2021-04-27 Tue 01:57
1961年4月27日に西アフリカ大西洋岸のシエラレオネが英国から独立して、ちょうど60年になりました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1859年9月21日に発行された英領シエラレオネ最初の切手です。 現在、シエラレオネ半島と呼ばれている地域は、15世紀にポルトガル人がこの地に上陸し“ライオン山脈”と命名したのが国名の由来です。 18世紀後半、グランビル・シャープ、トマス・クラークソン、ウィリアム・ウィルバーフォースら奴隷制度廃止主義者は、シエラレオネ半島に解放された奴隷の定住地を作ることを計画。1787年、半島北岸の細長い土地を、先住民テムネ人のトム王とその臣下の首長たちから購入し、最初の移住者をシエラレオネに送り出しました。当初の入植地の名前は、グランビル・タウンです。 しかし、テムネ人らが移住者に対して敵対的だったことに加え、マラリアなどの病気の蔓延もあり、最初の入植は失敗。1791年、グランビル・シャープの後継者として、アレクサンダー・ファルコンブリッジの指導の下、グランビル・タウンはクライン・タウンと改称して入植地の再建が図られましたが、これも失敗に終わりました。 その後、1792年にクライン・タウンの跡地はフリー・タウンと再改称され、ようやく、解放奴隷たちの拠点が建設されます。そして、1807年、英本国では奴隷廃止法が成立し、翌1808年、奴隷貿易は廃止されると、同年、フリータウンは英国の直轄植民地となり、奴隷貿易を取り締まる艦隊の基地として発展。1861年までに、英国の支配はシエラレオネ半島全域に及び、英領シエラレオネが形成されます。 この間、1841年にはフリータウンのグロスター地区に最初の郵便局が設置され、1843年には英本国との定期便が開始されました。1853年にはグロスター地区に英領シェラレオネとして初の中央郵便局が開設されます。当初、郵便局長は他の役職者が兼業していましたが、1857年に専従のスタッフが常勤の局長を務めることになり、1858年、アイザック・フィッツジョンが任命されています。 これを受けて、それまで切手を使用せず、料金収納印を押すことで対応していた英領シェラレオネでも、独自の切手が準備されることになり、1859年9月21日、ロンドンのトマス・デ・ラ・ルー社製の切手が発行されました。なお、デ・ラ・ルー社は、英領シエラレオネの切手を製造するにあたって、今回ご紹介の切手に採用されたもの以外にも、ヴィクトリア女王の肖像を描く図案のパターンをいくつか作っており、それらは、同時代の香港やセイロン、ジャマイカ等の切手に用いられています。 * 昨日(26日)の文化放送「おはよう寺ちゃん」の僕の出番は、無事、終了いたしました。リスナーの皆様には、この場をお借りして御礼申し上げます。次回は来週月曜日・5月3日に登場の予定です。引き続きよろしくお付き合いください。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内★ 5月3日(月) 05:00~ 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。 5月15日(土)~ 武蔵野大学の生涯学習講座 5月15日、22日、6月5日、19日、7月3日、17日の6回、下記のふたつの講座でお話しします。 13:00~14:30 「日本の郵便150年の歴史 その1 ―“大日本帝国”時代の郵便事情―」 15:15~16:45 「東京五輪と切手ブームの時代 ―戦後昭和社会史の一断面―」 対面授業、オンラインのライブ配信、タイム・フリーのウェブ配信の3通りの形式での受講が可能です。詳細については、武蔵野大学地域交流推進室宛にメール(lifelong★musashino-u.ac.jp スパム防止のため、アドレスの@は★に変えています)にてお問い合わせください。 ★ 『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』 好評発売中! ★ 2530円(本体2300円+税) 明治4年3月1日(1871年4月20日)にわが国の近代郵便が創業され、日本最初の切手が発行されて以来、150年間の歴史を豊富な図版とともにたどる3巻シリーズの第1巻。まずは、1945年の第二次大戦終戦までの時代を扱いました。今後、2021年11月刊行予定の第2巻では昭和時代(戦後)を、2022年3月刊行予定の第3巻では平成以降の時代を取り扱う予定です。 ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
2011-08-26 Fri 23:46
地球から約4000光年離れた銀河系内に、ダイヤモンドでできているとみられる小惑星が存在することが分かり、オーストラリアの天文学者らでつくるチームが、きのう(25日)発行の米科学誌サイエンスで発表したそうです。というわけで、ダイヤモンドの切手といえば、やはりこの1枚でしょうか。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1970年に西アフリカ大西洋岸のシエラレオネが発行したダイヤモンド型の切手です。 シエラレオネは15世紀にポルトガル人がこの地に上陸し“ライオン山脈”と命名したのが国名の由来で、1808年、解放奴隷の移住地として英領植民地となりました。 英領時代の1931年にダイヤモンドの鉱脈が発見され、いちやくダイヤモンドの輸出国となりましたが、ダイヤモンドの意r権をめぐる対立も激化。1961年の独立後もクーデターが頻発して政情は安定せず、1991年から2002年にかけては、ダイアモンドの鉱山の支配権をめぐり、政府軍と反政府勢力・革命統一戦線(RUF)の間で、隣国リベリアをも巻き込んだ大規模な内戦が発生し、7万5000人以上が犠牲となりました。 内戦の過程で、両陣営はダイヤモンドの密輸出により内戦継続の資金を得ていたため、それらのダイヤモンドが“紛争ダイヤモンド”として国際市場から忌避されたことは、映画『ブラック・ダイヤモンド』などでも取り上げられましたから、ご存じの方も多いかと思われます。 ちなみに、今回ご紹介の切手が発行された1970年は、1968年のクーデターで成立した軍事政権がダイヤモンド産業を国有化した年で、この切手にも自国の主力輸出商品を広く世界にアピールする意図が込められていたことはいうまでもありません。 ただし、セルフ糊つきの変形シール切手というアイディアを思いついたのは、シエラレオネ郵政の人間ではなく、切手の輸出による外貨獲得を目指す国々のエージェントとして幅広く事業を展開しているインター・ガバメンタル・フィラテリック・コーポレーション(IGPC)で、彼らの“営業努力”により、この切手は変形切手の中でも最も有名なものの一つとなりました。 なお、IGPCやその切手ビジネスについては、拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でも1章を設けてまとめております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 5月29日付『讀賣新聞』に書評掲載 『週刊文春』 6月30日号「文春図書館」で 酒井順子さんにご紹介いただきました ! 切手百撰 昭和戦後 平凡社(本体2000円+税) 視て読んで楽しむ切手図鑑! “あの頃の切手少年たち”には懐かしの、 平成生まれの若者には昭和レトロがカッコいい、 そんな切手100点のモノ語りを関連写真などとともに、オールカラーでご紹介 全国書店・インターネット書店(amazon、boox store、coneco.net、JBOOK、livedoor BOOKS、Yahoo!ブックス、エキサイトブックス、丸善&ジュンク堂、楽天など)で好評発売中! |
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