2021-01-04 Mon 00:54
毎年のことですが、“郵便学者”という看板を掲げて生活している関係から、僕は毎年、年賀状には干支にちなんだ切手を取り上げることにしています。もっとも、ただ単に干支の切手を持ってくるだけではつまらないので、①できるだけ他の人が使いそうにないモノ、②その年の仕事の予告編になりそうなモノ、③可能な限り、干支を取り上げた年賀切手は除く、という基準で選んでいます。きょう(4日)は仕事始めでオフィスで僕の年賀状をご覧になるという方もあると思いますので、今回の年賀状の切手について簡単にご説明いたします。(画像はクリックで拡大されます)
これは、第二次大戦中の1944年5月11日(1945年説もあり)、日本軍占領下の“北ボルネオ”で発行された2ドル加刷の切手で、戦前に英領ノースボルネオで発行された“農夫と水牛”の1セント切手が加刷の台切手として使われています。 元日のご挨拶でも申し上げましたが、本年は、郵便創業150周年の企画として、日本切手の歴史を概観する書籍を2冊と、河上肇賞をいただいた「東京五輪の郵便学」の書籍化を目指していますので、日本関連(いわゆる日本切手のほか、沖縄や戦時中の占領地切手等も含む)の中から選ぼうと考えました。特に、南方占領地の切手には水牛農耕を題材とした切手があって面白いのですが、ビルマや蘭印の正刷切手・葉書だと他の人とも重なりそうだったので、ちょっっとひねったものとして、この1枚を選びました。 第二次大戦中、日本軍はボルネオ島全域を占領しましたが、このうち、英領部分のサラワク、ノース・ボルネオ、ブルネイは、一括して“北ボルネオ”とされ、陸軍の管轄下に置かれました。ちなみに、現在はインドネシア領となっている旧オランダ領部分(こちらはボルネオ島ではなくカリマンタン島と呼ばれています)は、海軍の管轄下です。 日本占領下の北ボルネオでは、1942年10月、戦前の英領サラワク、ノース・ボルネオ、ブルネイの切手を接収して“大日本帝國政府”の文字を加刷した切手が発行されましたが、1944年5月、その加刷切手に“大日本/帝國政府”と2行で加刷し、その下に2ドル、3ドル、5ドルの額面を加刷した高額切手が発行されました。その用途としては、電信為替や収入印紙、航空郵便料金用と考えられています。 ちなみに、当時の北ボルネオでは2オンスまでの書状基本料金が8セントでしたので、今回ご紹介の切手の2ドルという額面は、現行の郵便料金との比較で考えると、2000円くらいのイメージでしょうか。現在、日本の郵便局で日常的に販売されている切手のうち、額面の金額が最も高いのは1000円切手ですから、当時の北ボルネオでの2ドルという額面はかなりの高額です。まぁ、正月くらい、景気よく、ドーンと高額の切手の画像をお届けするのも悪くないかと… なお、例によって、年賀状の投函は年末ぎりぎりになってしまいましたので、まだお手元に届いていない方もあるかと思います。早々に賀状をお送りいただきながら、僕の賀状がまだ届いていないという方々におかれましては、今しばらくお待ちいただきますよう、伏してお願い申し上げます。 ★ 文化放送「おはよう寺ちゃん 活動中」 出演します!★ 1月8日(金)05:00~ 文化放送の「おはよう寺ちゃん 活動中」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時のスタートですが、僕の出番は6時台になります。皆様、よろしくお願いします。 ★ 内藤陽介の最新刊 『日本人に忘れられたガダルカナル島の近現代史』 ★ 本体1600円+税 出版社からのコメント 【中国の札束攻勢にソロモン諸島は陥落寸前!】 日本軍の撤退後、悲劇の激戦地は いかなる歴史をたどり、 中国はどのように浸透していったのか 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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