2012-10-14 Sun 18:19
きょう(14日)は鉄道記念日です。というわけで、10月30日開講予定の教養講座“T-moneyで歩くソウル歴史散歩”のPRを兼ねて、この切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1971年4月12日に韓国で発行された“地下鉄1号線着工”の記念切手で、地下鉄とその路線のイメージ図が図案化されています。 ソウル市の地下鉄建設計画は、1969年10月、交通部長官に就任した白善燁の下でスタートしました。 朝鮮戦争の英雄であった白は、1960年に退役し、台湾・フランス・カナダの大使を歴任した後、ほぼ10年ぶりに帰国して交通部長官に就任しましたが、帰国早々、ソウル市内のバスの殺人的な混雑を体験して、交通事情の改善に本気で取り組む決意をしたそうです。 さて、白は、日本をモデルにした地下鉄建設を考えたものの、長官就任当初は1965年の日韓国交正常化から日も浅く、日本に技術協力を要請しづらい雰囲気があったようです。 ところが、1970年3月、いわゆる「よど号」事件が起こり、白も現場で無血解決にむけて尽力したことで、白と日本政府関係者との間で個人的な友情が育まれます。そして、事件処理のために訪韓していた日本の運輸大臣・橋本登美三郎が帰国に際して「お返しと言ってはなんですが、なにかお手伝いできることがあれば申し付けてください」と挨拶したのをとらえて、白は、地下鉄建設への協力を要請。橋本の快諾を得ました。 1970年7月に日韓経済閣僚会議が開催されると、橋本は白との“約束”どおり、鉄建公団の角本良平を団長とする地下鉄建設のための調査団をソウルに派遣。建設計画の策定に向けて具体的な作業が開始され、1971年4月、工事が開始されていました。ただし、白じしんは、1970年末に済州島からミカンを運んできた船舶が過積載で沈没したことの責任をとって辞職してしまったため、地下鉄工事そのものには関与することはありませんでした。 さて、ソウルの地下鉄1号線は、当初、ソウル西郊の清涼里駅(国鉄の中央線、京春線などの始発駅)から東大門=鐘路を経てソウル駅にいたる区間で開業しました。 当時は、現在と比べるとソウル市内の交通量も少なかったため(バスの殺人的な混雑の要因は、本数の少なさにも原因がありました)、工事は道路を地面から掘り下げ、後からフタをする箱型後方で進められています。このため、トンネルを掘り進めるスタイルに比べて、低コストの工事となりました。 その一方で、総額272億円の地下鉄車両(186両)の導入をめぐっては、1973年、三菱商事・丸紅・三井物産・日商岩井の日本商社連合が、岸信介をはじめ日韓両国の実力者にリベートを支払うため、輸出価格を1両につき3000万円以上も水増しして納入したとのスキャンダルも起きています。もっとも、このスキャンダルは、1977年2月、アメリカに亡命した元KCIA部長の金炯旭の発言によって明るみに出たもので、1号線の開通時には、このことを知るものはごくわずかでした。 ともあれ、地下鉄工事は順調に進み、1974年8月15日の光復説を期して、鷺梁津(当時は国鉄との相互乗り入れ駅でした)で開通記念式典が行われました。当日は、大統領の朴正煕も、南山の国立劇場で開催された光復説記念式典の後、開通式典に出席する予定でしたが、いわゆる文世光事件が発生し、出席を取りやめています。 こうしてスタートしたソウルの地下鉄は、その後、40年近くの年月を経て、現在では、1号線から9号線までの9路線+盆唐線、電鉄中央線や電鉄京義線、また空港鉄道や仁川地下鉄1号線などと合わせて首都圏をほぼ網羅するまでに成長しました。路線ごとにシンボルカラーや路線番号があり、また各駅には駅番号がついているので、非常に利用しやすいと思います。また、日本のスイカやパスモと同様のカードT-money を使えば切符を買う手間もいらず、なおかつ、現金で切符を買うよりも割安で利用できるのも嬉しいところです。 よみうりカルチャー荻窪で10月30日より開講予定の僕の講座“T-moneyで歩くソウル歴史散歩”は、T-moneyと地下鉄を使って、ソウルの歴史散歩の面白さをご紹介する企画です。フツーの観光ガイドではあまり触れられないスポットなどもご紹介しながら、他とはちょっと違った視点から、韓国について考えるための材料を提供していくつもりですので、1人でも多くの方のご参加を心よりお待ちしております。 ★★★ T-moneyで歩くソウル歴史散歩 ★★★ ・よみうりカルチャー荻窪 10月30日、12月4日、1月29日、2月5日、3月5日 13:00-14:30 8月の韓国取材で仕入れたネタを交えながら、ソウルの歴史散歩を楽しんでみようという一般向けの教養講座です。詳細につきましては、青色太字をクリックしてご覧いただけると幸いです。皆様のご参加を心よりお待ちしております。 ★★★★ 電子書籍で復活! ★★★★ 歴史の舞台裏で飛び交った切手たち そこから浮かび上がる、もうひとつの昭和戦史 『切手と戦争:もうひとつの昭和戦史』 新潮社・税込630円より好評配信中! 出版元特設HPはこちらをクリック ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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