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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 中村屋のボース
2015-12-11 Fri 12:31
 安倍首相は、きょう(11日)から3日間の日程でインドを訪れ、明日(12日)、モディ首相と会談します。日印両国は毎年、首脳が相互に訪問しており、両首脳が個別に会談するのは今回で5回目だそうです。というわけで、日印友好ネタということで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      インド・中村屋のボース

 これは、1967年にインドで発行された“中村屋のボース”ことラス・ビハリ・ボースの切手です。

 ラス・ビハリ・ボースは、1886年、英領インド帝国支配下のベンガルに生まれ、シャンデルナゴル(チャンダンナガル)とコルカタ(カルカッタ)の学校で学んだ後、デヘラードゥーンの森林研究所で事務員となりました。その後、インド国民会議に参加して独立運動に身を投じましたが、チャールズ・ハーディング総督暗殺未遂事件や、1915年のラホール蜂起の首謀者とされたため、日本に亡命しました。

 日本でのラス・ビハリ・ボースは東京を拠点に活動していましたが、来日4ヶ月後、日本政府は英国の要求に応じて国外退去を命じます。このため、彼は新宿中村屋の相馬愛蔵に匿われ、中村屋のアトリエに隠れて過ごしました。その後、日本政府は頭山満や犬養毅、内田良平などの働きかけもあり、国外退去命令を撤回しますが、英国の追及は1918年末まで続き、ラス・ビハリ・ボースは日本各地を転々とせざるを得ませんでした。

 なお、1918年、彼はかねてから恋仲にあった相馬夫妻の娘、俊子と結婚し、1923年には日本に帰化。中村屋が1927年に喫茶部を新設する際、相馬夫妻に本格的なインドカレーを出すよう強く進言し、みすから、同店の名物メニューとなった“純インド式カリー・ライス”の開発にも関わりました。

 その後、日英間の緊張が高まると、“中村屋のボース”は日本政府や軍部とのコネクションもあり、インド国外における独立運動の有力者の1人となります。さらに、1941年12月の日英開戦後、日本が占領したマレーやシンガポールでは、捕虜となった英印軍将兵の中から志願者を募ってインド国民軍が編制され、モーハン・シンがその司令官に就任します。これと前後して、ラス・ビハリ・ボース率いる“印度独立連盟”と、同じくシンガポールやバンコクを拠点に独立運動を行っていた“インド独立連盟”が合流してインド独立連盟が設立され、ラス・ビハリ・ボースは初代議長に就任しています。

 しかし、インド国民軍の司令官に就任したシンにはその地位に見合った能力がなく、軍内は混乱。このため、インド独立連盟はインド国民軍を管轄下に収めて、シンを司令官から罷免して事態を乗り切ろうとしましたが、その過程で、ラス・ビハリ・ボースはすっかり消耗して体調を崩してしまいます。そして、1943年7月4日、シンガポールで開催されたインド独立連盟総会において、ラス・ビハリ・ボースは、インド独立連盟総裁とインド国民軍の指揮権をスバス・チャンドラ・ボースに移譲し、自らはインド独立連盟の名誉総裁となりました。

 その後、ラス・ビハリ・ボースとチャンドラ・ボースは日本政府の援助を受けてシンガポールに自由インド仮政府を樹立。ラス・ビハリ・ボースも、同政府首班のチャンドラ・ボースとともにその指導者の1人となりましたが、1945年1月21日、体調の悪化により日本で客死。日本政府はその死に際し、勲二等旭日重光章を授与してラースの功績を称えました。なお、同年6月の沖縄戦では、長男で陸軍中尉だった防須正秀も戦死しています。


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