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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に描かれたソウル:Nソウルタワー
2012-06-28 Thu 10:28
 『東洋経済日報』6月22日号が刊行されました。僕の連載「切手に描かれたソウル」では、今回はソウルタワーの切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

        ソウルタワー(1981)

 これは、1981年、韓国で発行された“世界観光の日”の切手で、南山のソウル・タワー(現Nソウル・タワー)が取り上げられています。

 ソウル・タワーは、もともとは、ソウル首都圏一帯のTV・ラジオ放送電波を送る総合電波塔として1965年に起工され、1971年に完成しました。KBS、MBC、TBCのテレビ電波の送信を開始したのは、翌1972年のことで、1975年には展望台も完成しています。

 ただし、当初は純然たる電波塔として利用され、展望台が一般に公開されることはありませんでした。タワーの展望台からは、天気が良ければ、仁川はおろか、北朝鮮の開城にある松岳山まで見渡せることを考えると、そうした施設を一般に公開することに国防・治安の面で不安があったためだと思われます。実際、タワー建設途中の1968年には北朝鮮による青瓦台襲撃未遂事件が起きており、完成後の1972年に始まる維新体制下では、民主化運動が厳しく制限されるなど、当時の朴正熙政権は治安の維持に神経をとがらせていました。

 展望台の一般公開が始まったのは、全斗煥政権下の1980年10月のことで、一般には、これをもって“ソウル・タワー”の開館とされています。

 タワーの高さは236.7メートルですが、高さ243メートルの南山の頂上付近に立っているため、海抜からの高さは479.7メートルになります。ちなみに、展望台の海抜は378.7メートルです。かつて、韓国一高い建物として有名になった汝矣島の63ビル(旧大韓生命63ビル)は高さ239.7メートル、現在、韓国一高い北東アジア貿易タワーの高さが305メートルですから、海抜からの高さでは、タワーの展望台から見下ろす格好になります。

 開館と同時に、タワーはソウル市内を一望できる観光地として人気を集め、開館翌年の1981年9月28日には、鬱陵島とともに、今回ご紹介の“世界観光の日”の切手に取り上げられたのを皮切りに、以後、ソウルの風景を取り上げた切手には、しばしば登場しています。

 年間の来場者数は、ほぼ100万人で推移しており、1991年に来場者が1000万人を突破、2001年には来場者が2000万人を突破した。この間、2000年には、所有権がニュース専門テレビ局YTNに移転しています。

 その後、開館から25年となる2005年には、施設の老朽化などから全面改修が行われ、同年12月、現在のNソウル・タワーの名前でリニューアル・オープンとなりました。ちなみに、Nの文字をつけたのは、NEWと南山にちなんでいるのだそうです。

 さて、わが国では、ちょうどひと月前の5月22日、高さ634メートル、世界一の高さを誇る電波塔として、東京スカイツリーが開業しました。

 これに対抗すべく、韓国でも2015年5月の完工を目指して、最上階を展望台とする高さ640メートルのソウルDMCランドマーク・ビルディングを麻浦区上岩洞に建設する計画が進められ、2009年には工事が始まっていました。ところが、事業者のソウルライトタワーが、ソウル市当局との間で事業計画変更や土地使用料金未払いなどのトラブルを起こしたため、ことし6月1日、ソウル市はビル用地の売買契約を解除。計画は暗礁に乗り上げています。

 となると、当分の間、最も高い場所からソウルを見下ろす展望台としては、今回ご紹介のNソウル・タワーの地位が揺らぐこともなさそうですな。 

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