7月1日というのは区切りの良い日だけに、いろんな記念日が重なっていますが、僕としては個人的に1997年の香港返還が印象に残っています。
意外と見落とされがちですが、アヘン戦争の起こった1840年はイギリスで世界最初の切手が発行された年でもあります。
ところで、当時のイギリスでは、世界最初の切手と同時に、料金込みの封筒(この封筒を使えば、切手を貼らなくても郵便物を出すことができた)を発行しました。この封筒には、イラストとして、大英帝国が進出していった世界各国の風景が描かれており、近代郵便のネットワークが世界を結ぶというイメージが表現されています。この封筒は、イラストの作者の名前を取って“マルレディ・カバー(カバーは封筒の意味)”とよばれています。
イギリス政府としては、切手よりもこのマルレディ・カバーのほうが人気が出ると思っていたのですが、実際には、マルレディ・カバーはとても評判が悪く、そのデザインをおちょくったカリカテュアの封筒がいくつも民間で作られています。
この封筒には、左下に清朝の官吏に痛めつけられる“哀れなアヘン商人”の姿が描かれており、当時のイギリスの重要な政治問題であった中国とのアヘン貿易が取り上げられています。ただ、イラストの筆致からすると、イラストの作者は、アヘン貿易を妨害する清朝のほうに非があると見ているようで、こんなところからも、当時の大英帝国の世界観の一端が透けて見えるように思います。
1997年の香港返還を前に、僕は『切手が語る香港の歴史―スタンプ・メディアと植民地 』という本を出版しました。今回のカバーは、その制作時には間に合わず、この本には掲載できませんでした。
あれから8年が過ぎ、香港関係のマテリアルもそれなりに増えてきましたので、そろそろ、1997年に出した香港本のリニューアル版を出したいところです。その際には、今日ご紹介したカバーをぜひとも使ってやりたいものだと、毎年、7月1日になると思っています。
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『反米の世界史』の刊行を記念して、下記のイベントを行います。
皆様、お気軽に遊びに来ていただけると幸いです。
◎ 7月2日(土) 即売・サイン会@切手市場
(詳細はhttp://kitteichiba.littlestar.jp/ をご覧ください)
◎ 7月5日(火) トークイベント@新宿ロフト
「復活!!!!北朝鮮祭り~最近の北鮮総括!」
(詳細はhttp://www.piks.or.tv/ をご覧ください)