2012-06-26 Tue 07:46
きょう(26日)は、いまから25年前の1987年6月26日に薬物乱用・不正取引防止に関する国際会議で「薬物乱用統制における将来の活動の包括的多面的概要」が採択されたことにちなみ、“国際麻薬乱用・不正取引防止デー”です。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました(画像はクリックで拡大されます)
これは、1838年10月25日、当時、アヘンの密輸で大儲けしていたジャーディン・マセソン商会がロンドン宛に差し出した郵便物です。 ジャーディン・マセソン商会は、清朝からの茶の輸入によって生じた赤字を、インド産のアヘンを密輸することによって解消しようとするイギリスの三角貿易が行われていた時代背景の下で生まれました。 創立者の一人、ウィリアム・ジャーディンは、1774年、スコットランドの南西部の生まれ。9歳で父親と死別し、兄の援助を受けてエディンバラで医学を学び、1802年にイギリス東インド会社のボンベイ=広州航路の船医として就職しました。 船医時代のジャーディンは、副業として、アジア各地に駐在している東インド会社のスタッフのために本国商品のブローカーのようなことをやって、15年間にわたって、商売人としてのノウハウを体得するとともに、各地のインド系ならびに中国系の商人とのコネクション作りに精を出していました。 こうして、1817年、ジャーディンは東インド会社を退職。いったんはロンドンに戻ったものの、1822年には広州に乗り込み、船医時代に培ったボンベイのイラン系商人とのコネクションを活かしてアヘン貿易に手を染めて巨額の利益を得て、当時の一大企業だったマグニアック商会のパートナーになります。 一方、ほぼ同じ時期にアヘン商人として派手に売り出していたのが、ジェイムズ・マセソンでした。 マセソンは、ジャーディン同様、スコットランドの出身で、ジャーディンよりも12歳若い1796年の生まれ。エディンバラ大学で学んだ後、1815年に叔父の会計事務所を手伝うためにカルカッタへ渡り、その後、広州で貿易に携わるようになります。1821年には広州駐在のデンマーク領事の肩書きを手に入れ、1823年には、福建沿岸で清朝官憲の監視をかいくぐってアヘンの直接密輸を成功させ、広州のアヘン商人の間ではちょっとした有名人になっていました。 2人は、1827年頃からビジネス・パートナーとして活動していましたが、1832年、マグニアック商会の破産に伴い、広州にジャーディン・マセソン商会を設立しました。 今回ご紹介の郵便物は、そのジャーディン・マセソン商会が1838年にロンドン宛に差し出した郵便物で、裏面には同商会のマークの入った封蝋が押されています。郵便物の具体的な差出地を示す表示などはありませんが、カバーには“INDIA”の表示がありますから、アヘンの仕入先であるインドから差し出されたものでしょう。この郵便物の場合は、差出地からボンベイなどの港までは民間の信書便業者であるレミントン商会(その印が封筒の右上に押されています)が取り扱い、そこから先は、イギリスの郵便船でロンドンまで運ばれたものと考えられます。 さて、ジャーディン・マセソン商会の設立からほどなくして、1833年には東インド会社による対清貿易の独占が撤廃されたため、新たな対清貿易のお目付け役として、イギリス政府はウィリアム・ネーピアを貿易監督官として広州に派遣します。 極東のことなど何も知らないネーピアが、当時のヨーロッパでは一流の中国通であったジャーディンに取り込まれるのは時間の問題で、自由貿易の実現のためには清朝に対して強硬措置を取るべきだと確信するにいたったネーピアは、清朝とのトラブルを解決するための手段として広州に軍艦を呼び寄せて清朝の役人を威嚇するという砲艦外交を展開。ネーピア本人は広州到着からわずか3ヵ月後に亡くなりますが、ジャーディンらは広州のイギリス商人は「ネーピアの死を無駄にするな」という大義名分を掲げ、清朝に対して武力制裁を発動すべしとの運動を展開しました。 これが1840年のアヘン戦争にもつながっていくわけですが、そのあたりの事情については、拙著『香港歴史漫郵記』でも、当時の郵便物などを紹介しつつご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介・韓国進出! ★★★ 『韓国現代史』の韓国語訳、出ました 우표로 그려낸 한국현대사 (切手で描き出した韓国現代史) ハヌル出版より好評発売中! 米国と20世紀を問い直す意欲作 우표,역사를 부치다 (切手、歴史を送る) 延恩文庫より好評発売中! *どちらも書名をクリックすると出版元の特設ページに飛びます。なお、『우표,역사를 부치다(切手、歴史を送る)』につきましては、7月以降、このブログでも刊行のご挨拶を申し上げる予定です。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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