2021-03-20 Sat 01:32
きょう(20日)は春分の日。日本ではお墓参りの日ですが、イランを中心にその文化的影響が及んでいる国や地域では、新年のお祭り・ノウルーズの日です。というわけで、今日はこんな切手を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1991年にソ連が発行した民俗行事シリーズの切手のうち、アゼルバイジャン(当時はソ連を構成する共和国の一つ)のノウルーズを取り上げた1枚で、春の象徴として、新年の食卓に飾る小麦の新芽のトレイを運ぶ女性が描かれています。 イスラム世界では預言者ムハンマドと信徒たちがメッカからメディナに移住し、イスラムの共同体を作った“ヒジュラ”のあった年を紀元とするヒジュラ暦が使われていますが、このヒジュラ暦は完全太陰暦で、かつての日本の旧暦のように閏月を入れて調整するということは行われていませんから、毎年、11日ずつ、太陽暦の日付とズレが生じます。 このため、イスラム世界の各地では、ヒジュラ暦とは別に、太陽暦に連動した農事暦が用いられることも多く、イランの場合は、イスラム以前から使われていたイラン暦として春分を元日とした太陽暦も用いられています。 この元日が、いわゆる“ノウルーズ”(直訳すると“新しい日”の意味)と呼ばれるもので、イランのほか、今回ご紹介のアゼルバイジャンを含む旧ソ連の中央アジア5共和国でも祝日になっています。また、クルド人がノウル-ズを祝う習慣があることから、トルコでは1500万人ともいわれるクルド人に対する宥和政策の一環としてノウルーズが祝日に指定されているほか、イラク国内のクルド人自治区(クルディスタン)でも、ノウルーズは祝日に指定されています。ただし、ノウルーズはイスラム圏全体に共通の行事ではなく、アラブ世界ではほとんど無視されているのが実情です。 ノウルーズのアラビア文字表記はنوروز ですが、これをペルシャ語とみた場合、そのラテン文字への転写は、nowruz とするのが一般的です。ただし、アゼルバイジャンの公用語であるアゼルバイジャン語では、novruz とするのがスタンダードです。さらに、アゼルバイジャン語では“祝日”を意味する“Bayram”と加えた“Novruz Bayram”が正式の祝日名になっており、切手状のキリル文字表記もそのようになっていますので、記事のタイトルもそれに従いました。 アゼルバイジャンでは、今年(2021年)はきょう(20日)から24日までがノウルーズの休暇期間に設定されていますが、昨年のナゴルノ・カラバフ紛争でアルメニアに勝利して最初の新年だけに、現地では例年以上に祝賀ムードが盛り上がっているのではないかと思います。 なお、ナゴルノ・カラバフ紛争とその意義については、拙著『世界はいつでも不安定』でも1章を設けてご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。 * 昨日(19日)の文化放送「おはよう寺ちゃん 活動中」の僕の出番は、無事、終了いたしました。リスナーの皆様には、この場をお借りして御礼申し上げます。なお、番組改変に伴い、3月29日からは毎週月曜日の07:45~、レギュラーでの登場となります。引き続きよろしくお付き合いください。 ★★ 内藤陽介の最新刊 『世界はいつでも不安定』 ★★ 本体1400円+税 出版社からのコメント 教えて内藤先生。 地上波では絶対に伝えられない国際情勢の事実をユーモアを交えて解説! チャンネルくらら人気番組「内藤陽介の世界を読む」が完全書籍化! 版元特設サイトはこちら。また、ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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