2024-04-17 Wed 07:44
デンマークの首都コペンハーゲンのランドマークとなっている旧証券取引所で、16日午前7時ごろ(現地時間)、火災が発生。建物の大部分と屋根が焼け、約55メートルの尖塔が倒壊しました。建物は改修工事中で、火災の原因は不明。これまでのところ、負傷者は確認されていません。というわけで、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1955年4月21日にデンマークが発行した“デンマーク王国1000年”シリーズのうち、今回火災に遭った証券取引所(切手発行時は現役の取引所として使われていました)を描く20オーレ切手です。 詳細については、こちらをクリックして、内藤総研サイト内の当該投稿をご覧ください。内藤総研の有料会員の方には、本日夕方以降、記事の全文(一部文面の調整あり)をメルマガとしてお届けする予定です。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内 ★ 4月19日(金) 10:00~ ニッポンジャーナル インターネット番組「ニッポンジャーナル」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。皆様、よろしくお願いします。 4月26日(金) 05:00~ おはよう寺ちゃん 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は6時からになります。皆様、よろしくお願いします。 4月26-28日(金-日) スタンプショウ 2024 毎年恒例、東京・浅草で開催の世界切手祭り・スタンプショウの会期中、以下の日程でトークイベントを行います。事前予約不要・参加費無料ですので、ぜひご参加ください。なお、スタンプショウの詳細は主催者サイトをご覧ください。 4月26日(金) 14:30-15:30 「セント・ジョージの龍退治:ソヴリン金貨と切手」 4月27日(土) 11:00-12:00 『切手もの知り図鑑 一番切手50のエピソード』出版記念講演 4月27日(土) 12:30-13:30 「加賀・能登と戦後の記念切手」 4月29日(月・祝) 謀略の世界史 特別編~リヒャルト・ゾルゲ 毎月第1土曜日に開催している講座、「謀略の世界史」の特別編として、戦前の日本を震撼させたソ連のスパイ、リヒャルト・ゾルゲについてお話しします。詳細はこちらをご覧ください。 よみうりカルチャー 荻窪 宗教と国際政治 原則毎月第1火曜日 15:30~17:00 時事解説を中心とした講座です。詳細はこちらをご覧ください。 謀略の世界史 原則毎月第1土曜日 13:00~14:30 MI6、CIA、モサドなど各国の情報機関のあらましや、現代史の中で彼らが実際に関与した事件などを幅広くご紹介していきます。詳細はこちらをご覧ください。 武蔵野大学のWeb講座 大河企画の「日本の歴史を学びなおす― 近現代編」、引き続き開講中です。詳細はこちらをご覧ください。 「龍の文化史」、絶賛配信中です。龍/ドラゴンにまつわる神話や伝説は世界各地でみられますが、想像上の動物であるがゆえに、それぞれの物語には地域や時代の特性が色濃く反映されています。世界の龍について興味深いエピソードなどを切手の画像とともにご紹介していきます。詳細はこちらをご覧ください。 ★ 『切手もの知り図鑑 一番切手50のエピソード』 5月1日刊行!★ 「動物と植物」「科学技術」「社会と文化」「神話/伝説と宗教」の4章立てで、犬、猫、宇宙開発、飛行機、クリスマスといったテーマで、初めて描かれた切手図案にまつわる秘話、思いがけない発行に至る背景に加え、シーラカンスやテレビ、警察官、タトゥー、髑髏といった、あっと驚く意外なテーマの一番切手も登場します! * スタマガネット内の特設ページにて予約受付中ですので、よろしくお願いします。 ★ 『今日も世界は迷走中』 オーディオブックに! ★ 拙著『今日も世界は迷走中』がAmazonのオーディオブック“Audible”として配信されました。会員登録すると、最初の1冊は無料で聴くことができます。お申し込みはこちらで可能です。 |
2023-07-30 Sun 06:48
きょう(30日)は、土用の丑の日。というわけで、毎年恒例、世界のウナギ切手の中から、この1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2013年1月7日、デンマークが発行したウナギ(ヨーロッパウナギ)の切手です。 詳細については、こちらをクリックして、内藤総研サイト内の当該投稿をご覧ください。内藤総研の有料会員の方には、本日夕方以降、記事の全文(一部文面の調整あり)をメルマガとしてお届けする予定です。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内 ★ 新講座「龍の文化史」 8月9日配信開始! 武蔵野大学の新たなWeb講座「龍の文化史」が8月9日から配信開始になります。龍/ドラゴンにまつわる神話や伝説は世界各地でみられますが、想像上の動物であるがゆえに、それぞれの物語には地域や時代の特性が色濃く反映されています。今回の講座では、日本の龍を皮切りに、中国、朝鮮、琉球、東南アジア、キリスト教世界など、世界の龍について興味深いエピソードなどを切手の画像とともにご紹介していきます。詳細はこちらをご覧ください。 8月11日(金) 05:00~ おはよう寺ちゃん 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から8時までの長時間放送ですが、僕の出番は6時からになります。皆様、よろしくお願いします。 ジョン・F・ケネディとその時代 毎月第4土曜日開催のよみうりカルチャー北千住での講座です。今から60年前の1963年11月に暗殺されたケネディ大統領とその時代について、様々な角度から解説をします。詳細はこちらをご覧ください。 よみうりカルチャー 荻窪 宗教と国際政治 原則毎月第1火曜日 15:30~17:00 時事解説を中心とした講座です。詳細はこちらをご覧ください。 武蔵野大学のWeb講座 大河企画の「日本の歴史を学びなおす― 近現代編」、引き続き開講中です。詳細はこちらをご覧ください。 ★ 『今日も世界は迷走中』 好評発売中!★ ウクライナ侵攻の裏で起きた、日本の運命を変える世界の出来事とは!内藤節炸裂。 * ご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
2023-01-26 Thu 10:00
雑誌『キュリオマガジン』2023年1月号が発行されました。僕の連載「エドワード7世の郵便学」は、今回は、皇太子時代のエドワード7世の婚約についての話題を中心に取り上げましたが、その記事の中からこの1枚をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1905年にデンマークが発行した100オーレの普通切手で、エドワード7世の岳父でデンマーク国王のクリスティアン9世の肖像が取り上げられています。 詳細については、こちらをクリックして、内藤総研サイト内の当該投稿をご覧ください。なお、内藤総研の有料会員の方には、本日夕方以降、記事の全文(一部文面の調整あり)をメルマガとしてお届けする予定です。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内 ★ 2023年1月27日(金) 05:00~ おはよう寺ちゃん 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から8時までの長時間放送ですが、僕の出番は6時からになります。皆様、よろしくお願いします。 1月28日(土)開講! よみうりカルチャー 北千住 エリザベス女王の現代史 毎月第4土曜日 13:00~14:30 エリザベス女王の描かれた切手を手掛かりに、現代史を読み解く講座です。詳細はこちらをご覧ください。 2月5日(日) 13:00~ 「現代日中関係史」 2月4・5日(土・日)に東京・目白の切手の博物館で開催される「第14回テーマティク研究会切手展」にあわせて、下記の通り、拙著『現代日中関係史』の刊行記念トークイベントを開催します。切手展の参観と合わせて、ぜひ、ご参加ください。(切手展の詳細はこちら) 【日時】 2月5日(日) 13:00~14:30 【会場】切手の博物館3階会議室 【参加費】無料 ※先着順・最大20名 【問合先】(公財)日本郵趣協会 TEL:03-5951-3311 よみうりカルチャー 荻窪 宗教と国際政治 原則毎月第1火曜日 15:30~17:00 時事解説を中心とした講座です。詳細はこちらをご覧ください。 武蔵野大学のWeb講座 「日本の歴史を学びなおす― 近現代編」と「日本郵便150年の歴史」の2種類の講座をやっています。詳細はこちらをご覧ください。 ★ 『現代日中関係史 第1部 1945-1972』 好評発売中! ★ 日本郵趣出版の新レーベル「郵便×歴史シリーズ」の第一弾の企画として、切手という切り口から第二次大戦後の日中関係を読み解く『現代日中関係史』。その第1巻となる本書は、第二次大戦後、わが国が中華人民共和国と国交を樹立(いわゆる国交正常化)する1972年9月以前を取り扱っています。なお、1972年の国交”正常化”以降については、2023年3月に刊行予定の第2巻でまとめる予定です。 * ご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページのリンクがあるほか、主要書店の店頭在庫も確認できます。また、販売元の郵趣サービス社のサイト、スタマガネットの特設サイトサイトでは、本書の内容見本をご覧いただけます。 |
2022-01-14 Fri 09:11
デンマークのマルグレーテ2世女王陛下が、1972年1月14日、父王フレゼリク9世の崩御に伴いデンマーク国王として即位されてから、ちょうど50年になりました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、今年(2022年)1月3日、デンマークが発行した“マルグレーテ2世女王陛下御在位50年記念”の切手シートで、王室の紋章を描いた切手を中心に、1972年の即位当時と2022年の現在の女王の肖像の切手を配した構成になっています。 マルグレーテ2世は、第二次大戦中の1940年4月16日、デンマークのフレゼリク王太子(後のフレゼリク9世)と同妃イングリッド(スウェーデン国王グスタフ6世アドルフの娘)の長女(第1子)としてコペンハーゲンの冬の王宮であるアマリエンボー宮殿でお生まれになr、マルグレーテ・アレクサンドリーネ・トーヒルドゥア・イングリッドと名付けられました。その直前の4月9日にはドイツ軍がデンマークに侵攻し、その日のうちにデンマーク政府が全面降伏するという苦難の時代でした。 1947年4月20日、クリスチャン10世(マルグレーテ2世の祖父)の崩御に伴い、フレゼリク王太子がフレゼリク9世として即位された時点では、デンマークは女性の王位継承権を認めておらず、新国王夫妻には男子が授からなかったため、次の王位は弟のクヌーズ王子に継承される予定でした。しかし、クヌーズ王子は、ドイツのデンマーク占領中に積極的にナチスを支援しことから国民に不人気で、なおかつ、フレゼリク9世とその娘たちの国民的人気が非常に高かったことから、国民の間で王位継承の変更を求める声が高まり、1953年、デンマーク王国憲法と王位継承法の改正により、「男子優先ながら、男子が不在の場合には女子に王位継承権が認める」として、マルグレーテ王女が王位を継承されることになりました。 もっとも、王女ご本人は将来の国王になることを望んでおられず、王位継承者に指定されたときには「私は普通の女の子のように大きくなって、そして普通の結婚をして、普通に暮らしたい」とおっしゃったそうです。 その後、王女は、ケンブリッジ大学、パリ大学(ソルボンヌ)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学んだ後、1967年6月10日、フランスのモンペザ伯爵家出身で外交官のアンリ・マリ・ジャン・アンドレ・ド・ラボルドゥ・ド・モンペザ(“アンリ”のデンマーク語読みで“ヘンリック王子”と呼ばれました)とご結婚。1968年にはフレゼリク王太子が、1969年にはヨアキム王子がお生まれになりました。また、1970年には大阪万博列席のため訪日されています。 1972年1月14日、父王フレゼリク9世の崩御に伴い、デンマークでは初の女王としてご即位。ちなみに、マルグレーテ1世は、1387年、デンマーク王オーロフ2世が17歳で急死した後、王の母としてデンマーク王国全体の後見人に選出された人物で、事実上の君主として君臨していたものの、正式には”国王”としての称号を名乗っていませんでした。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内★ 1月17日(月) 05:00~ おはよう寺ちゃん 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。 武蔵野大学のWeb講座 2021年12月1日~2022年2月8日 「日本の歴史を学びなおす― 近現代編その1 ― 黒船来航」 12月1日から2月8日まで、計7.5時間(30分×15回)の講座です、お申し込みなどの詳細は、こちらをご覧ください。 ★ 『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.2 戦後編』 好評発売中! ★ 2530円(本体2300円+税) 明治4年3月1日(1871年4月20日)にわが国の近代郵便が創業され、日本最初の切手が発行されて以来、150年間の歴史を豊富な図版とともにたどる3巻シリーズの第2巻。まずは、1945年の第二次大戦終戦までの時代を扱った第1巻に続き、第二次大戦後の1946年から昭和末の1989年までを扱っています。なお、2022年3月刊行予定の第3巻では平成以降の時代を取り扱う予定です。 * ご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 ★★ 書籍無料ダウンロードを装った違法サイトにご注意ください!★★ 最近、拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史』をPDF化して、無料でダウンロードできるかのように装い、クレジットカード情報を盗み取ろうとする違法サイトの存在が確認されました。 この種のサイトは多種多様な出版物を無許可で取り扱っているものと思われます。 内藤および拙著の出版元・販売元ではこのような行為は一切認めておらず、フィッシング詐欺等に巻き込まれる可能性もありますので十分ご注意ください。 |
2020-08-31 Mon 01:13
ご報告が遅くなりましたが、公益財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第54巻第4号ができあがりました。というわけで、僕の連載「泰国郵便学」の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、タイのパッタヤー孤児院支援のため、デンマークでの国際児童年の記念切手発行に合わせて制作された記念カバーです。 すなわち、1979年5月20日、デンマークでは国際児童年の記念切手が発行されましたが、これに合わせて、ロンド(ユトランド半島東岸に位置するデンマーク第2の都市、オースフ近郊)のロータリークラブとライオンズクラブは、前日の19日、国際児童年のロゴとパッタヤー孤児院の文言が入った封筒をパッタヤーからエアメールでデンマーク宛に送り、そのカバーがオースフ空港経由でロンドに到着すると、翌日、デンマークで発行されたばかりの記念切手を貼り足して、今回ご紹介のFDCを作成。これを収集家等に販売し、その収益をパッタヤー孤児院に寄付しています。 さて、1970年代初頭、ヴェトナム戦争に従軍するためタイに駐留した米軍の軍人とタイ人女性の間に生まれた“アメラジアン”の混血児はタイで深刻な社会問題となっていました。 1972年、カトリックのレデンプトール修道会(1732年、イタリアで創設。日本名は至聖贖罪主修道会)のレイモンド・ブレナン神父はパッタヤー(パタヤ)の聖ニコラウス教会で短期の補助業務を行っていましたが、ある朝、教会の入口に新生児が置き去りにされているのを発見。育児の経験が全くなかった神父ですが、授乳の仕方やおむつの替え方などを周囲の人々に手当たり次第に尋ね、なんとか子供を育てようと奮闘します。そして、このことが噂として広まると、サッタヒープ基地の米兵を父親とする多数の孤児たちが教会に連れてこられるようになりました。 サッタヒープ基地内でも、米兵とタイ人女性との間に生まれた私生児の問題には頭を悩ませていたため、レイモンド神父は米軍の従軍牧師ととともに、チャンタブリー教区のティエンチャイ・サマンチット司教に相談します。 チャンタブリー教区は、チャンタブリー県、チョンブリー県、プラーチーンブリー県、ラヨーン県、サケーオ県、トラート県、チャチューンサオ県(バーンパコン川東側)、ナコーンナーヨック県(バーンナー郡を除く)の3万4000平方キロ、信徒数4万弱を管轄するカトリック司教区で、司教座聖堂のチャンタブリー処女降誕聖堂はタイ国内で最も大きい聖堂として知られています。最初の聖堂は1711年に建立されましたが、19世紀、ヴェトナム系キリスト教徒が宗教弾圧を逃れて移民してきたことを受けて拡張され、1909年、現在のゴシック様式の聖堂が建設されました。 レイモンド神父の相談を受けたティエンチャイ司教は、ちょうど、米軍の退役軍人が資金を拠出してパッタヤーに孤児院を建設し、チャンタブリー教区に寄贈する計画があることを告げ、神父がその責任者を引き受けることになります。なお、当初、タイ国内にはアメラジアンの孤児を対象とした孤児院を作れば、かえってそうした孤児が増えるのではないかとの反論もあったそうです。 1974年に開設された孤児院は、聖堂が所有する3万756平米の土地のうち、8093平米を用地とし、シャルトル聖パウロ修道女会(イタリアを拠点とするカトリックの女子修道会で、日本では白百合学園の設立母体として知られる)の修道女が孤児の世話をするという体制でスタートしました。 当初、孤児院は無認可の施設として国や自治体などからの支援はありませんでしたが、1978年10月24日、チョンブリー県知事の認可が下り、福祉施設としての社会的地位を確立します。 また、1979年3月以降は、LHC(Lovers of the Holy Cross。本来のフランス語名はAmantes de la Croix de Jésus-Christ)女子修道会の修道女がヴェトナムからやってきて孤児たちの世話をするようになりました。 LHC女子修道会は、1670年、パリ外国宣教会の宣教師、ピエール・ランベール・ド・ラ・モットによって、ヴェトナムのトンキンとコーチシナで創設されました。 ヴェトナムではフランス植民地時代にカトリックが普及し、ヴェトナム戦争が終結した1975年の時点で、北部には約100万人、南部には約190万人のカトリック信徒がいたと推定されています。 旧サイゴン政権は、カトリックを“反共の砦”として優遇していたため、統一後の社会主義政権は、1976年12月のヴェトナム労働党第4回全国大会(同大会で現在のヴァとナム共産党に改称)では、「宗教を利用するすべての帝国主義的陰謀に断固として反対」し、「宗教の背後に隠れる帝国主義者や反動主義者のすべての歪んだ宣伝を粉砕する」として、宗教(特にカトリック)への警戒心をあらわにしていました。 じっさい、社会主義政権は国民の個人としての信仰の自由は(それが“反体制”につながらない限りという前提で)一応是認したものの、1975年にはサイゴンのカトリック大司教は教会の学校を国家に引き渡し、教会経営の病院、孤児院も接収され、1976年8月頃までにカトリック教会の活動の自由は制限され、外国人宣教師も追放されています。LHCも例外ではなく、ヴェトナム政府からさまざまな圧迫を受けつつも。現在に至るまで、ヴェトナム国内の他、米国、タイ、ラオスで活動を継続していました。 パッタヤー孤児院でのLHC女子修道会の修道女が働くようになったのも、社会主義政権下で抑圧されている彼女たちへの救済措置という面もありました。 こうしたこともあって、クリスチャンの多い欧米ではパッタヤー孤児院の活動への関心も高く、さまざまな支援が行われました。今回ご紹介のカバーもその一例だったというわけです。 * 昨日(30日)の拉致被害者全員奪還ツイキャスの内藤の出演回は無事終了しました。ご参加いただきました皆様ならびにスタッフの方々にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。 ★★ Web講座のご案内 ★★ 武蔵野大学の生涯学習講座で、「切手と仏像」と題して4回に分けてお話しします。配信期間は8月26日から10月6日まで。お申し込みなどの詳細はこちらをご覧ください。皆様、よろしくお願いします。 ★ 内藤陽介の最新刊 『みんな大好き陰謀論』 ★ 本体1500円+税 出版社からのコメント 【騙されやすい人のためのリテラシー入門】 あなたは大丈夫?賢い人ほどダマされる! 無自覚で拡散される負の連鎖を断ち切ろう まずは定番、ユダヤの陰謀論を叱る! ! 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
2016-12-19 Mon 09:15
大手製菓メーカー(株)ロッテの季刊広報誌『Shall we Lotte(シャル ウィ ロッテ)』の第34号(2016年冬号)ができあがりました。僕の連載「小さな世界のお菓子たち」では、今回は、こんな切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2015年にデンマークが発行したクリスマス切手のシートで、クリスマス向けにアイシングされたブルーンケーア3種が取り上げられています。主役のクッキーに加えて、上下に書かれた北欧雑貨風の文字が、何とも言えない味わいを醸し出しています。 欧米のキリスト教文化圏でクリスマスの風物詩となっているジンジャー・クッキーは、14世紀頃、現在のベルギーとドイツの国境付近で作られるようになったレープクーヘンがルーツと考えられていますが、レープクーヘンはヨーロッパ全体へ広まっていく過程で、地域ごとにさまざまなヴァリエーションが生じました。 その中でも、デンマークのブルーンケーアは、必ずしもショウガを使わず、他の欧米諸国にはない、独特の材料が使われているのが特徴です。 まず、一般的なジンジャー・クッキーでは通常の砂糖が使われていますが、ブルーンケーアでは、砂糖の代わりにブルーン・ファリンを使います。ブルーン・ファリンは、粗糖と呼ばれる茶色い砂糖にシロップを混ぜた甘味料で、デンマークではクッキーやケーキだけでなく、肉料理や魚料理にも使われています。 このブルーン・ファリンとバター、さらにシロップを加えて温めたものに、クローブ、オールスパイス、シナモンの3種のスパイス、小麦粉と“ポタスケ”の溶液、アーモンドとオレンジの皮を加えてザックリと混ぜて生地を作ります。この生地を棒状にまとめてしばらく寝かせた後で、薄くスライスし、オーブンで5-6分焼くというのが、ブルーンケーアの基本的なレシピです。 ポタスケというのは食用に加工した炭酸カリウムの粉末です。日本では、炭酸カリウムは中華麺のかん水として使われるのが一般的です。ブルーンケーアでは、これを重曹やベーキングパウダーの代わりに使うことで、一般的なクッキーに比べてかなりの薄焼きであるにも関わらず、焼き上がりがパリパリとしすぎず、クリスピーでありながら、しっとりとした食感を保つことができるのです。 今回ご紹介の切手では、クリスマス向けにアイシングされた男の子と女の子、そしてハート形のブルーンケーアを取り上げた3種セットで発行されました。なお、切手に記されている“BAGVÆRK”は、直訳すると“ペストリー”の意味です。 3種の切手を収めたシートには4隅に割られたブルーンケーアが描かれています。シートの下部にある“HYGGESTUNDER”の語はデンマーク語で“居心地の良い時間”の意味ですが、クリスマス・ツリーを見ながら、ブルーンケーアを一口サイズに割って口に運ぶ瞬間の気持ちを言い表す表現としてピッタリといえましょう。 ★★★ ブラジル大使館推薦! 内藤陽介の『リオデジャネイロ歴史紀行』 ★★★ 2700円+税 【出版元より】 オリンピック開催地の意外な深さをじっくり紹介 リオデジャネイロの複雑な歴史や街並みを、切手や葉書、写真等でわかりやすく解説。 美しい景色とウンチク満載の異色の歴史紀行! 発売元の特設サイトはこちらです。 * 8月6日付『東京新聞』「この人」欄で、内藤が『リオデジャネイロ歴史紀行』の著者として取り上げられました! ★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2016-08-19 Fri 09:37
リオデジャネイロ五輪14日目(現地時間18日)は、バドミントン女子ダブルスの高橋礼華・松友美佐紀ペア、女子レスリング・フリースタイル女子63kg級の川井梨紗子が金、レスリング・フリースタイル女子53kg級の吉田沙保里が銀のメダルを獲得しました。女子レスリングについては、きのうの記事でも取り上げましたので、 きょうはバドミントン切手の中から1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1983年のバドミントン世界選手権に際して、開催国のデンマークが発行した記念切手で、デンマークを代表するバドミントン選手だったリーネ・コペンが取り上げられています。今回のバドミントン女子ダブルスの決勝は、日本とデンマークとの対戦でしたので、デンマーク切手の中からバドミントンの女子選手を描いたものということで取り上げてみました。 現在のバドミントン競技は、英国の伝統的な羽根つき遊びである“バトルドー・アンド・シャトルコック”が、19世紀中頃、ボーフォート公爵家の邸宅、バドミントン・ハウスでの試合を通じてルールなどが整備されて生まれたもので、1893年に英国で協会が設立され、1899年には当時の事実上の世界選手権として全英オープンが始まりました。 わが国のバドミントンは、1921年、横浜Y.M.C.A.の広田兼敏がバドミントンの道具の寄贈を受けて、横浜の欧米人が運営するスポーツクラブを訪ねて、手ほどきを受けたのが始まりとされています。終戦直後の1946年には日本バドミントン協会が創立され、国民体育大会では、1949年の第4回大会から正式競技となりました。また、1966年には日本の女子チームが国別世界選手権で初出場・初優勝を飾り、その後の発展の基礎を築いたとされています。 一方、今回ご紹介の切手を発行したデンマークでは、英国に次いで、古くからバドミントンの愛好家が多く、1935年からは、デンマークバドミントン協会の主催による国際大会として“デンマーク・オープン”が原則毎年開催されています。 オリンピックに関しては、1972年のミュンヘン大会と1988年のソウル大会で公開競技として採用され、1992年のバルセロナ大会から正式競技となりましたが、この間、1977年には世界選手権がスタートしました。バドミントンの世界選手権は、1977年に第1回大会がスウェーデンのマルメで、1980年の第2回大会がインドネシアのジャカルタで、1983年の第3回大会がコペンハーゲンで開催された後、2005年までは奇数年の開催、2006年以降はオリンピック開催年を除く毎年の開催です。 切手に取り上げられたコペンは、1953年生まれ。1977年の第1回世界選手権で混合ダブルスと女子シングルスの金メダル、1979-80年の全英選手権で女子シングルスの連覇、1980年の第2回世界選手権で混合ダブルスと女子シングルスの銅メダルを獲得した名選手で、1982年に欧州チャンピオン(1978年に次いで2度目)となった後、現役チャンピオンのまま引退しました。 * 昨晩、アクセスカウンターが169万PVを超えました。いつも閲覧していただいている皆様には、あらためてお礼申し上げます。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 『リオデジャネイロ歴史紀行』 好評発売中!★★★ 2700円+税 【出版元より】 オリンピック開催地の意外な深さをじっくり紹介 リオデジャネイロの複雑な歴史や街並みを、切手や葉書、写真等でわかりやすく解説。 美しい景色とウンチク満載の異色の歴史紀行! 発売元の特設サイトはこちらです。 * 8月6日付『東京新聞』「この人」欄で、内藤が『リオデジャネイロ歴史紀行』の著者として取り上げられました! ★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2015-01-31 Sat 23:41
デンマーク政府は、このう(30日)、国債の発行を当面凍結すると発表しました。投資家による国債購入を通じた外貨流入=自国通貨クローネの高騰阻止が目的です。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1922年にデンマークが発行した1クローネ切手です。 デンマークの通貨クローネは“王冠”の意味で、同種の通貨はノルウェーやドイツ諸侯国でも使用されていました。 すなわち、1873年5月5日、スウェーデンとデンマークはスカンディナヴィア通貨同盟を締結。これに、スウェーデンとの同君連合を形成していたノルウェーが1875年に参加します。通貨同盟は、2.48クローネ(クローナ)/金1グラム、あるいは金0.403グラム/クローネの固定相場による金本位制で、3国の通貨単位は1クローネ(クローナ) = 1/2デンマークリクスダラー 1/4ノルウェーターラー = 1スウェーデンリクスダラーと等価とされていました。 各国は、このレートに従って独自通貨を発行。1905年にノルウェーがスウェーデンとの同君連合を解消して独立した後も、通貨同盟じたいは存続しましたが、第一次世界大戦勃発直後の1914年8月2日、スウェーデンが金本位制から離脱して変動相場制に移行したことで通貨同盟は崩壊。ただし、その後も、各国は通貨名を変更せずにそのまま独自通貨を発行し続けました。これが、現在のデンマーク・クローネの直接のルーツです。なお、今回ご紹介の切手は、1クローネ額面の切手としては、このデンマーク・クローネの導入後に発行された最初の切手となります。 さて、デンマークでは、過去、2000年、2004年、2008年にユーロ導入の是非をめぐる国民投票が行われましたが、いずれも、反対派が過半数を占めて導入は否決され、現在でも独自通貨のクローネが維持されています。 このため、今月22日、欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和の導入を決定したことでユーロ安が進むと、相対的に有利な運用先を目指す投資家らが資金をクローネに振り向ける動きが活発化。このため、デンマーク政府としては、自国通貨の安定のため、今回の措置に踏み切ったというわけです。 ★★★ イベント「みんなで絵手紙」(2月8日)のご案内 ★★★ 2月8日(日) 10:00-17:00に東京・狛江のエコルマホールにて開催のイベント「みんなで絵手紙 見て、知って、書いて、楽しもう」のトークイベントに内藤陽介が登場します。内藤の出番は13:30-14:15。「切手と絵・手紙」と題してお話しする予定です。是非、遊びに来てください。主宰者サイトはこちら。画像をクリックしていただくと、チラシの拡大画像がごらんになれます。 ★★★ 講座「切手と郵便物に刻まれた“終戦”」(2月20日)のご案内 ★★★ 2月20日13:00~14:30、愛知県名古屋市の栄中日文化センターで、「切手と郵便物に刻まれた“終戦”」と題する講座を行います。 2015年は第二次世界大戦の終戦から70周年にあたります。終戦の年の1945年はあらゆる意味で社会が激変した年ですが、その影響は切手や郵便物にもさまざまな痕跡を残しています。今回の講座では、当時の切手や郵便物を読み解いていくことで、一般の歴史書では見落とされがちな終戦の諸相を、具体的なモノの手触りとともに明らかにしてみたいと思っています。 詳細は、こちらをご覧ください。(画像は、日本の降伏文書調印が行われた米軍艦ミズーリ号から降伏文書調印日に差し出された郵便物の一部分です) ★★★ よみうりカルチャー荻窪の講座のご案内 ★★★ 毎月1回(原則第1火曜日:2月3日、3月3日、3月31日)、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で下記の一般向けの教養講座を担当します。 ・イスラム世界を知る 時間は15:30-17:00です。 次回開催は2月3日で、途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 『朝鮮戦争』好評発売中! ★★★ 本体2000円+税 【出版元より】 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る! 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各電子書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 *8月24日付『讀賣新聞』、韓国メディア『週刊京郷』8月26日号、8月31日付『夕刊フジ』、『郵趣』10月号、『サンデー毎日』10月5日号で拙著『朝鮮戦争』が紹介されました! ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2014-08-22 Fri 12:49
1864年8月22日、戦時国際法としての傷病者及び捕虜の待遇改善のための国際条約として、ジュネーヴ条約が締結され、国際赤十字社が発足してから、今日(22日)でちょうど150年です。というわけで、今日は赤十字関連のマテリアルの中から、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、朝鮮戦争に際してデンマークが派遣した病院船“ジョットランディア”を描くデンマークの寄附金つき切手とその初日印で、切手には赤十字のマークがしっかり入っています。 19世紀初頭のナポレオン戦争以来、デンマークは、近隣の列強諸国を刺激せず、中立を維持することを安全保障政策の基本としていました。しかし、第二次大戦中、ナチス・ドイツに国土を蹂躙・占領された経験から、小国として単独で中立を維持することは不可能であると悟り、1949年には北大西洋条約機構(NATO)に加盟しました。 しかし、その後も、外交・安全保障政策の基本としてあくまでも中立を志向していたため、朝鮮戦争に関しては、国連軍の活動を支援するものの、共産側を過度に刺激しないようにとの配慮から、病院船の派遣と医療支援を行うという結論に到達します。 こうして、1951年1月23日、デンマーク国旗と赤十字旗、国連旗を掲げた病院船“ジョットランディア”が朝鮮に到着ジョットランディアには4つの手術室と365床のベッド、X線設備などを備えており、4000人余りの志願者から選ばれた42人の医療スタッフが乗船し、仁川や釜山などを移動して医療活動を行いました。 今回ご紹介の切手は、1951年9月、ジョットランディアがあくまでも非武装の病院船であることを示すとともに、その活動資金を集めるために寄附金つきで発行した切手で、赤十字マークと航行する船の姿が描かれています。 なお、朝鮮戦争にはさまざまな国がいろいろな形でかかわっていますが、ともすると、韓国・北朝鮮・米国・中国以外の国々については、ともすると忘れられがちです。拙著『朝鮮戦争』では、今回ご紹介のデンマークをはじめ、朝鮮戦争中の上記4カ国以外の活動についてもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 *韓国メディア『週刊京郷』8月26日号で拙著『朝鮮戦争』が紹介されました!(画像は著者インタビューの写真です) 記事はこちらです。韓国語ですが、よろしかったら、ぜひご覧ください。 ★★★ 講演会のご案内 ★★★ ~韓国文化院 講演会シリーズ2014 『韓日交流史』~ 第9回は内藤陽介「韓国の切手でひも解く韓国近現代史」 です! ◇日時:2014年9月5日(金) 開場 18:30 開演 19:00 ◇会場:韓国文化院 ハンマダンホール ◇募集人員:300名様(お申し込みはお一人様2名まで) ◇入場無料(事前のお申込みが必要です) ◇主催・お問い合わせ先:駐日韓国大使館韓国文化院 03-3357-5970 ■ 韓国文化院のホームページ・トップの 「イベント応募コーナー」欄(こちらをクリックしてください)からお申し込みいただけます。たくさんの皆様のお申し込みを心よりお待ち申しております。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 『朝鮮戦争』好評発売中! ★★★ お待たせしました。約1年ぶりの新作です! 本体2000円+税 【出版元より】 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る! 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各電子書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-08-23 Fri 15:59
1913年8月23日にデンマーク・コペンハーゲンで人魚姫の像が公開されてから、きょうでちょうど100年です。というわけで、きょうはストレートにこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1989年にデンマークが発行した観光宣伝の切手で、コペンハーゲンの人魚姫の像が取り上げられています。 コペンハーゲンの人魚姫の像は、彫刻家エドヴァルド・エリクセンが、アンデルセンの童話『人魚姫』のバレエの主役を演じていたエレン・プリースの頭部と、妻エリーネの肢体をモデルに制作したもので、1913年8月23日に公開されました。ただし、エリクセンの像は、腰から下が魚になっているわけではなく、足首あたりからヒレになっています。 ちなみに、スカンジナビア政府観光局は、人魚姫の像100周年の記念日にあたるきょう、世界12カ国14都市で一斉に、モデルが扮する“コスプレ人魚姫”撮影会イベントを同時開催しましたが、その報道写真(下の画像です)をみると、モデルの女性は一般にイメージされる人魚の姿というより、銅像をリアルに再現して脚がしっかりわかるスタイルで、身体の色も銅像っぽくペイントされています。 人魚姫の像は高さ1メートル25センチと小ぶりなうえ、港湾地域にあり周辺の景色も風光明媚とは言い難いため、実際に訪れた日本人観光客の中には「期待外れ」と感じる人も少なくないようで、シンガポールのマーライオン、ブリュッセルの小便小僧と並んで、“世界三大がっかり”の一つに数えられることもあります。切手で見る限りは良い感じなんですけどねぇ…。 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★ 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より) 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。 * 出版元特設ページはこちらをご覧ください。 ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。次回開催は9月3日(原則第1火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2011-09-17 Sat 16:50
おととい(15日)行われたデンマークの総選挙で、最大野党・社会民主党のヘレ・トニングスミット党首率いる中道左派連合が勝利。これにより、昨日(16日)、ラスムセン内閣が総辞職し、トニングスミットがデンマーク初の女性首相となる見通しです。というわけで、デンマークの女性といえば、やはりこの切手でしょうか(画像はクリックで拡大されます)
これは、1935年デンマークが発行した“アンデルセン童話集100年”の記念切手のうち、人魚姫を取り上げた10オーレ切手です。 アンデルセンは1835年にデビュー作の『即興詩人』を発表し、ついで、同年、『童話集』を発表しましたが、『人魚姫』はこの『童話集』には収録されておらず、翌1836年に発表されました。ちなみに、1935年に発行された“アンデルセン童話集100年”には、このほかに『みにくいアヒルの子』も取り上げられていますが、こちらも1843年に発表された作品ですから、『童話集』には収録されていません。まぁ、どちらもアンデルセンの代表作であることには変わりないのですが、どうせなら、1835年の『童話集』の中から題材を選べばよかったのに…と思ってしま宇野は、僕だけではないでしょう。 ちなみに、コペンハーゲンの有名な人魚姫の像は、彫刻家エドヴァルド・エリクセンが、バレエの主役を演じていたエレン・プリースの頭部と、妻エリーネの肢体をモデルに制作したもので、1913年8月23日に公開されています。ただし、エリクセンの像は、腰から下が魚になっているわけではなく、足首あたりからヒレになっています。その意味では、切手の方が“人魚姫”のデザインとしては原作に忠実だといえそうです。 コペンハーゲンの人魚姫の像といえば、これまでにも何度も破壊され、その度に修復されていることでも有名です。デンマークの新首相も、不死身の銅像のように困難を乗り越えて政権を維持していけるか、それとも、原作の人魚姫同様、思いを遂げずに泡と消えていくのか、まさにこれからが正念場というところでしょうな。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 5月29日付『讀賣新聞』に書評掲載 『週刊文春』 6月30日号「文春図書館」で 酒井順子さんにご紹介いただきました ! 切手百撰 昭和戦後 平凡社(本体2000円+税) 視て読んで楽しむ切手図鑑! “あの頃の切手少年たち”には懐かしの、 平成生まれの若者には昭和レトロがカッコいい、 そんな切手100点のモノ語りを関連写真などとともに、オールカラーでご紹介 全国書店・インターネット書店(amazon、boox store、coneco.net、JBOOK、livedoor BOOKS、Yahoo!ブックス、エキサイトブックス、丸善&ジュンク堂、楽天など)で好評発売中! |
2011-05-20 Fri 09:42
きのう(19日)、カンヌ国際映画祭は、アドルフ・ヒトラーに共鳴する発言をしたとして、コンペティション部門に「メランコリア」を出品していたデンマークのラース・フォン・トリアー監督を“好ましからざる人物”として映画祭から追放すると発表しました。というわけで、きょうはこの“切手”です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1944年に発行された、デンマーク義勇軍の義損証紙で、ユトレヒト半島南東部コリング城(ルネサンス時代のデンマーク王室の居城)が描かれています。 第二次大戦中、デンマークはナチス・ドイツによって軍事占領されましたが、デンマーク人は“ゲルマン民族”とされたため、その占領政策は当初は比較的穏健で、国王クリスチャン10世とデンマーク政府は国外に亡命せず、コペンハーゲンにとどまっていました。 こうした中で、1941年6月22日、独ソ戦が勃発すると、ドイツは占領下および同盟中のヨーロッパ諸国に対し、共産主義と戦う義勇兵部隊の創設を許可。これに応じて、デンマークでは“デンマーク義勇軍(Freikorps Danmark”が結成されます。 デンマーク義勇軍は、各国の反共義勇軍とともに、1943年にSS装甲師団「ノルトラント」の装甲擲弾兵連隊「ダンマルク」となり、クロアチアやナルヴァ(エストニア)の戦い、オーデル川の攻防戦、ベルリン市街戦などでソ連軍と戦いました。 義勇軍の発足に先立ち、1941年5月22日、デンマーク郵政は義勇軍ならびにドイツ軍の将兵を対象に、デンマーク国内宛の“軍事郵便”制度を発足させます。この制度では、250グラムまでの郵便物は料金が無料でしたが、250グラムから1キロまでの小包に関しては、デンマーク在住のドイツ人は20ペニヒ、デンマーク人は25オーレの料金を受け取り時に支払うこととされました。また、デンマーク人がドイツ軍の将兵に郵便を送る場合の料金は、当初、葉書が15オーレ、250グラムまでの封書が20オーレでしたが、1942年以降、封書基本料金は50グラムまでが20オーレとなり、50グラムから1キロまでの書状ないしは小包は30オーレとなりました。なお、これらの郵便物は、すべて、ドイツの占領当局によって検閲されています。 こうした“軍事郵便”制度とあわせて、1944年、デンマーク義勇軍への義援金を募るために発行されたのが、今回ご紹介の義損証紙です。義損証紙は、今回ご紹介のモノのほか、ロスキレ大聖堂を描いた25オーレ、クロンベルク城を描いた1クローネの計3種があります。いずれも、郵便料金に相当する額面はゼロですが、郵便物に貼付することで、寄付金相当額が義援金になるという仕組みです。 ちなみに、今回問題になったトリアー監督の発言は「彼(ヒトラー)はいわゆるまともなやつではないが、私は彼の多くを理解する。少し、彼に共鳴するところもある」、「オーケー、おれはナチだ」などというものだそうです。この前半部分ですでに怒り心頭という人もいるのでしょうが(ちなみに、僕はナチス・ドイツによる“侵略戦争”やユダヤ人迫害等を支持するつもりはありませんが、ナチス時代のドイツのすべてが悪だったという論調に与するつもりもありません)、現在なお自分がナチであるとした後半部分になると、欧米の言論空間では、まぁ弁護の余地はないということになるでしょうな。 もっとも、監督の発言は、失言というよりも、ある種の確信犯的なものでしょうから、いっそ、今回の騒動を逆手にとって、次回作では“デンマーク義勇軍”をテーマとした作品をるくらいのことをやってほしいものです。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 切手百撰 昭和戦後 平凡社(本体2000円+税) 視て読んで楽しむ切手図鑑! “あの頃の切手少年たち”には懐かしの、 平成生まれの若者には昭和レトロがカッコいい、 そんな切手100点のモノ語りを関連写真などとともに、オールカラーでご紹介 全国書店・インターネット書店(amazon、boox store、coneco.net、JBOOK、livedoor BOOKS、Yahoo!ブックス、エキサイトブックス、丸善&ジュンク堂、楽天など)で好評発売中! |
2010-05-29 Sat 17:24
ご報告が遅くなりましたが、東京郵便切手類取引所(TOPHEX)による『スター☆オークション』(6月5日実施)のカタログ第10号ができあがりました。僕が担当しているオマケの読み物は、ジョルジュ・バルトーリの郵趣コラム集 Avec ou sans dents (邦題『目打があってもなくても』)に所収のコラムをご紹介する第2回目。今回は、下の切手にまつわるエピソードが取り上げらました。(画像はクリックで拡大されます)
1975年までは、フェロー諸島に関する収集家の関心は、この地域で使うためにデンマーク切手に加刷した高価な切手と、1940年に対独戦の戦略上の要衝としてイギリスが占領した際に発行した5種類の加刷切手にしか向いていませんでした。 スコットランドの北方350キロ、ノルウェーとアイスランドの間にあるフェロー諸島はデンマーク領ですが、比較的自治が認められています。つまり、彼らは独自の通貨を持ち、独自の国旗を掲げ、サッカーのヨーロッパ杯に代表チームを送り、独自の切手を発行しています。 さて、1980年のヨーロッパ切手のテーマは独創性に富んだ偉人と決まり、各国はそうした偉人の切手を発行しました。たとえば、フランスはアリスティド・ブリアンとヨーロッパの守護聖人・聖ベネディクトゥスを取り上げました。モナコは、作家コレットと戯曲家のマルセル・パニョールを取り上げ、西ドイツはキリスト教神学者のアルベルトゥス・マグヌスと哲学者のライプニッツを取り上げました。ベルギーも聖ベネディクトゥスとオーストリア女公マルガレーテを無名の画家の絵画を取り上げるという間接的な方法で取り上げました。スイスは政治家J.H.カーンと発明家ホスラーを、イタリアはマゼランの世界一周に同行したピガフェッタと地理学者のA.ロ・スルドを取り上げ、イギリスは文学者のシャルロッテ・ブロンテとジョージ・エリオットを取り上げました。いずれの国も、この機会を利用して、多くの偉人の中から二人を選んでいます。 ところが、フェロー諸島は人口が非常に少ないので、人物の選定には大いに苦労し、最終的に、フィル・ヤコブ・ヤコブセン(1864-1918)とヴェンゼル・ウルリッヒ・ハンメルスハイムブ(1819-1909)の2人を切手に取り上げることにしました。いずれも、言語学者にして民間伝承の記録に努めた人物ですが、ヨーロッパ切手の題材として取り上げられるにはほとんど無名の存在でした。 フェロー諸島の政府は2人の偉人の肖像切手の製造を発注し、発行予定日のかなり前に現物を受け取りました。ところが、黒色で刷られた切手は部内の評判が悪く、廃棄処分とすることとなり、すぐに、切手の作り直しが命じられます。こうして、青緑と赤茶色の単色の切手2種が製造された。この新たな2種は適切なものとされ、実際に発行されています。(画像は、その実際に発行された切手2種です) さて、廃棄処分が決まった切手に対する炎による“ホロコースト”は、首都トースハウンの公共のゴミ処理施設で、当局者立ち会いの下に行われました。 しかし、当局者による廃棄処分の途中で、フェロー諸島の住民が誰も知らないうちに、滝のような雷雨に見舞われて作業が中断されたものの、関係者はそれぞれ、自分の義務を果たしたと自覚したと推測することは可能かもしれません。あいにく、いや、収集家の視点からいえば幸運にもというべきかもしれませんが、雷雨(もし、本当に雷雨があったとすれば、ですが)は炎を消し、薪の山の上で火葬されるのを待っていた切手のいくつかを救い出したのです。 たしかに、消却を免れた切手の状態は決して良くないが、一躍、珍品切手の仲間入りを果たし、そうした欠点は許容しうるものとみなされるようになりました。焼け焦げの跡とか、目打欠け、褪色などにもかかわらず、件の切手は、現在、1枚1500ユーロの値がついているのですから。 しかし、廃棄されたはずの切手が再び郵趣界に姿をあらわすようになるまでの過程は、語るべき価値があります。それは、まるでおとぎ話のような実話なのです。 いたずら小僧のグループは遊び場としてゴミ捨て場を選び、いつも宝探しをしていました。ある5月の土曜日のことだった。1人の子供が、問題の切手の半ば焼け焦げた紙片数点を手にします。その子の貯金箱は絶望的なまでに空っぽで、彼を助けてくれそうな父親は何日も漁に出たまま帰ってきませんでしたから、母の日の夕食時に、彼はごくごくささやかなプレゼントさえも母親にあげられないというみじめな思いをするところでした。 「やった。ママのプレゼントを見つけたぞ!」彼は、何枚かの切手の汚れをどうにかこうにか落とし、小さなストックブックに入れ、翌日、暗唱したお祝いの言葉とともに母親に渡した。母親は、息子が自分の趣味に合ったプレゼントを選んでくれたことにとても喜び、感動は涙を流しました。 その場では、彼女は息子のプレゼントと、彼女が郵便局で買ったばかりの切手との違いがわかりませんでした。その晩、もらった切手を整理しながら、彼女は仰天。なるほど、図案は同じだが色が違うのです。2枚の切手はただちに、彼女の収集家としての本能を呼び覚ましました。 「これ、どこで買ったの?」彼女はあせらずに息子に訊きます。息子はすぐに白状しました。叱られると思っていたのに(母親へのプレゼントをゴミ捨て場から拾ってくるなんて!)、母親は有頂天になって抱きしめ、ランプを手に取り、彼を連れて、お宝が眠るゴミ捨て場へと走っていきました。 ゴミの山を掘り返してみると、最終的に、今日認定されている、フェロー諸島の不発行御ヨーロッパ切手が出てきました。その後、この幸運な母子の物語は、フェロー諸島の人々の間で語り継がれていくことになるのです。 ★★★ 欧米人も実は捕鯨が大好き ★★★ 鯨を追い、七つの海へと旅立った男たちの歴史と文化 キュリオマガジン6月号・巻頭特集 捕鯨浪漫主義 捕鯨は日本だけの特殊な文化・伝統なのか。否、そんなことは断じてない。むしろ、歴史的に見れば、欧米社会こそ、捕鯨を題材とした文学・演劇・音楽・絵画などさまざまな文化を残してきたではないか。 陸の西部劇と海の捕鯨は、カッコいい荒くれ男たちの物語の双璧である。知力・体力の限りを尽くし、命の危険を顧みずに大自然の中で奮闘する男たちの姿を見て、単純素朴に美しいと感じる人も多いはずだ。 そんな捕鯨のカッコよさを物語る欧米のコレクターズ・アイテム満載の『キュリオマガジン』2010年6月号、好評発売中!(なお、同誌についてのお問い合わせや入手方法などにつきましては、出版元のHPをご覧いただけると幸いです) ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 総項目数552 総ページ数2256 戦後記念切手の“読む事典”(全7巻) ついに完結! 『昭和終焉の時代』 日本郵趣出版 2700円(税込) 2001年のシリーズ第1巻『濫造濫発の時代』から9年。<解説・戦後記念切手>の最終巻となる第7巻は、1985年の「放送大学開学」から1988年の「世界人権宣言40周年」まで、NTT発足や国鉄の分割民営化、青函トンネルならびに瀬戸大橋の開通など、昭和末期の重大な出来事にまつわる記念切手を含め、昭和最後の4年間の全記念・特殊切手を詳細に解説。さらに、巻末には、シリーズ全7巻で掲載の全記念特殊切手の発行データも採録。 全国書店・インターネット書店(amazon、bk1、JBOOK、livedoor BOOKS、7&Y、紀伊国屋書店BookWeb、ゲオEショップ、楽天ブックスなど)で好評発売中! |
2008-12-13 Sat 11:28
経営難に陥っていたアメリカの自動車大手3社(いわゆるビッグ3)救済のための法案は、上院で民主・共和両党の調整がつかず、審議が終了。アメリカ議会が年内に救済法案を可決することは絶望的となりました。これに対して、アメリカ政府は、最大7000億ドルの公的資金を政府が活用できる緊急経済安定化法の適用を含む支援を行う考えを表明したことで、とりあえず、当面の危機は回避されたとみられていますが、危機的な状況はしばらく続きそうです。
というわけで、今日はビッグ3がらみのネタの中から、こんなモノをもってきました。(画像はクリックで拡大されます) これは、デンマーク1933年シリーズの10オーレ切手の切手帳ペーンで、ビッグ3の筆頭、GM(ゼネラル・モーターズ)インターナショナルの広告がタブに入っています。 GMは、1908年9月16日にウイリアム・C・デュラントがミシガン州フリントで組織した持株会社がそのルーツです。デュラントは、ビュイック・モーターの社長として同社を全米有数のメーカーに育て上げた人物で、GMの創設後、キャディラック、エルモア、オークランド(後のポンティアック)などを次々に買収して事業を拡大。1920年にはフォードを抜いて世界最大のメーカーとなりました。 初期のフォードが1つの車種を世界中で生産して大量生産によるコスト削減を実現したのに対して、GMは「どんな予算でも、どんな目的でも」をスローガンとして掲げて複数のブランドを展開。世界各地のニーズに合わせて、多種多様な車種を供給することで事業を拡大しています。このため、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど世界中に生産拠点が設けられました。今回ご紹介の切手帳が発行されたデンマークでは、1923年からGMインターナショナルの名で事業が展開されています。 現在のGMの苦境は、2000年頃からの世界的なエコ意識の高まりの中で、消費者が燃費の良いサブコンパクトカーやハイブリッドカーにシフトしていたにもかかわらず、小型車部門の整理・縮小を行ったことや、2001年の同時多発テロ事件後に販売量が落ち込んだ際も生産量を落とさなかったため在庫が増加したことなどに端を発しているとされています。また、在庫を処理するために販売店へのインセンティブの引き上げや値引き販売を激化させたことが傷口を広げたほか、過去の従業員の退職年金や医療費負担なども財務を圧迫し続けていました。そうしたところへ、ガソリン価格の高騰、サブプライムローン問題、さらにはリーマン・ショックが追い打ちとなり、売上が大きく落ち込み、2007年度決算で3兆円という途方もない額の赤字になったというわけです。 ところで、ここまで事態が悪化した背景には、GMの社風も大きく影響しているように思われます。 すなわち、GM北米乗用車・トラック部門担当副社長だったジョン・Z・デロリアンによれば、GMの経営陣には、外部や内部からの忠告・提言をたとえどんなものであっても拒絶する風潮が強いと述べています。また、ピーター・ドラッカーが、1946年に発表した『会社という概念』(この本は決してGM批判の書ではなく、どちらかというと、GMに対して好意的な内容とされています)の中で「(GMは)戦後期には組織・事業・目標を見直す必要がある」と書いただけで、GMの幹部が激怒したというエピソードもあります。その背後には、「GMは世界一なのだから、批判はもってのほか」という思い込みがあったとのことですが、彼らはそのツケをいま払わされているということなんでしょうか。 なお、ビッグ3の残りの2社のうち、フォードに関しては以前の記事でも取り上げたことがあります。次にビッグ3のことを取り上げるときには、クライスラーについても何か書かないといかんでしょうな。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 誰もが知ってる“お年玉”切手の誰も知らない人間ドラマ ! 年末年始は、こたつとミカンにこの1冊 『年賀切手』 日本郵趣出版 本体定価 2500円(税込) 年賀状の末等賞品、年賀お年玉小型シートは、誰もが一度は手に取ったことがある切手。郷土玩具でおなじみの図案を見れば、切手が発行された年の出来事が懐かしく思い出される。今年は戦後の年賀切手発行60年。還暦を迎えた国民的切手をめぐる波乱万丈のモノ語り。戦後記念切手の“読む事典”<解説・戦後記念切手>シリーズの別冊として好評発売中! * 内容の一部は、このブログの年賀切手カテゴリーでもご覧になれます。 なお、本書をご自身の関係するメディアで取り上げたい、または、取り上げることを検討したい、という方は、是非、ご連絡ください。資料を急送いたします。 もう一度切手を集めてみたくなったら 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。 |
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
|