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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ディズニーの横暴を許すな!
2013-05-13 Mon 11:30
 米国の映像制作会社、ピクサー・アニメーション・スタジオは、今秋、メキシコなどの祝日である“死者の日”を題材にした映画を公開すべく準備を進めているそうですが、それに先立ち、ピクサーの親会社、ウォルト・ディズニー・カンパニーが今月1日にスペイン語で“死者の日”を意味する“Día de los Muertos”を米特許商標庁に商標登録を出願していた問題で、ディズニー側は国際世論の囂囂たる非難を受けて昨日(12日)までに出願を撤回しました。まずはめでたいですな。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       メキシコ・死者の日(2012)

 これは、2012年にメキシコで発行された「メキシコの伝統:死者の日」の切手で、装飾されたガイコツとお菓子、蝋燭などが描かれています。

 メキシコでは古来、祖先のガイコツや戦いで倒した敵のガイコツを飾る習慣がありましたが、特に、アステカ族には冥府の女神ミクトランシワトルにガイコツを捧げる祝祭がありました。その後、スペインがメキシコを征服し、カトリックが浸透すると、カトリックの祝祭である“諸聖人の日(11月1日)”と融合して、11月1-2日に盛大に祝われるようになりました。

 2日間の“死者の日”のうち、1日は子供の魂が、2日は大人の魂が戻る日とされ、市街地には“死者の花”とされるマリーゴールドが飾られ、故人の遺影、十字架、砂絵、花、食物(パン、サトウキビ、柑橘類など)、ガイコツ(切手のように装飾されたものや砂糖で作られたイミテーションもあるそうです)などを並べた祭壇(オフレンダ)を前に家族や友人が集まり、故人の思い出などを語り合う日となっています。日本のお盆を陽気にしたような雰囲気で、墓地にも装飾を施して供え物がささげられるほか、バンドによる演奏や行列行進なども行われます。

 視覚的に派手な祝祭だけに映像向けの題材としてピクサーも目を付けたのでしょうが、死者の日は2003年にはユネスコの無形文化遺産にも指定されており、ディズニーが、商標登録というかたちで、映画の題名のみならず、玩具、食品、衣料品などの関連商品への“死者の日”の名称使用権を独占しようとしたことは、少なくとも道義的には許されるべきことではないでしょう。実際、ディズニーによる商標出願が明らかになると、当然のことながら、米国内のヒスパニック系団体やメキシコを含む周辺諸国などから「文化は売り物ではない」、「文化の横領、搾取だ」とする反発の声が続出。世論の強い非難を受けて、ディズニーは「題名の変更が決まった」として、出願撤回に追い込まれています。

 実は、ディズニー社が、こうした無謀な商標出願を行うのは今回が初めてではありません。彼らは、2011年にも米海軍特殊部隊の“SEALチーム6”の商標出願したものの、激しい非難を浴び、撤回に追い込まれたという前科があります。この時のディズニー側の言い訳は「海軍に敬意を表して」だったとか…。なんだか、中国系企業が中国で日本の地域ブランドや芸能人の名前などを勝手に商標出願し、登録を済ませてしまうのと同じメンタリティーといえそうです。

 いずれにせよ、メキシコ人の魂にとって重要な“死者の日”や米国人の誇りとする“SEALチーム6”を商標出願して阿漕に儲けようという連中ですから、映画を作るという名目で「お正月」や「ひな祭り」を米国内でいつの間にか商標出願して、日本社会を食い物にするくらいのことを平気でやりかねません。どうにも、彼らに対する不信感が拭えませんな。


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