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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 “王冠を賭けた恋”から80年
2016-12-11 Sun 22:02
 1936年12月11日に英国王エドワード8世が、ウォリス・シンプソンとの“王冠を賭けた恋”によりわずか325日で退位してから、今日でちょうど80年です。というわけで、エドワード8世がらみのマテリアルの中から、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      KEVIII 香港からシンガポール転送

 これは、1937年2月24日、英国スコットランドのアナンからエドワード8世の切手6ペンス分を貼り、香港宛に差し出されたものの、シンガポール宛に転送されたカバーです。

 エドワード8世の肖像が入った普通切手の発行が開始されたのは1936年9月1日のことで、彼の退位までの期間はわずか3カ月しかありませんので、在位期間中の使用例で気の利いたものを探そうとするとかなり苦労します。今回ご紹介のカバーも退位後のものではあるのですが、後継国王として即位したジョージ6世の肖像入り普通切手の発行は1937年5月10日以降のことですので、それ以前の使用例ということで、まぁ、許容範囲といえましょうか。

 さて、今回のカバーの当初の宛先となった香港に関しては、エドワード8世にちなむ“プリンス・エドワード・ロード(太子道)”があります。

 1902年に締結された日英同盟は、当初、帝政ロシアを仮想敵国としてスタートしましたが、その後、日露戦争での日本の勝利に伴い、主要な仮想敵国はドイツへと変化します。さらに、第一次大戦を通じて、帝政ロシアは革命によって崩壊し、ドイツも敗北しましたが、日本としては、第一次大戦後も同盟関係を維持しようと考えていました。そして、そのための地ならしとして、英王室と友誼を通じ、日英両国の絆を内外にアピールすることで、英国内で日英同盟存続の世論を喚起するため、皇太子裕仁親王が訪欧します。

 裕仁親王は欧州各国、中でも英国で大歓迎を受け、日本政府も“皇室外交”によって英国の世論を味方につけたことを確信。そして、日英同盟の存続をかけて、1921年末から翌1922年にかけて、米国が召集したワシントン会議に参加しましたが、同会議では、大戦後のアジア・太平洋問題と軍備制限が議題として取り上げられ、米英日の主力艦の保有率を5・5・3とする海軍軍縮条約をはじめ、太平洋での相互不可侵を決めた米英日仏の4ヶ国条約、そして、中国の主権尊重・領土保全・門戸開放・機会均等を定めた9ヶ国条約(米英日仏伊中蘭白葡)が締結されました。この結果、日本は大戦中に獲得した山東半島の権益を放棄させられ、肝心の日英同盟も、4ヶ国条約の締結により意義を失ったとして破棄されてしまいます。

 もっとも、米英は日本にこれら諸条約を呑ませるため、英国は東経110度以東、すなわち、シンガポール以東の要塞を強化しないことを約束しています。当然のことながら、英国の中国艦隊は削減され、香港の軍事的価値も減少します。

 さて、9ヵ国条約が掲げていた中国の主権尊重という大義名分は、それなりに実現され、英国は威海衛の返還に同意しました。しかし、同時に英国は中国がパリ講和会議ならびにワシントン会議で一貫して要望していた香港・新界の返還については拒絶。その後も、中国は不平等条約撤廃と新界の返還を主張し続け、英国がそれを拒絶するという構図が続くことになります。

 一方、日英同盟が廃棄され、日英関係が微妙なものとなりつつあった1922年、日本との関係改善策の一環として、裕仁親王の英国訪問の答礼というかたちを取って、エドワード皇太子(後のエドワード8世)が日本を訪問しました。

 その途中、皇太子は香港にも立ち寄り、8人乗りの籠に乗ってのパレードを行ったほか、精力的に香港各地を訪問。九龍の旺角と界限街の間を東西に走る道はこれを記念して“太子道”と命名されました。

 当時、香港でのエドワード皇太子の一挙手一投足は、さまざまなメディアを通じて世界に発信されましたが、こうした“次期国王”のパフォーマンスによって、大英帝国は、来るべきエドワードの御世においても、香港島と九龍市街地、そして新界租借地が一体となった“英領香港”の枠組を維持するのだという意思を世界に、とりわけ、中国に対して見せつけようとしていたわけです。

 このあたりの事情については、拙著『香港歴史漫郵記』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 


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 KEVIII
2016-01-20 Wed 11:31
 ウォリス・シンプソンとの“王冠を賭けた恋”によりわずか325日で退位した英国王エドワード8世が、1936年1月20日に即位してから、今日でちょうど80年です。というわけで、きょうはこの切手です。

      KEVIII(半ペニー)

 これは、1936年9月1日に発行されたエドワード8世の肖像を描く半ペニーの普通切手です。

 エドワード8世とウォリスとの関係は、エドワードが皇太子時代の1931年頃から始まっていましたが、ウォリスを夫のアーネストと離婚させて妃として迎え入れようとするエドワードに対しては、王室内外から強い反発がありました。

 1936年1月20日、ジョージ5世の死崩御に伴い、エドワードは独身のまま“エドワード8世”として王位を継承しましたが、その後もウォレスとの関係は継続。それどころか、ウォリスを“ただの友人”として扱おうとする王室関係者に反発したエドワードは、これ見よがしにウォリスと同年8-9月に王室所有のヨットで海外旅行に出かけたり、ペアルックのセーターで公の場に登場したりしたほか、パーティーの席上で、ウォリスの夫アーネストに対して「さっさと離婚しろ」などと恫喝した挙句に暴行を加えるなどといった騒ぎまで引き起こします。
 
 こうしたなかで、10月27日、ウォリスの離婚が成立。制度的にウォリスの結婚が可能となったエドワードは「私は愛する女性と結婚する固い決意でいる」というラジオ演説を行うべく準備を始めましたが、その内容に激怒したボールドウィン首相は「政府の助言なしにこのような演説をすれば、立憲君主制への重大違反となる」と国王に進言。1936年11月、国王の個人秘書のアレグザンダー・ハーティングを通じて、「王とシンプソン夫人との関係については、新聞はこれ以上沈黙を守り通すことはできない段階にあり、一度これが公の問題になれば総選挙は避けられず、しかも総選挙の争点は、国王個人の問題に集中し、個人としての王の問題はさらに王位、王制そのものに対する問題に発展する恐れがあります」という文書を手渡し、王位からの退位を迫りました。

 このため、国王は退位を決意し、12月10日、エドワード8世退位の詔勅と、弟のヨーク公がジョージ6世として即位することが正式に発表されました。ちなみに、生前、ジョージ5世は「自分が死ねば、1年以内にエドワードは破滅するだろう」と言い残していましたが、はたして、エドワード8世の在位期間は325日で終わってしまいました。

 1936年9月にエドワード8世の切手が発行されてから退位までの間はわずか3カ月しかありませんので、在位期間中の使用例で気の利いたものを探そうとするとかなり苦労します。僕の手元にも、何通か、エドワード8世の切手を貼ったカバーはあるのですが、いずれも退位後の使用例なので、いずれ、在位期間中のモノも手に入れなければ…と考えています。


 ★★★ 展示イベントのご案内 ★★★

 第7回テーマティク出品者の会切手展 1月17-20日(日ー水。ただし、18日は休館)
 於・切手の博物館(東京・目白)

 テーマティク出品者の会は、テーマティクならびにオープン・クラスでの競争展への出品を目指す収集家の集まりで、毎年、全国規模の切手展が開催される際には作品の合評会を行うほか、年に1度、切手展出品のリハーサルないしは活動成果の報告を兼ねて会としての切手展を開催しています。僕も、昨年の香港展に出品した香港の歴史のコレクションを展示します。入場は無料ですので、ぜひ、遊びに来てください。(詳細はこちらをご覧ください)

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 

       ペニーブラック表紙 2350円+税

 【出版元より】
 若く美しい女王の横顔に恋しよう!
 世界最初の切手
 欲しくないですか/知りたくないですか

 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。

 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 

       アウシュヴィッツの手紙・表紙 2000円+税

 【出版元より】
 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。

 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。

 インターネット放送「チャンネルくらら」にて、本書の内容をご紹介しております。よろしかったら、こちらをクリックしたご覧ください。

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