2021-06-27 Sun 00:12
日本の貨幣単位として“圓(円)”を正式に採用した新貨条例が1871年6月27日(明治4年5月10日)に制定されて、ちょうど150年になりました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、明治5年2月に発行された龍銭切手の1銭切手です。 明治4年3月1日(1871年4月20日)の郵便創業時の貨幣は、金貨と秤量貨幣(貴金属としての品位・量目を検査・計測して用いる貨幣)の銀、それに、銭(銅銭)の3種類が流通しており、金貨と銀の交換レートは、公定相場では、金1両(小判1枚)=銀60匁(224.4g)=銭4000文で、金貨に関しては、補助貨幣として分と朱があり、1両=4分、1分=4朱という勘定になっていました。 このため、計算が複雑で、特に外国との貿易決済にはきわめて不便だっただけでなく、幕末維新期の混乱の中で貨幣価値が下落し、さらに、贋金・偽札も横行していたため、明治政府としては近代的統一通貨を定めることが急務となっていました。 そこで、明治4年5月10日、新貨条例が発せられ、①貨幣の基準単位を“両”から“圓(円)”に切り替える。新1円は旧1両とする、②補助単位として“銭”と“厘”を導入し、1円は100銭、1銭は=10厘で、10進法とする、③本位貨幣を金貨とし、1円金貨(含有金を純金23.15ゲレイン=1.5g)を原貨とする、ことなどが定められました。 これを受けて、明治4年12月より、旧貨幣(万延二分判・一分銀・寛永通寳・天保通寳など)と新銭貨との交換が、紙幣に関しては、明治5年4月1日より旧藩札・太政官札・民部省札と新紙幣(明治通宝)の交換が開始され、切手の額面も文位から銭位に変更したものが明治5年2月から発行されました。 新しく発行された切手の図案は、従来通り、2匹の龍が向かい合うなかに額面を配したものですが、額面表示の違いから、龍錢切手と呼んで、額面が文位の龍文切手と区別されています。なお、龍文切手が製造されていた時期には、すでに、新貨条例の準備が進められていたこともあり、龍文切手のデザインが、額面数字と周囲の龍および雷文の部分の2色刷になったのも、新通貨の導入後、額面の部分のみを差し替えることを想定していたものと考えられています。実際、龍文切手の印刷に使われた版の一部は龍錢切手にも流用されており、版が摩耗して印刷がクリアでないモノが多く残されています。 さて、きょうまで東京・錦糸町のすみだ産業会館で開催中の全日本切手展では、一般財団法人切手文化博物館(神戸市)のご協力により「龍切手(金井宏之コレクション)」を展示しておりますが、同コレクションには、龍文・龍銭あわせて8種の切手の完全シートが版や用紙違いを含めて多数展示されています。これだけのものが一堂に並ぶのはめったにない機会だと思いますので、ぜひ、会場にて実物をご覧いただけると幸いです。 また、この辺りの事情については、拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』でもご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。 ★★★ 全日本切手展のご案内 ★★★ 昨年(2020年)はコロナ禍で中止のやむなきに至った全日本切手展(全日展)ですが、本年は、6月25-27日(金-日) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で開催されます。詳細は切手展の公式HPをご覧ください。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内★ 6月28日(月) 05:00~ おはよう寺ちゃん 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。 7月3日(土)~ 武蔵野大学の生涯学習講座 7月3日・10日・17日・24日・31日、8月7日の6回、下記のふたつの講座でお話しします。 13:00~14:30 「日本の郵便150年の歴史 その1 ―“大日本帝国”時代の郵便事情―」 15:15~16:45 「東京五輪と切手ブームの時代 ―戦後昭和社会史の一断面―」 対面授業、オンラインのライブ配信、タイム・フリーのウェブ配信の3通りの形式での受講が可能です。お申し込みを含め、詳細については、こちらをクリックしてご覧ください。 ★ 『誰もが知りたいQアノンの正体』 好評発売中! ★ 1650円(本体1500円+税) 出版社からのコメント なぜQアノンにみんなハマったのか? ネットならではの引き寄せ構造と、現代格差社会の生んだ分かりやすい解釈。 これは米国だけじゃない! 人はみんなQを求めている!? (笑) * 編集スタッフの方が個人ブログで紹介してくれました。こちらをご覧ください。 ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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