2023-07-03 Mon 06:09
オランダのウィレムアレクサンダー国王は、1日、奴隷制廃止から150年を記念してアムステルダムで開かれた式典で演説し、「奴隷制や奴隷貿易は人道に対する犯罪」だとして「皆さんの王として謝罪する」、「(当時の歴代国王が)人道犯罪に直面しながら何ら行動しなかったことを許してほしい」と謝罪しました。というわけで、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1938年6月1日、オランダ領時代のスリナムで発行された“奴隷解放75周年”の記念切手です。スリナムでの制度上の奴隷廃止は1863年のことで今回ご紹介の切手もそこから起算して75周年になるのを記念して発行されたものです。ただし、実際にスリナムの奴隷が完全に解放されたのは10年後の1873年のことで、今回のアムステルダムでの式典はここから起算して150年を記念するものとして行われました。 詳細については、こちらをクリックして、内藤総研サイト内の当該投稿をご覧ください。なお、内藤総研の有料会員の方には、本日夕方以降、記事の全文(一部文面の調整あり)をメルマガとしてお届けする予定です。 ★★★ 全日本切手展のご案内 ★★★ 7月15-17日(土-月・祝) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)が開催されます。今回は、会期中3日連続で、内藤が併催の韓国切手展の展示解説を行うほか、トークイベントも行う予定です。時間等は現在、最終調整中ですが、展覧会の情報は全日本切手展のオフィシャルサイトなどで、随時アップしていきますので、よろしくお願いいたします。 *招待券(裏面押印なきものは無効)の画像です。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内 ★ 7月14日(金) 05:00~ おはよう寺ちゃん 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から8時までの長時間放送ですが、僕の出番は6時からになります。皆様、よろしくお願いします。 ジョン・F・ケネディとその時代 7月22日(土)から、毎月第4土曜日開催のよみうりカルチャー北千住での講座です。今から60年前の1963年11月に暗殺をされたケネディ大統領とその時代について、様々な角度から解説をします。詳細はこちらをご覧ください。 切手・郵便物でみる 朝鮮半島現代史 7月25日開講! 武蔵野大学の新たな講座(対面式)「切手・郵便物でみる 朝鮮半島現代史」が7月25日にスタートします。詳細はこちらをご覧ください。 新講座「龍の文化史」 8月9日配信開始! 武蔵野大学の新たなWeb講座「龍の文化史」が8月9日から配信開始になります。龍/ドラゴンにまつわる神話や伝説は世界各地でみられますが、想像上の動物であるがゆえに、それぞれの物語には地域や時代の特性が色濃く反映されています。今回の講座では、日本の龍を皮切りに、中国、朝鮮、琉球、東南アジア、キリスト教世界など、世界の龍について興味深いエピソードなどを切手の画像とともにご紹介していきます。詳細はこちらをご覧ください。 よみうりカルチャー 荻窪 宗教と国際政治 原則毎月第1火曜日 15:30~17:00 時事解説を中心とした講座です。詳細はこちらをご覧ください。 武蔵野大学のWeb講座 大河企画の「日本の歴史を学びなおす― 近現代編」、引き続き開講中です。詳細はこちらをご覧ください。 ★ 『現代日中関係史 第2部 1972-2022』 好評発売中!★ 2022年11月に刊行された「第1部1945-1972」の続編で、日中国交”正常化”以降の1972年から2022年までの半世紀の、さまざまな思惑が絡まり合う日中関係の諸問題を、切手とともに紐解いていきます。 * ご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
2019-12-01 Sun 01:07
南米大陸北岸のスリナムの軍事法廷は、29日(現地時間)、1982年に政権に批判的だったジャーナリストや弁護士ら16人の拉致を軍に命じ、うち15人を殺害したとして、現職のデシ・ボーターセ大統領に禁錮20年の有罪判決を言い渡しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1980年にボーターセが最初に権力を掌握した軍事クーデターから5周年になるのを記念して、1985年にスリナムで発行された“革命5周年”の記念切手です。 スリナムは、南米大陸北東部、カリブ海と大西洋に面して、フランス領ギアナとガイアナにはさまれた位置にあり、国土の大半はギアナ高地です。1677年に結ばれたブレダ条約の結果、オランダがニューアムステルダム(現ニューヨーク市)を含む北米植民地ニューネーデルラント(現ニューヨーク州。毛皮貿易の中心地)を英国に割譲する代わりに、バンダ諸島のラン島(現インドネシア領。香辛料貿易の中心地)とともに、タバコの生産地であった現在のスリナムに相当する地域をオランダ領ギアナとして領有することになりました。 オランダからの独立は1975年のことでしたが、当初、スリナムはオランダからの経済支援に依存した経済建設を行っていました。ところが、1980年、陸軍曹長のボーターセによる軍事クーデターが発生。ボーターセひきいる国家軍事評議会は親ソ・キューバ政策を掲げて社会主義化を進めたため、1982年、オランダは経済支援を停止しました。今回、問題となったボーターセの殺人容疑は、この時期に発生したもので、ボーターセ側は事件への関与を否定した上で、犠牲者らは米CIAの支援の下で政権転覆をたくらみ、逃亡を試みて撃たれたと主張していました。 しかし、1983年の米軍のグレナダ侵攻を機に、ボーターセ政権は米軍の介入を恐れて親西側に政策を転換。さらに、1986年にはボスネガーの反乱による内戦が勃発するなど、混乱が続きました。 その後、1987年11月の総選挙で軍部が敗退。翌1988年には新憲法のもとでジャンカルが大統領に選出されて民政復帰を果たし、ボーターセは政界からの引退を余儀なくされたため、オランダは経済援助を再開しています。 ところが、1990年にはボーターセが再び軍事クーデターを起こしたため、オランダの援助は再び停止。ボーターセらはジャンカルの退陣と引き換えに民政復帰を約束したため、翌1991年に総選挙が行われ、大統領に選出されたフェネティアンの下、米蘭両国との関係も改善されました。 その後、2001年1月オランダ検察は1982年の反体制派指導者虐殺事件の主犯としてボーターセを拷問・殺人の罪で起訴したほか、麻薬密輸の容疑で国際指名手配しましたが、2010年7月の大統領選挙では野党メガ・コンビネーションから立候補したボーターセが当選。さらに、2015年5月の総選挙ではボーターセ氏ひきいる与党、国民民主党が勝利し、ボーターセも再選されてしまったため、ボーターセは“大統領任期中”として訴追を免れてきました。 しかし、2014年後半以降、原油・資源(ボーキサイト)価格が下落するなかで、2015年の総選挙に関連し、GDPの1.1%に相当する額の公務員の給与、社会保障費及び公共事業の一部増加など、経済成長を遙かに超える支出を行ったことから経済状況が急速に悪化。米ドルに対するスリナム・ドルの価値が半分以下に下落し、光熱費の高騰とも連動した結果、2016年には60%を超えるインフレ率を記録するなど、ボーターセ政権に対する国民の不満が高まっていました。 こうした背景の下、スリナムの軍事法廷は、ボーターセが中国を公式訪問中で国内を留守にしているタイミングをとらえて、本人欠席のまま、29日に有罪判決を下したというわけです。なお、判決2日前の27日には、ボーターセは北京で習近平と会談をしていますが、1990年代半ば以降、中国はスリナム軍に対して軍備と兵站資材の提供を行なってきたことからすると、あるいは、中国はあらかじめスリナム国内の反大統領派と打ち合わせたうえで、ボーターセを国外に呼び出し、軍事法廷を使って事実上のクーデターを行わせたということなのかもしれません。逆に、中国が今回の件に全く関与していなかったとすると、スリナム側は中国と手を切るとともに、厄介者のボーターセを中国に押し付けたということになります。そのどちらであったかは、今後、スリナムの動向を見ていれば、おのずと明らかになってくることでしょう。 ★★ 講座のご案内 ★★ 12月以降の各種講座等のご案内です。詳細については、各講座名をクリックしてご覧ください。 ・よみうりカルチャー 荻窪 宗教と国際政治 毎月第1火曜日 15:30~17:00 12/3、1/7、2/4、3/3(1回のみのお試し受講も可) ・東アジア歴史文化研究会 12月12日(木) 18:30~ 於常圓寺祖師堂ホール 朝鮮半島現代史の“原点”についてお話しします。 参加費 2000円 詳細は、主催者(東アジア歴史文化研究会)まで、メール(アドレスは、e-asia★topaz.ocn.ne.jp スパム防止のため、ここでは、★を@に変えています)にてお問い合わせください。 ・日本史検定講座(全8講) 12月13日(金)スタート! 内藤は、全8講のうち、2月20日の第6講に登場します。 ・武蔵野大学生涯学習秋講座 飛脚から郵便へ―郵便制度の父 前島密没後100年― 2019年12月15日(日) (【連続講座】伝統文化を考える“大江戸の復元” 第十弾 ) ★ 最新作 『アウシュヴィッツの手紙 改訂増補版』 11月25日発売!★ 本体2500円+税(予定) 出版社からのコメント 初版品切れにつき、新資料、解説を大幅100ページ以上増補し、新版として刊行。独自のアプローチで知られざる実態に目からウロコ、ですが淡々とした筆致が心に迫る箇所多数ありです。 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
2014-07-01 Tue 11:11
今日(1日)は、カリブ海に面した南米のスリナムでは、1863年に奴隷制度が廃止されたことを祝う“ケティコティの日”です。というわけで、今日はこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1963年にスリナムで発行された“奴隷解放100年”の記念切手で、断ち切られた鎖が大きく描かれています。奴隷解放を祝う“ケティコティの日”は、現地のスラナン語での“鎖(keti) の切断(Koti)”に由来するネーミングですので、このテーマの切手としては最もふさわしいデザインといえましょう。 スリナムは、南米大陸北東部、カリブ海と大西洋に面して、フランス領ギアナとガイアナにはさまれた位置にあり、国土の大半はギアナ高地です。南米大陸の独立国としては面積・人口ともに最小で、1975年にオランダから独立しました。このため、南米大陸ではオランダ語を公用語とする唯一の国となっています。 この地域への西洋人の入植は17世紀以降に本格化し、英蘭両国が領有権を争っていましたが、第二次英蘭戦争の講和条約として1677年に結ばれたブレダ条約の結果、オランダがニューアムステルダム(現ニューヨーク市)を含む北米植民地ニューネーデルラント(現ニューヨーク州。毛皮貿易の中心地)を英国に割譲する代わりに、バンダ諸島のラン島(現インドネシア領。香辛料貿易の中心地)とともに、タバコの生産地であった現在のスリナムに相当する地域をオランダ領ギアナとして領有することになりました。 その後、オランダ人はアフリカ系の黒人奴隷を使ってコーヒー、カカオ、サトウキビ、綿を栽培していましたが、劣悪な待遇に耐えかねて逃亡する奴隷が続出。彼らは先住民の協力を得て各地で“ボスネガー”として土着化し、オランダ人の農場を襲撃しました。オランダ側はボスネガーの討伐を試みるも失敗し、19世紀に入り、両者の和平協定が成立。さらに、1863年には奴隷制度が廃止されると、解放された奴隷の多くは首都のパラマリボに流入し、農場の労働力は激減しました。 このため、労働力の不足を補うべく、オランダ領東インドやインド、さらには中国、中東諸国からの移民が受け入れられることになり、スリナムは人口わずか53万人ながら、きわめて多種多様なエスニック・グループが混在する国となりました。 さて、ことし(2014年)は、わが国とカリブ共同体(旧英領を中心にカリブの14か国1地域が加盟。スリナムも加盟国です)の事務レベル協議開始後20年が経過した年であるとともに、ジャマイカならびにトリニダード・トバゴとの国交樹立50周年にもあたることから、“日・カリブ交流年”とされています。 8月1-3日、東京・墨田区で開催が予定されている<全日本切手展2014>でも、これにちなみ、外務省の認定を受けた“日・カリブ交流年”の行事として“カリブ切手展”を併催の予定です。今後も、同展の事前プロモーションを兼ね、機会を見つけてカリブ共同体加盟諸国・地域の切手をご紹介していきたいと考えておりますので、よろしくお付き合いください。 ★★ 講座「切手を通して学ぶ世界史:第一次世界大戦から100年 」のご案内 ★★ 7月18日・8月29日・9月19日の3回、愛知県名古屋市の栄中日文化センターで、第一次大戦100年の企画として、「切手を通して学ぶ世界史」と題する講座を行います。 講座では、ヨーロッパ、中東、日本とアジアの3つの地域に分けて、切手や絵葉書という具体的なモノの手触りを感じながら、フツーとはちょっと違った視点で第一次世界大戦の歴史とその現代における意味を読み解きます。 詳細は、こちらをご覧ください。 * 左の画像は講座のポスター、右は講座の内容を紹介した5月20日付『中日新聞』夕刊の記事です。どちらもクリックで拡大されますので、よろしかったらご覧ください。 ★★★ 『外国切手に描かれた日本』 電子書籍で復活! ★★★ 1枚の切手には 思いがけない 真実とドラマがある 光文社新書 本体720円~ アマゾン・紀伊国屋書店ウェブストアなどで、6月20日から配信が開始されました。よろしくお願いします。(右側の画像は「WEB本の雑誌」で作っていただいた本書のポップです) ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2014-06-05 Thu 08:15
今日(5日)は、カリブ海に面した南米のスリナムでは、1873年6月3日にインド系移民が最初に到着したことを祝う“インド人到達の日”の祝日です。以前、ガイアナとトリニダード・トバゴについて同様の祝日の話題を取り上げましたので、スリナムについても取り上げることにしました。というわけで、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1973年にスリナムが発行した“インド系移民100年”の記念切手のうち、農場で働くインド系女性を描いた15セント切手です。 スリナムは、南米大陸北東部、カリブ海と大西洋に面して、フランス領ギアナとガイアナにはさまれた位置にあり、国土の大半はギアナ高地です。南米大陸の独立国としては面積・人口ともに最小で、1975年にオランダから独立しました。このため、南米大陸ではオランダ語を公用語とする唯一の国となっています。 この地域への西洋人の入植は17世紀以降に本格化し、英蘭両国が領有権を争っていましたが、第二次英蘭戦争の講和条約として1677年に結ばれたブレダ条約の結果、オランダがニューアムステルダム(現ニューヨーク市)を含む北米植民地ニューネーデルラント(現ニューヨーク州。毛皮貿易の中心地)を英国に割譲する代わりに、バンダ諸島のラン島(現インドネシア領。香辛料貿易の中心地)とともに、タバコの生産地であった現在のスリナムに相当する地域をオランダ領ギアナとして領有することになりました。 その後、オランダ人はアフリカ系の黒人奴隷を使ってコーヒー、カカオ、サトウキビ、綿を栽培していましたが、劣悪な待遇に耐えかねて逃亡する奴隷が続出。彼らは先住民の協力を得て各地で“ボスネガー”として土着化し、オランダ人の農場を襲撃しました。オランダ側はボスネガーの討伐を試みるも失敗し、19世紀に入り、両者の和平協定が成立。さらに、1863年には奴隷制度が廃止されると、解放された奴隷の多くは首都のパラマリボに流入し、農場の労働力は激減しました。 このため、労働力の不足を補うべく、オランダ領東インドやインド、さらには中国、中東諸国からの移民が受け入れられることになりましたが、インド系の移民は、1873年6月5日、ララ・ロッホ号で到来したのが最初で、以後、1916年までに3万4304名のインド系移民が流入しました。ちなみに、現在のスリナムでは、人口の27%をインド系が占めており、同国最大のエスニック・グループとなっています。 さて、ことし(2014年)は、わが国とカリブ共同体(旧英領を中心にカリブの14か国1地域が加盟。スリナムも加盟国です)の事務レベル協議開始後20年が経過した年であるとともに、ジャマイカならびにトリニダード・トバゴとの国交樹立50周年にもあたることから、“日・カリブ交流年”とされています。 8月1-3日、東京・墨田区で開催が予定されている<全日本切手展2014>でも、これにちなみ、外務省の認定を受けた“日・カリブ交流年”の行事として“カリブ切手展”を併催の予定です。今後も、同展の事前プロモーションを兼ね、機会を見つけてカリブ共同体加盟諸国・地域の切手をご紹介していきたいと考えておりますので、よろしくお付き合いください。 ★★ 講座「切手を通して学ぶ世界史:第一次世界大戦から100年 」のご案内 ★★ 7月18日・8月29日・9月19日の3回、愛知県名古屋市の栄中日文化センターで、第一次大戦100年の企画として、「切手を通して学ぶ世界史」と題する講座を行います。 講座では、ヨーロッパ、中東、日本とアジアの3つの地域に分けて、切手や絵葉書という具体的なモノの手触りを感じながら、フツーとはちょっと違った視点で第一次世界大戦の歴史とその現代における意味を読み解きます。 詳細は、こちらをご覧ください。 * 左の画像は講座のポスター、右は講座の内容を紹介した5月20日付『中日新聞』夕刊の記事です。どちらもクリックで拡大されますので、よろしかったらご覧ください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★ 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より) 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。 出版元特設ページはこちらです。また、10月17日、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店で行われた『蘭印戦跡紀行』の刊行記念トークの模様が、YouTubeにアップされました。よろしかったら、こちらをクリックしてご覧ください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
2013-10-18 Fri 13:57
南米スリナム南東部の熱帯林地帯で、チョコレート色をした木登りが得意なカエルや小さな角を持つフンコロガシなど、60種の新種とみられる生物が発見されたことを、米国の環境保護団体、コンサベーション・インターナショナル(CI)が、きょう(18日)付で明らかにしました。というわけで、きょうはスリナム切手の中からこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1923年、オランダのウィルヘルミナ女王即位25年を記念して発行された5ギルダー切手です。 ウィルヘルミナ女王の即位25周年に際しては、当時の蘭領各国から記念切手が発行されました。記念切手は、中央の女王の肖像は共通で、周囲の枠に各植民地をイメージしたデザインを盛り込むというスタイルで、今回ご紹介のスリナムについては密林が描かれています。今回の大量の新種発見の舞台は熱帯雨林地帯ですので、そのイメージにあうものとして、持ってきました。 スリナムは、南米大陸北東部、カリブ海と大西洋に面して、フランス領ギアナとガイアナにはさまれた位置にあり、国土の大半はギアナ高地です。南米大陸の独立国としては面積・人口ともに最小で、1975年にオランダから独立しました。このため、南米大陸ではオランダ語を公用語とする唯一の国でもあります。 この地域への西洋人の入植は17世紀以降に本格化し、英蘭両国が領有権を争っていましたが、第二次英蘭戦争の講和条約として1677年に結ばれたブレダ条約の結果、オランダがニューアムステルダム(現ニューヨーク市)を含む北米植民地ニューネーデルラント(現ニューヨーク州。毛皮貿易の中心地)を英国に割譲する代わりに、バンダ諸島のラン島(現インドネシア領。香辛料貿易の中心地)とともに、タバコの生産地であった現在のスリナムに相当する地域をオランダ領ギアナとして領有することになりました。 その後、オランダ人は黒人奴隷を使ってコーヒー、カカオ、サトウキビ、綿を栽培していましたが、劣悪な待遇に耐えかねて逃亡する奴隷が続出。彼らは先住民の協力を得て各地で“ボスネガー”として土着化し、オランダ人の農場を襲撃しました。オランダ側はボスネガーの討伐を試みるも失敗し、19世紀に入り、両者の和平協定が成立。さらに、1863年には奴隷制度が廃止されると、解放された奴隷の多くは首都のパラマリボに流入し、農場の労働力は激減。このため、労働力の不足を補うため、オランダ領東インドやインド、さらには中国、中東諸国からの移民が受け入れられ、スリナムの多様なエスニシティが形成されることになりました。 さて、1975年の独立後も、スリナムは旧宗主国であるオランダからの経済支援に依存した経済建設が行われていましたが、1980年、陸軍曹長のデシ・ボーターセによる軍事クーデターが発生。ボーターセひきいる国家軍事評議会の下で親ソ・キューバ政策が採られて社会主義化が進められたため、1982年、オランダの経済支援が停止されています。しかし、1983年の米軍のグレナダ侵攻を機に、米軍の介入を恐れて親西側に政策を転換。さらに、1986年にはボスネガーの反乱による内戦が勃発するなど、混乱が続きました。 その後、1987年11月の総選挙で軍部が敗退。翌1988年には新憲法のもとでジャンカルが大統領に選出されて民政復帰を果たしたため、オランダは経済援助を再開しています。ところが、1990年にはボーターセが再び軍事クーデターを起こしたため、オランダの援助は再び停止。ボーターセらはジャンカルの退陣と引き換えに民政復帰を約束したため、翌1991年に総選挙が行われ、大統領に選出されたフェネティアンの下、米蘭両国との関係も改善されました。 その後、2001年1月オランダ検察は1982年の反体制派指導者虐殺事件の主犯としてボーターセを拷問・殺人の罪で起訴したほか、麻薬密輸の容疑で国際指名手配していますが、2010年7月の大統領選挙では野党メガ・コンビネーション候補として立候補したボーターセが当選してしまいました。このため、現在、ボーターセは“大統領任期中”として訴追を免除されています。当然のことながら、大統領でなくなれば逮捕・拘束されることになるわけですから、ボーターセは何が何でも大統領の座にしがみつくでしょうな。それがかなわないとなると、あるいは、手兵をひきいて、今回、希少な動植物の宝庫と確認された熱帯雨林地帯にこもって対抗するというようなこともあるかもしれません。 * 昨日(17日)、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店ふらっとすぽっとにて開催の『蘭印戦跡紀行』のトークイベントは、無事、盛況のうちに終了いたしました。お越しいただいた皆様、特に、会場にて拙著をお買い上げいただいた皆様には、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★ 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より) 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。 * 出版元特設ページはこちらをご覧ください。 ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。次回開催は11月5日(原則第1火曜日)で、以後、12月3日、1月7日、2月4日、3月4日に開催の予定です。時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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