無策の独裁政権に対する国民の不満が一挙に噴出し、1991年の民主革命につながりました。 1992年5月11日に行われた大統領選挙では、コナレは1回目の投票で全投票の45%を獲得して1位となり、決選投票では69%を得票して、民主化後初の大統領に当選。2002年まで大統領を2期10年務め、この間、国内宥和と経済の再建に努め、退陣間近の2002年にはアフリカ最大のスポーツイベントの一つとされるサッカーのアフリカ・ネイションズ・カップのマリ開催を成功させています。彼が大統領だった10年間は、独立以降のマリの歴史の中では、最も安定した時代だったといってよいでしょう。 さて、拙著『マリ近現代史』では、コナレの下で曲がりなりにも民主化を実現していたマリが、なぜ、現在のような混迷に陥ったのか、そのプロセスについても詳しく解説しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-04 Sat 09:52
ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』4月26日号が刊行されました。僕の月1連載「切手に描かれたソウル」では、放火で焼失した崇禮門(南大門)の修復が完了し、きょう(4日)、記念式典が行われるということで、崇禮門の切手の中から、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1992年に発行された「第21回万国郵便連合会議誘致(決定)」の記念切手で、中央に崇禮門が描かれています。 もともと、崇禮門は漢城(現ソウル)に遷都した李成桂が都城を築いたことにより、1398年に完成しました。その後、世宗時代の1448年と成宗時代の1479年に改築され、2階建てとなりました。これは、ソウル南境の冠岳山が炎の形に似ているため、山からの火気を妨げようという風水思想によるものです。 1907年、皇太子時代の大正天皇の行啓を機に、ソウル市内の街路整備のため、門の両側に続いていた城壁は撤去されましたが、門だけは道路上に残されました。なお、文化財としての崇礼門の価値が注目されるようになったのも日本統治時代のことで、1934年、朝鮮総督府は、これ以上の市街地の開発により門が取り壊されることのないよう、宝物第1号に指定しています。 1950年に勃発した朝鮮戦争では、ソウルは計4回、破壊されましたが、崇禮門は奇跡的に一部の損傷にとどまり、焼失を免れました。その後、1961年の大規模な解体・改修工事を経て、1962年12月20日、あらためて、現存する韓国最古の木造建築(当時)として、大韓民国の国宝第1号に指定されました。 門への立ち入りは、ながらく禁止されていましたが、2005年5月、門の南側に芝生の広場が造成されて間近に見られるようになり、さらに、翌年3月からは門をくぐれるようになっていました。ところが、2008年2月、放火により、石造の門を除いた木造の鐘楼部分の大半が焼失してしまいます。犯人の男は、都市再開発事業による家の立ち退きの件で補償額が少ないことに不満を持ち、大統領府や区役所に陳情したものの受け入れられなかったため、世間の注目を集めたかったと自供していますが、何とも迷惑な話ですな。 その後、復元工事が開始され、当初予定では2012年末までの工事完了だったものが、作業が遅れ、ようやくこのたび工事完了となりました。ちなみに、どういうわけか、日本国内ではほとんど報じられていないのですが、復元に使われた丹青の顔料と接着用の膠または漆は日本製です。このため、韓国国内には、日本製品を使っての国宝の修復に対する反対論も強かったのですが、結局、韓国の国産品・技術では代替できず、担当者は「国宝で実験はできない」との理由で、反対論をおさえたそうです。 さて、崇禮門は、ソウルのみならず韓国伝統文化のシンボルとして、大韓民国成立直後の1949年7月に発行された50ウォン切手以来、しばしば、切手にも取り上げられていますが、その中から、今回は、1992年に発行された「第21回万国郵便連合会議誘致(決定)」の記念切手をご紹介しました。 万国郵便連合の大会議は原則5年に1度、各国持ち回りで、全加盟国を集めて郵便関係の条約改正について討議する会議で、1994年8月の第21回会議はソウル江南のコエックスを会場として開催されました。今回ご紹介の切手は、その会議の開催に合わせて発行されたものではなく、会議の招致が決定したことを記念したものです。日本の感覚からすると、会議が実際に行われ、無事に終了するかどうかも分からない時点で記念切手を発行するというのは、ちょっと気が早いような気もしますが、まぁ、そのあたりはお国柄なのでしょう。 さて、記念切手には、会場のCOEXとソウルのシンボルとしての崇禮門、さらに南山のNソウル・タワーが描かれているのですが、タワーを背に崇禮門を望む構図だと、COEXはタワーよりも後ろに見えるはずですし、逆に、COEXから崇禮門の方向を見るのなら、タワーはその間に位置しているのが本来の配置です。 もちろん、切手の図案はデザインの都合上、必ずしも現実の地理に忠実である必要はないのですが、遠くに見えるNソウル・タワーを目印に、ソウルの街歩きをした経験からすると、ちょっと不思議な気分になりますな。 さて、ソウルの街歩きといえば、4月から、毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。今回は、来週火曜日、7日の開催で、仏誕節(日本の花まつりと異なり、韓国では旧暦で行われるため、ことしは5月17日になります)にちなんで、仏教・仏像関係の話題をいろいろとご紹介する予定です。講座はお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-03 Fri 10:46
きょう(3日)は憲法記念日です。というわけで、日本国憲法の話をしても良いのですが、せっかく『マリ近現代史』を出したばかりですので、マリ共和国の憲法の話をしましょう。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1992年にマリの現行憲法が施行され、マリ第3共和政が正式に成立してから1周年になるのを記念して、1993年1月に発行された切手です。不気味なデザインの切手ですが、第3共和政が1991年の民主革命を経て誕生したことを踏まえ、国民の政治参加を示す腕と民主化の勝利を意味する多数のVサイン、さらに、政府を監視する国民の目を表現しているということなのでしょう。 1958年12月末、旧仏領スーダンの首府バマコに、スーダン、セネガル、オート・ヴォルタ、ダホメ各地の汎アフリカ主義者らが集まり、新たな連邦を創設してフランスからの完全独立を目指して会議を開催。その結果、年が明けた1959年1月17日、セネガルのダカールで開催された“憲法制定会議”において「“マリ連邦”憲法」が承認され、各共和国で国民投票にかけられることになりました。しかし、同憲法が国民投票で可決されたのはスーダンとセネガルのみで、この両国により、1960年6月、マリ連邦が発足します。 しかし、マリ連邦は2ヶ月ほどで崩壊。旧仏領スーダンの地域はマリ共和国として独立し、これにあわせて、「アフリカ統一のためなら主権の一部もしくは全部を放棄する」との規定があるマリ共和国憲法が制定されました。 その後、1968年に軍事クーデターが発生し、建国以来のモディボ・ケイタ大統領は失脚。ムーサ・トラオレによる軍事独裁政権がスタートします。クーデター後、独立時の憲法は停止され、しばらく、マリは無憲法状態になりました。その後、軍事政権は、1974年6月2日、“民政復帰の準備段階”として、新憲法についての国民投票を実施。これが(軍事政権の発表によれば)99%の有権者の賛成により可決され、マリの第2共和政がスタートします。ちなみに、第2共和政の憲法では、政党は“マリ人民民主同盟(UDPM:Union Démocratique du Peuple Malien)”一党のみが唯一の合法政党とされ、大統領任期は5年でした。なお、国民投票に先立ち、軍事政権は国民投票の結果に関わらず、今後5年間は政権にとどまると発表。実際、ムーサ・トラオレは1991年の民主革命まで独裁政権を維持しています。 1991年の民主革命後、アマドゥ・トゥマニ・トゥーレを委員長とする暫定政権として。人民救済移行委員会が発足。同年7月29日から8月13日にかけて委員会は憲法制定のための国民会議を招集するとともに、トゥーレは1992年に大統領ならびに国会議員の選挙を行うことを公約として発表。翌1992年1月12日の国民投票で、委員会の作成した憲法草案が可決され、現行憲法を戴く体制としてマリ第3共和政が発足します。 マリの現行憲法では、国家元首として国軍の最高司令官でもある大統領は1期5年で任期は2期までと規定されています。また、大統領は政府の長として首相を任命し、首相は国会に対して責任を負い、不信任案が可決された場合には国会を解散することができます。政党結社の自由に関しては、宗教や民族を基盤とした政党、地域政党、性別による差別を主張する政党は禁止されているものの、それ以外の規制はありません。 また、第3共和政憲法では、「世界人権宣言」と「人および人民の権利に関するアフリカ憲章」の精神を順守することがうたわれており、それを担保するため、スト権と司法の独立も認められ、違憲立法審査権を有する憲法裁判所も設けられました。ちなみに、マリ憲法の背景となった「人および人民の権利に関するアフリカ憲章」は、前文と68条からなり、前文では植民地主義、新植民地主義、アパルトヘイト、シオニズムの廃絶が謳われ、世界人権宣言に記された全ての人権の保障を明記しています。特徴的なのは、「民族自決の権利」(第20条)、「民族の発展」(第22条)などの条項で、加盟国は条約で保障された権利の促進を行う任務を負う(第45条)とされ、“人と人民の権利に関するアフリカ委員会”が加盟国の人権状況について調査・勧告を行うことになっています。 2012年3月の軍事クーデターでは、一時、第3共和政憲法は停止されましたが、国際的な批判を受け、同年4月、クーデターによって政権を掌握した“民主主義と国家の再建のための国民委員会(CNRDR:Le Comité National pour le Redressement de la Démocratie et la Restauration de l'Etat)”は、トゥーレ大統領の退陣を条件に、第3共和政憲法に従い、国会議長のディオンクンダ・トラオレが暫定大統領に就任し、次期大統領選挙の実施と民政への復帰を目指す、ということで合意が成立。現在の暫定政権が発足することになりました。 さて、拙著『マリ近現代史』では、1991年以降、20年間、曲がりなりにも民主化を実現していたマリが、なぜ、現在のような混迷に陥ったのか、そのプロセスについても詳しく解説しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 4月から、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-02 Thu 11:55
先月26日から25年ぶりの豪雨に見舞われているサウジアラビアで、昨日(1日)までに、首都リヤドをはじめ複数の都市で洪水が起き、13人が死亡、4人が行方不明となっているそうです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2008年にサウジアラビアで発行された“リヤド、50年間の発展”の記念切手で、切手発行当時のリヤドの風景が取り上げられています。 アラビア半島中部、ディライーヤの支配者だったサウード家は、18世紀の半ば、イスラムの純化を主張するムハンマド・イブン・アブドゥル・ワッハーブと盟約を結び、ワッハーブの宗教改革運動の保護者としてアラビア半島で勢力を拡大し、第1次サウード王国を建国しました。しかし、いわゆる原理主義的な性格を持つワッハーブ派の勢力拡大は周辺諸国の脅威となり、エジプトの太守、ムハンマド・アリーは討伐軍を派遣し、首都ディライーヤを攻略。第1次王国は崩壊します。 このため、サウード家は拠点をディライーヤから近隣のリヤドに移し、1824年に第2次サウード王国を再興しましたが、同国は、1892年、ナジュド北部を支配していたラシード家に攻略され、国王はクウェートに亡命。リヤドもラシード家に占領されてしまいます。 その後、クウェートのサバーハ家とサウード家はラシード家を共通の敵として戦い、1902年1月、サウード家のプリンスであったアブドゥル・アズィーズ・イブン・アブドゥル・ラフマーン(通称イブン・サウード)は少数の手勢を引き連れてリヤドに潜入。マスマク城を奇襲して総督のアジュランを殺害し、リヤドの奪還を果たしました。その後、イブン・サウードはリヤドを拠点として、アラビア半島で勢力を拡大し、1932年に現在のサウジアラビア王国を樹立しました。 これにより、リヤドは正式に王国の首都となりましたが、当時のリヤドは、依然として中世の都邑といった色彩が濃厚で、近代国家としてのインフラ設備は無いに等しい状況でした。リヤドの都市開発が急速に進むのは、1940年代に入り、本格的な油田開発が進められるようになってからのことで、潤沢なオイルマネーを背景に、現在では、今回ご紹介の切手にあるように、高層建築が建ち並ぶ近代都市へと変貌を遂げました。 ただし、急激な都市開発の一方で、サウジアラビア全体が通常は雨がほとんど降らない砂漠地帯ということもあって、都市部の排水施設(普段はその必要性が認識されることはほとんどありません)の整備は遅れており、そのため、ちょっとした雨でも洪水が発生するという事態が繰り返されています。2009年にはジェッダで洪水が起きて100人以上が死亡しているほか、2010年にはリヤドで洪水が起き、少なくとも2人が死亡しているのは、そのごく一例にすぎません。 さて、現在、ロシアと中東を歴訪中の安倍首相は、きのう(現地時間30日)、サウジアラビアのサルマン皇太子と会談し、日本の原発輸出を可能にする原子力協定締結交渉入りに向け、事前の事務レベル協議を開始することで合意するとともに、海上自衛隊がサウジアラビア海軍に掃海技術の向上で協力することを想定した“安全保障対話”新設でも一致したことが話題となりましたが、その会談場所は首都のリヤドではなく紅海沿岸のジェッダでした。もちろん、ジェッダもサウジアラビアの重要都市であることには違いないのですが、今回は、首都のリヤドが洪水被害に見舞われたという事情もあったのでしょう。これを機に、原発のみならず、都市の排水システムなどのインフラ整備についても、わが国の技術が輸出できるようになると良いですな。 なお、末筆ながら、今回の洪水で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い復旧をお祈りしております。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! amazon、e-hon、hontoネットストア、Honya Club、JBOOK、7ネット・ショッピング、紀伊國屋書店、版元ドットコム、ブックサービス、文教堂、丸善&ジュンク堂書店、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 4月から、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-05-01 Wed 10:02
オランダでは“女王の日”にあたるきのう(30日)、在位33年を迎えたベアトリックス女王から長男のウィレム・アレクサンダー皇太子に王位が継承され、123年ぶりに男性の国王が誕生しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1852年に発行されたオランダ最初の切手のうち、当時の国王ウィレム3世の肖像を描く5セント切手です。このウィレム3世が1890年に崩御されて以来、オランダではウィルヘルミナ、ユリアナ、ベアトリクスの3代にわたって女王が続き、ようやく、今回の新国王で男性国王が復活したということになります。 ちなみに、ウィレム3世のお名前は、正式には、“ウィレム・アレクサンダー・ポール・フレデリック・ローデウェイク”で、新国王のお名前は“ウィレム=アレクサンダー・クラウス・ジョージ・フェルディナンド”です。ウィレム3世の場合は、ウィレムとアレクサンダーの間にスペースがあって別の単語扱いですが、新国王は二つの単語の間はハイフンでつながっていて分離できないので、今後は“国王ウィレム・アレクサンダー”と呼ばれることになるのでしょう。先日のローマ教皇の例に懲りて、今回の報道では、“1世”をつけるメディアはなかったようですが、僕がたまたま見ていたフジテレビの朝のニュースでは“ウィレム”を取って“アレクサンダー”と国王の名前を紹介しており、妙な感じがしました。あまりにも自信たっぷりで、字幕も含めて何度も繰り返していたので、何か理由があるのかもしれません。 なお、オランダ最初の切手が発行されたのは1852年1月1日のことで、5セント、10セント、15セントの同図案・色違いの3額面があり、ポストホルンの透かしが入っています。印刷はユトレヒトの王立造幣局で行われ、1シートは25面ブロック4つからなる100面で、5セントは6版、10セントは10版ありますが、15セントは1版のみでの印刷でした。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! e-hon、hontoネットストア、JBOOK、7ネット・ショッピング、版元ドットコム、丸善&ジュンク堂書店などで好評発売中のほか、amazonでも予約受付中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 4月から、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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