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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ビルマに郵便システム輸出へ
2013-05-19 Sun 17:19
 総務省と日本郵便が、郵便番号制度や物流網の整備などの“日本型郵便システム”を新興国や途上国に売り込むことになりました。その第一弾として、ミャンマー(ビルマ)郵便電信公社への導入が検討されており、明日(20日)、同国のミャト・ヘイン情報通信技術相が訪日し、新藤義孝総務相と会談して協力を確認するそうです。というわけで、きょうは“日本”の文字の入ったビルマ切手ということで、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで確認されます)

       シャン加刷切手カバー

 これは、日本占領下のビルマで、1944年9月16日、シャン地方切手にビルマ文字を加刷した5セント切手を貼ってラングーン宛に差し出されたカバーです。切手が貼られている切手つき封筒は、1943年7月1日、戦前の英領時代のジョージ6世図案の印面を×印で抹消して発行されたものです。

  シャン地方はタイ・ラオス・中国に隣接する高原地帯で、第二次大戦中、旧英領ビルマの一部として日本の占領下に置かれていました。

 シャン地方のうち、モンパンとケントンの2州に関しては、イギリスによって奪われたタイの失地として、1943年8月に調印された「『マライ』及『シャン』地方ニ於ケル『タイ』国領土ニ関スル日本国『タイ』国間条約」により、タイに返還されましたが、残りのシャン地方の所属は未定のままでした。

 これに先立ち、同年8月1日、ビルマでは軍政が廃止され、バーモを首班とするビルマ国が独立しましたが、シャン地方に関しては、タイならびに中国と接する戦略上の要衝であるとの理由から、日本軍が引き続き軍政を継続。このため、シャン地方では、独立ビルマとは別の郵政機関を組織する必要が生じ、“大日本帝国郵便・シャン”と表示された独自の切手が発行されました。これがシャン地方切手です。

 シャン地方切手は10月1日に発行されましたが、その直前の9月25日、「『シャン』地方等ニ於ケル『ビルマ』国領土ニ関スル日本国『ビルマ』国間条約」が調印され、モンパン、ケントンの2州を除くシャン州(現在の南北シャン、ワーに加え、カヤ州がその範囲に相当)は条約調印から90日以内に独立ビルマの領土に編入されることになりました。これを受けて、1944年11月1日、すでに発行されたシャン地方切手にビルマ文字を加刷し、以後、ビルマ全土で使用することになりました。

 今回ご紹介のカバーは、こうした状況の下で1945年2月16日に差し出されたもので、消印の地名表示は不鮮明ですが、“THONZE”のように見えます。

 ところで、今回のビルマへの日本型郵便システムについて報じた記事の中には「ミャンマーでは郵便物が途中でなくなり、数割があて先に届かないという。消印を押したり配達地に仕分けたりするのは職員の手作業なので時間がかかり、郵便番号を書く習慣も浸透していない。」という文章がありました。まぁ、たしかに、かの国の郵便局員のモラルが決して高くはなく、郵便の自動化が遅れていることも事実でしょうが、押印もすべて手作業というのはホントですかねぇ。(少なくともかつては)ビルマでも機械印が使用されていたという実績もありますので、現状で機械印が使われなくなっているということであれば、それは軍政時代の社会の停滞を象徴的に表しているということなんでしょうな。


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この記事のコメント
#2282 ミャンマーへの郵便技術支援
内藤先生、いつも驚きと感激のお話をありがとうございます。本年日本郵便を退職した小生は、仕事人生の半分以上を国際協力に携わってきましたので、この記事はとても感動的です。タイにある郵便国際機関に3年間赴任した時も、隣国ミャンマーへの渡航は困難で、何の交流もできませんでした。今回のプロジェクトがどう進められるのかとても興味津々です。
2013-05-26 Sun 10:47 | URL | 林 健志 #1g8OfKoc[ 内容変更] | ∧top | under∨
・林健志様
 お褒めいただき恐縮です。その後の報道を見ていると、今回のプロジェクトの成否は、郵便システム云々以前に、道路・交通網を含めた全インフラの整備が必要になりそうで、道羽険しそうです。でも、その部分も含めて、日本モデルを受け入れて国づくりをしてくれると、日本人としてはうれしいですよね。今後ともよろしくお付き合いください。
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