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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界の切手:サウジアラビア
2017-11-24 Fri 11:05
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2017年11月15日号が発行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はサウジアラビア(と一部ニカラグア)の特集です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      サウジアラビア・建軍80年

 これは、1980年4月5日に発行された“建軍80年”の記念切手で、サウジアラビア国旗を背景にした馬上のイブン・サウードが描かれています。

 サウジアラビア王国の初代国王、アブドゥルアズィーズ・ブン・アブドゥッラフマーン・ブン・ファイサル・アール・サウード(以下、イブン・サウード)は、1876年に生まれました。

 19世紀初頭、アラビア半島の大半を支配していたサウード家ですが、その後、オスマン帝国とエジプトの介入を受けて衰退し、イブン・サウードが生まれた時には、その領域はリヤド周辺のみになっていました。さらに、サウード家はラシード家との権力闘争に敗れ、1891年、放浪の末にクウェートに亡命します。

 こうした中で、1901年、イブン・サウードは、クウェートの大首長ムバーラク・ブン・サバーハ・サバーハとジャバル・シャンマル王国のラシード家との戦いに参加。別働隊としてリヤド攻略を担当するも、本隊が大敗したため、リヤドの奪還は成りませんでした。

 次いで、1902年、22歳のときに40人の兵力でマスマク城に居を構えていたアジュラーン総督を討ち取り、リヤドを奪還。ナジュド(アラビア半島中央部)のスルターンとしての地位を確立しました。現在のサウジアラビアは、これをもって国軍の始まりとしており、今回ご紹介の切手もここから起算して、ヒジュラ暦(完全太陰暦のため、1年は約354日)で80年になるのを記念して発行されたものです。なお、当時は、まだ“サウジアラビア王国”は発足しておらず、当然、サウジアラビア国旗も存在していません。

 1914年に第一次世界大戦が勃発すると、英国に協力。しかし、英国側は、インド総督府がサウード家をしたものの、大勢はハーシム家のヒジャーズ政府を支援しており、サウード家の勢力拡大には否定的でした。

 英国との実力差を十分に認識していたイブン・サウードは英国との直接対決は避け、1921年、まずは、サウード家の勢力拡大の障碍となっていたクウェートのラシード家を打倒。さらに、1924年、ハーシム家のシャリーフ・フサインが“カリフ”を僭称し、イスラム世界で孤立すると、その機会を狙って、同年8月、軍を率いてヒジャーズに侵攻します。これに対して、ヒジャーズ側は敗退を重ね、翌1925年12月には、最後まで残っていたメディナとジェッダが相次いで陥落し、イブン・サウードはヒジャーズをも支配下に収め、1926年1月8日、ヒジャーズ主要都市の有力者の推戴という形式を取って“ヒジャーズ王”として即位し、「ヒジャーズの王にしてナジュドとその属領のスルタン」となりました。

 その後、1927年、イブン・サウードは英国とジッダ条約を結び、ナジュドの独立を認めさせたうえで、1931年にはヒジャーズ・ナジュド王国の建国を宣言して、自らマリク(王)となります。そして、翌1932年、国号をサウジアラビア王国に変更し、そのまま、その初代国王となり、1953年に亡くなるまで、王国の基礎を築くことに尽力しました。

 さて、『世界の切手コレクション』11月15日号の「世界の国々」では、オスマン帝国支配時代からサウジアラビア建国までの歴史をまとめた長文コラムのほか、預言者のモスクメッカ巡礼民族衣装の女性の切手などもご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧いただけると幸いです。

 なお、「世界の国々」の僕の担当回ですが、今回のサウジアラビアの次は、22日発売の11月29日号での中国(清朝)の特集になります。こちらについては、発行日の29日以降、このブログでもご紹介する予定です。


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