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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アブハジア独立25年
2017-07-23 Sun 17:39
 1992年7月23日、アブハジア自治政府がグルジア(現ジョージア)からの独立を宣言してから、今日でちょうど25周年です。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      アブハジア加刷

 これは、1992-93年のアブハジア紛争の際に、アブハジアの独立勢力が旧ソ連切手にアブハジア地図と国名、新額面などを加刷した“切手”です。

 アブハジアは黒海北岸に面した山がちの地域で、北のカフカース山脈をロシア連邦との国境としており、ジョージアは、自国の最西端に位置すると主張しています。

 旧ソ連の時代、アブハジアの地域はアブハジア自治共和国としてグルジア・ソビエト社会主義共和国に含まれていました。1985年以降のペレストロイカで民族主義が台頭すると、グルジアの民族主義者はアブハジアを統合したかたちでのグルジアの独立を主張するようになりました。ちなみに、ソ連崩壊時のアブハジアでの民族構成は、グルジア人45%、アブハジア人17%、ロシア人15%、アルメニア人15%、ギリシア人3%で、民族主義に基づくグルジア国家が樹立されれば、マイノリティとしてのアブハジア人に対してグルジア語の強制など“グルジア化”が強要されるのではないかとの懸念がアブハジア人の間にはありました。

 このため、1989年7月16日、グルジアから分離したかたちでのアブハジア国家の独立を求める暴動が、スフミ(アブハジアの首都)で発生。ソ連軍による鎮圧までに、死者16人、負傷者137人が発生しました。

 1991年4月9日に独立を宣言したグルジアは、1992年2月21日、旧ソ連時代の憲法を廃止し、ロシア革命後の1921年に制定されたグルジア民主共和国の憲法を復活させることを宣言。これを、非グルジア人の自治権の廃止と理解したアブハジア人は反発を強め、1992年7月23日、アブハジア自治政府が独立を宣言しました。

 これに対して、グルジア政府は3000人の部隊をアブハジアに送り、1週間以内に、首都スフミを制圧しました。しかし、アブハジア独立勢力は、チェチェン人など、北コーカサスの諸共和国からの義勇軍の参加を得てグルジア政府軍との交戦を継続。グルジア政府軍は次第に追い詰められ、1992年末までに、スフミ以西のアブハジアの大半は独立派が掌握します。この間、グルジア、アブハジア両軍がそれぞれの勢力圏内で“民族浄化”を行い、約3000人が犠牲になったと言われています。

 今回ご紹介の切手はこうした状況下で発行されたものです。ただし、切手発行時にはアブハジアを正規の独立国として承認した国はなかったため(ロシアがアブハジアの独立を承認したのは2008年)、この切手はアブハジア独立派の実効支配地域においてのみ有効で、国際郵便には使えませんでした。また、一時期、“アブハジア”名義で芸能人などを取り上げた切手が出回ったこともありましたが、その大半は、万国郵便連合からは正規の切手として認められていない“ラベル”です。

 その後、1994年5月15日にアブハジアとグルジアの間で停戦合意が成立し、国連平和維持軍が停戦の監視に当たっているため、現在まで大規模な戦闘は起きていません。現在、アブハジア地方の全域はアブハジア共和国の実効支配下にありますが、グルジアはあくまでもアブハジアの独立を認めず、アブハジア共和国を独立国家として承認しているのは、ロシア、ニカラグア、ヴェネズエラ、ナウルの4ヵ国(ほかに、地域の実効支配政府として、沿ドニエストル共和国、南オセチア共和国、ナゴルノ・カラバフ共和国。なお、ヴァヌアツとツヴァルはかつては独立を承認していたものの、現在は撤回)にとどまっています。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史”  次回は27日!★★★ 

 7月27日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第6回が放送予定です。今回は、8月4日の世界陸上開幕に先立ち、サニブラウン選手応援企画でガーナにスポットを当ててお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。


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 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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