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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 南ア、暴動続く2州に兵士2万5000人追加配備へ
2021-07-16 Fri 01:37
 ズマ前大統領収監への抗議に端を発した略奪や放火、暴行が拡大し、14日(現地時間)までに、少なくとも72人が死亡し、1200人が逮捕される事態になっている南アフリカで、マピサヌカクラ国防相は、同日、特に治安の悪化が深刻なクワズールー・ナタール州(ズマ前大統領の地元)とハウテン州(州都はヨハネスブルク)の2州に対し、兵士最大2万5000人を展開し、配備数を10倍にする計画を明らかにしました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      トランスヴァ―ル野戦局(ダンディー)

 これは、(第2次)ボーア戦争中の1899年12月6日、トランスヴァ―ル占領下の英領ナタール植民地(現在のクワズールー・ナタール州の前身)のダンディーから、トランスヴァ―ルのハイデルベルク(現在は南アのハウテン州)宛に差し出された郵便物で、占領軍の持ち込んだトランスヴァ―ル切手が貼られているのがミソです。

  1886年、ヨハネスブルク近郊で金鉱が発見されると、ボーア人(オランダ系移民)の支配下にあったトランスヴァ―ル共和国の領域(現在の南ア北東部に相当)には金鉱を求めて多くの人々が集まるゴールドラッシュが到来しました。

 これを受けて、現地の英国人企業家を代表するセシル=ローズは、ケープ植民地の首相に就任するとともに、英国南アフリカ会社(BSAC)を設立。1890年、南アフリカ会社は遠征を開始し1894年までに南東アフリカ地域の広大な土地を支配下に収め、“ローデシア”と命名しました。

 このローデシアを拠点に、ローズはトランスヴァール共和国への侵攻を企てたものの失敗し、1896年に失脚しましたが、英本国政府はローズの植民地拡大策を継承し、ボーア人のトランスヴァ―ル共和国とオレンジ自由国を挑発。両国に対して、在留英国人に選挙権を与えることを要求するとともに、両国内の同胞が“奴隷状態”に置かれていると宣伝して、国民の開戦熱を煽り、1899年10月、両国に対する侵略戦争を開始しました。

 開戦当初の戦況は、地元のボーア軍が圧倒的に優位で、ボーア軍は国境を越えて英領ケープ植民地や同ナタール植民地の域内に進攻していくつかの都市を占領します。今回ご紹介のカバーの差出地、ダンディーは、ダーバンの北北西約 200kmの地点に位置しており、石炭、鉄鉱石採掘の中心地であったことから、当時は激戦地となり、一時はボーア軍が占領していました。

 しかし、1900年2月、英本国からの増援部隊が到着。2月18日から27日にかけてのパールデベルグの戦いで英軍がボーア軍を破ったことで戦況は逆転し、3月13日にはオレンジ自由国の首都ブルームフォンテーンが、6月5日にはトランスヴァール共和国の首都プレトリアが陥落します。さらに、イギリス軍は、6月11日から12日にかけて、プレトリア近郊のダイアモンド・ヒルでボーア軍の残党を掃討し、正規軍同士の戦いは事実上終結しました。

 しかし、その後もボーア人はゲリラ戦術で激しく抵抗。大苦戦を余儀なくされた英国は、ボーア人ゲリラに対する食糧補給を断つべく、ボーア人の婦女子を強制収容所に隔離するなど、なりふり構わぬ戦術を展開しました。ちなみに、後にヒトラー政権はユダヤ人の収容所に“強制収容所”との名前を付けていますが、これは、ボーア戦争時の英国の先例に倣ったものと言われています。

 なお、第2次ボ-ア戦争に始まる“強制収容所”の歴史については、拙著『アウシュヴィッツの手紙 改訂増補版』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。
 

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