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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 米、ニジェールに派兵
2013-02-24 Sun 22:23
 アメリカ政府は、22日、アフリカ西部ニジェールに米兵100人を派遣したと発表しました。今後、米軍は同国内の基地から無人偵察機を運用し、隣国マリで国際テロ組織の掃討作戦をしているフランス軍の支援を本格化させることになります。というわけで、ニジェールとマリの両方にまたがるものとして、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

        セネガンビア・ニジェール葉書

 これは、1904年8月、現在のマリの首都、バマコから北東に15キロの地点にあるカティからパリ宛に差し出された葉書で、仏領セネガンビア・ニジェールの切手が貼られています。

 1880年代から90年代にかけて、アフリカにおけるフランスの支配地域は大きく拡大し、各地に植民地が建設されていきました。このため、1895年、ガボンより西側の各植民地を統括するため、在セネガル(1902年まではサン・ルイ、以後はダカール)の総督の下に、セネガル、仏領スーダン(現マリ)、仏領ギアナ、コート・ディヴォワールの緩やかな“連邦”が組織されました。

 連邦の法律・法令は本国植民地相の権限で制定・施行され、連邦総督は、その枠内で中央集権的に各植民地を統括しました。各植民地で徴収された関税収入は連邦のもので、道路・鉄道・通信・港湾・保健・高等教育は連邦の権限に属していましたが連邦の発足後も、切手に関しては、1943年までは連邦統一のモノは発行されず、各植民地でそれぞれ個別に発行されています。

 連邦を構成する各植民地は、行政単位としては、最小規模の町村(コミューン)がいくつか集まって圏(セルクル)を構成し、さらに圏が集まって地域(レジヨン)を構成するという構造になっていました。そのうち、セネガルの4コミューン(ゴレ、サン・ルイ、ダカール、ルフィスク)のみは住民が“準フランス人”として市民権を有し、地方議会も置かれていましたが、その他の地域のアフリカ系住民は、“原住民制”の下、従属民としてほぼ無権利状態に置かれていました。

 たとえば、従属民には“徴用”として10年間の公共事業での労働が義務付けられていましたが、その労働は非常に過酷なものでした。当然のことながら、徴用を逃れようとする者も少なくなかったのですが、フランス当局は徴用に応じなかった者や税金の未納・滞納者には、容赦なく、裁判なしで5日間の投獄と15フランの罰金が科されました。

 さて、連邦の発足に伴い、1899年10月、仏領スーダンの一部が仏領ギニア、コート・ディヴォワール、ダホメに編入され、残りは、1902年、仏領セネガンビア・ニジェールに再編成されます。その地域は、おおむね、現在のセネガル・マリ・ニジェールにまたがる広大なものでした。

 今回ご紹介の葉書は、この時期に差し出されたもので“SENEGAMBIA ET NIGER”の切手が貼られ、カティ郵便局もそれを略した“SNEBIE NIGER”となっています。ところが、中継地のカイの消印では、“仏領スーダン(SOUDAN FRANCAIS)”という旧称がそのまま使われており、制度変更直後の過渡的な使用例となっています。

 なお、1895年に発足した連邦は、1904年にダホメが加わり、正式に“仏領西アフリカ連邦”が創設されます。これを受けて、仏領セネガンビア・ニジェールは、旧仏領スーダンの古称であるオート・セネガルの名を冠した仏領オート・セネガル・ニジェールへと再編され、今回ご紹介のセネガンビア・ニジェール名義の切手も短命に終わってしまいました。

 さて、今年に入ってからのフランスの軍事介入以来、わが国でもマリ情勢に関する報道が目につくようになってきました。そこで、4月下旬をめどに、拙著『マリ近現代史』(仮題)の刊行を目指して、現在、鋭意制作作業を進めています。今回ご紹介したような仏領時代の複雑な制度変更についても、できる限りわかりやすく解説しております。正式なタイトルや価格などが決まりましたら、随時、このブログでもご案内していきますので、よろしくお願いいたします。


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