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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界漫郵記:リオデジャネイロ⑤
2016-07-03 Sun 10:28
  『キュリオマガジン』2016年7月号が発行されました。僕の連載「郵便学者の世界漫郵記」は前回に続き、リオデジャネイロ(以下、リオ)篇の第4回目。今回は旧中央郵便局の局舎とブラジル初期の郵便にフォーカスをあてました。その記事の中から、この1点をご紹介します。(以下、画像はクリックで拡大されます) 

      ブラジル・スタンプレス(1821)

 これは、ポルトガル植民地時代の1821年、リオからバルバセーナ宛の郵便物です。

 ブラジルで郵便事業が始まったのは、ポルトガル植民地時代の1663年1月25日のことですが、18世紀以前のポルトガルとその植民地では、郵便事業は国王のために公文書を運ぶのが主な仕事で、官営事業ではなく、ダ・マタ家が独占的に取り扱っていました。

 当時のブラジルは識字率が非常に低く、郵便の利用も少なかったうえ、そもそも、1733年まではサンパウロ=リオ間には満足な道路さえありませんでした。1773年になって、ようやく、サンパウロ=リオ間の郵便が月1回のペースで始まったものの、実際には、郵便の利用者はほとんどいないのが実情でした。

 とはいえ、18世紀末になると、経済の拡大もあって徐々に郵便の利用者も増えたため、1797年、ポルトガル王室は郵便事業をダ・マタ家から買収して国営化します。これに伴い、翌1798年4月24日、リオに郵便総局が設置され、リスボンからバイア経由でリオにいたる郵便ルートが開設されました。なお、ポルトガル=ブラジル間の海上料金は4オイタバス(1オイタバスは1/8オンス=約14グラム)まで80ヘアイス、そこからポルトガル本国内は40ヘアイスが基本料金でした。

 1808年、ナポレオン戦争の余波でポルトガル王室がリオに逃れてくると、以後、リオは1821年に国王ジョアン6世がリスボンに帰還するまで、王国の首都として急速に発展し、郵便物の取扱量も増大しました。

 今回ご紹介の郵便物は、そうしたポルトガル植民地時代の郵便物の一例で、1821年8月31日、リオから高原の都市、バルバセーナ宛に差し出されたものです。

 バルバセーナは、現在でこそ、酪農と生花栽培を主とする地味な小都市ですが、鉄道の路線が発達するまでは、ミナス・ジェライス州の鉱山地帯とリオをはじめとする海岸地帯を結ぶ交通の要衝として繁栄していました。

 ブラジル最初の切手“牛の目”が発行される以前の郵便物なので、当然のことながら、切手は貼られておらず、封筒の右上に受取人から徴収すべき料金“80(ヘアイス)”の数字を書込み、リオ発信であることを示す“RODEJAИRO”の地名印が押されています。この時代のリオの地名印にはいろいろなタイプがあるのだが、この郵便物に押されているのは、“N”の字が鏡字の“И”になっているのがちょっと面白いところです。

 さて、現在、8月の五輪開催にあわせて、『リオデジャネイロ歴史紀行(仮題)』と題する拙著を刊行すべく、制作作業を進めています。定価、刊行日などの詳細が決まりましたら、随時、このブログでもご案内いたしますので、よろしくお願いします。 


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