2010-03-03 Wed 17:56
アフリカ中部ルワンダのハビャリマナ元大統領の妻で、1994年に同国で起きた多数派フツによる少数派ツチ大虐殺の首謀者の一人とされるアガテ・ハビャリマナが、きのう(2日)、パリ郊外クルクロンヌの自宅で逮捕されました。(すぐに釈放されたそうですが)というわけで、きょうはこの1枚です。
これは、1999年にルワンダで発行された大虐殺の犠牲者追悼の切手です。 大虐殺以前のルワンダでは、人口の85%がフツ族、14%がツチ族、トゥワ族(ピグミー)が人口の1%という構成になっていました。このうちのツチ族は、ドイツ(第一次大戦まで)およびベルギー(第一次大戦後)の植民地時代に植民地支配の末端を担う首長を輩出し、多数派のフツ族を支配していました。1962年の独立の前にツチ族とベルギー当局との関係が悪化すると、ベルギー当局は社会革命としてフツ族による体制転覆を支援。このため、報復を恐れた多数のツチ族が難民としては近隣諸国に脱出しました。 1973年、クーデターで政権を掌握したジュベナール・ハビャリマナは、当初は民族和解政策をとりましたが、その独裁大勢に対する国民の批判が強まると反ツチ傾向を強めます。このため、ウガンダのツチ系難民はルワンダ愛国戦線 (RPF) を結成。ウガンダを拠点にフツ族のハビャリマナ政権に対する反政府運動を活発化させるとともに、1990年10月には、ルワンダ北部に侵攻し、内戦が勃発しました。 内戦は、1993年8月にアルーシャ協定が結ばれ、和平合意が成立したものの、翌1994年4月6日、ジュベナール・ハビャリマナ大統領(フツ族)とブルンジのシプリアン・ンタリャミラ大統領を乗せた飛行機が何者かによって撃墜されると、フツ族によるツチ族への大量虐殺(ジェノサイド)が始まりました。 その後、1994年7月にRPFがツチ族保護を名目に全土を完全制圧。フツ族のパステール・ビジムングを大統領、ツチ族のポール・カガメを副大統領(現大統領)とする新政権が発足し、紛争は終結しましたが、この間、ラジオ放送がツチ族への敵愾心を煽る放送を流したことで、一般人までもが虐殺に荷担し、100万人ともいわれる犠牲者が生じました。 今回逮捕されたアガテに対しては、ツチ族主体の現政権は彼女が虐殺を企てたグループの一員だとして国際手配していましたが、夫の死後、拘束されることなくフランスに住んでいました。これは、大虐殺後、ルワンダ政府がフランス政府の関与を批判したことに対して、フランス当局が元大統領の飛行機撃墜は「(現大統領の)カガメの側近が行った」と断定し、両国関係が断絶していたため、フランス側がアガテの逮捕を拒否していたためです。 それが、一転して今回の逮捕となった背景には、先月25日、サルコジ大統領がルワンダを訪問し、「フランスを含め国際社会が大虐殺を防止できなかった」ことを認め、両国関係が改善されることになったという事情があります。 いずれにせよ、今後、国連のルワンダ国際犯罪法廷で大虐殺発生の経緯などが明らかになるものと思われますが、その成り行きが注目されるところです。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 総項目数552 総ページ数2256 戦後記念切手の“読む事典”(全7巻) ついに完結! 『昭和終焉の時代』 日本郵趣出版 2700円(税込) 2001年のシリーズ第1巻『濫造濫発の時代』から9年。<解説・戦後記念切手>の最終巻となる第7巻は、1985年の「放送大学開学」から1988年の「世界人権宣言40周年年」まで、NTT発足や国鉄の分割民営化、青函トンネルならびに瀬戸大橋の開通など、昭和末期の重大な出来事にまつわる記念切手を含め、昭和最後の4年間の全記念・特殊切手を詳細に解説。さらに、巻末には、シリーズ全7巻で掲載の全記念特殊切手の発行データも採録。 全国書店・インターネット書店(amazon、bk1、JBOOK、livedoor BOOKS、7&Y、紀伊国屋書店BookWeb、ゲオEショップ、楽天ブックスなど)で好評発売中! |
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