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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 イセエビ密猟者のお手柄
2012-10-18 Thu 23:01
 今月13日、南アフリカのケープタウンで観光客の乗った船が転覆して2人が死亡した事故で、イセエビの密漁者たち9人が海に投げ出された乗客を次々と救い出して自分たちの船に救助しただけでなく、遅れてやってきたレスキュー隊に救助が必要な場所を伝えるなど、大活躍したことが話題になっているそうです。というわけで、きょうはイセエビを取り上げた南アの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

       ロブスターのある風景

 これは、1985年に発行されたフランス・ダヴィト・ウールダーの絵画切手のうち、「ロブスターのある風景」を取り上げた切手のマキシマムカードです。

 ウールダーは、1867年4月7日、オランダのロッテルダム生まれ。父親は市役所の職員で、芸術家で身を立てるなんて馬鹿げたことだと考えていたそうですが、息子が装飾職人になることには反対しませんでした。

 1880年から85年にかけて、ウールダーはロッテルダムのアカデミーで修業し、国王ウィルヘルム3世金メダルを受賞。イタリア、ブリュッセルで修業した後、1890年、兄を追って南アフリカに移住。当初は有力者のお抱え絵師だったが、後にネーデルランド・南アフリカ鉄道会社に就職しました。

 鉄道が開業して工事が一段落し、鉄道施設の装飾の仕事が激減すると、1894年以降、ウールデルはプレトリア女子高校の美術教師のほか、新聞の挿絵などで生計を得ていましたが、1896年には休暇を利用してズールーランドに取材旅行に出かけ、ケープタウンで展覧会を開いています。

 1899年、第2次ボーア戦争が勃発すると、ウールデルはポール・クリューガーによってトランスヴァール政府の公式戦争画家に任命され、戦場の様子を記録する作品を数多く残しました。

 戦後は、再びズールーランドやアフリカ東海岸を取材し、1905年、南アフリカ芸術家協会のメンバーに選ばれ、以後、南ア政府高官の肖像なども手掛けるようになります。しかし、南ア社会全体が疲弊していた中で、彼自身の生活も苦しく、1910年、南アを離れてオランダに帰国。植物画で知られていた閨秀画家のゲルダ・ピトロと結婚し、欧米の画壇を中心に活躍するようになりました。

 しかし、その後も南アへの思いは断ち切れず、1938年、ウールダーは妻とともにプレトリアに帰還。1944年に亡くなるまで、プレトリアを拠点に数多くの作品を残しました。

 さて、切手に取り上げられた作品の題名は「ロブスターのある風景」ですが、ケープタウンのウォーターフロントのレストランで出されているイセエビの多くは“クレイフィッシュ”となっていました。下の画像は、僕が実際に現地で注文したクレイフィッシュのプレートです。

       南ア・クレイフィッシュ

 クレイフィッシュとロブスターの言葉の使い分けについては、英語圏でも地域によって違うようですが、その詳細については、僕個人は良く理解できていません。あるいは、ハサミの形などで区別ができるのかもしれませんが、僕が注文したランチのサービス・メニューのクレイフィッシュにハサミはついていませんでしたので、詳細はわからずじまいです。いずれにせよ、日本語では両者を特に区別することなく、“イセエビ”としているケースが多いようで、今回話題となった密漁者がどちらを取っていたのかは、報道だけではわかりません。

 ちなみに、僕がこのクレイフィッシュを注文した店は、ランチのサービス・メニューということを割り引いても、他の店と比べてやたらと値段が安かった(そうであればこそ、注文したのですが)ことを覚えています。いまにして思えば、今回大活躍の密漁者から安く仕入れてきたモノだったのかもしれません。そういえば、今回の事故の後、密漁者たちが取っていた“イセエビ”は、はたして、その後、どうなったんでしょうか。そのあたりもちょっと気になりますな。

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