fc2ブログ
内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
<!-【↓2カラムテーブルここから↓】-->
 李承晩誕生日
2020-03-26 Thu 00:32
 きょう(26日)は、韓国の初代大統領・李承晩(1875年3月26日生)の誕生日です。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      李承晩80歳誕生日

 これは、1955年に韓国が発行した“李承晩大統領閣下第80回誕辰紀念”の切手です。ちなみに、“誕辰”は、目上の者や貴人の“誕生”を意味する語です。

 1955年の時点で、韓国の憲法では大統領の任期は2期までとされており、3選は禁止されていました。このため、1952年に再選を果たした李承晩の任期は1956年まででしたが、1953年の朝鮮戦争休戦を経て、戦後復興に向けて米国からの経済支援がもたらされるようになると、李承晩は終身大統領を目指して憲法改正に着手します。

 憲法を改正するためには国会議員の三分の二以上の賛成票が必要とされていました。当時の国会の定員は203議席でしたから、単純に計算すれば、その3分の2は135.3人です。こういう場合、通常の感覚であれば、136人をもって3分の2以上ということになるはずです。

 このため、1954年秋の韓国国会では、136票をめぐって与野党の激しい攻防が繰り広げられ、11月29日の採決では、李承晩派の提出した憲法改正案は、賛成135、反対60となり、改正案はいったん否決されました。

 ところが、李政権は、定員数203の3分の2は135.3人なので、四捨五入すれば135票だと強弁。いったんは宣言まで出された改憲案を、強引に可決されたと主張して公布してしまいます。

 これが悪名高い“四捨五入改憲”です。

 こうした李の独善的な姿勢は、当然のことながら、内外の強い批判を招きましたが、李政権は強権を持って反対派を押さえ込み、1956年5月の大統領選挙での3選へ向けての活動を公然と開始しました。

 今回ご紹介の切手は、その一環として、1955年3月26日、李承晩に対する個人崇拝を強調すべく、彼の誕生日に合わせて発行されたものです。

 切手は、上左・右角に“奉祝”を意味するハングルが、下左・右の角に“壽”の漢字が入っており、鳳凰の下、李の肖像が取り上げられています。

 朝鮮王朝時代から、鳳凰は君主の象徴の一つとして用いられ、大韓民国の成立後も国家や大統領の象徴として使われてきました。1967年に正式に制定された現在の大統領標章も、韓国の国花・ムクゲを中心に向かい合った鳳凰を描くデザインです。

 鳳凰は鳳(オス)と凰(メス)に分けられ、雌雄一対で、陰陽の調和と共生の意味を持つものとされてきたため、伝統的な文様では、鳳の尾に花などを飾り、凰より華麗に表現したりするなど、鳳と凰の形を変えるのが本来の在り方ですが、この切手に描かれている二羽は同じ形のようです。

 ちなみに、北朝鮮で金日成の誕生日が、国家的規模で祝われるようになったのは、中国派・ソ連派の粛清を通じて彼が独裁的権力を掌握した1960年代以降のことで、彼の誕生日を祝う最初の記念切手は、1962年に発行された“金日成元帥誕生50周年紀念”です。なお、北朝鮮は、相手が金日成であっても、“誕辰”ではなく、一般人を対象にした場合と同じ“誕生”の語を使っています。

 このように、1955年の時点では、金日成よりも李承晩のほうが個人崇拝・独裁志向が強かったという点は注目しておいてよいでしょう。

 なお、朝鮮戦争休戦後の李承晩政権とその時代については、拙著『日韓基本条約』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。


★ 文化放送「おはよう寺ちゃん 活動中」 出演します!★

 3月27日(金)05:00~  文化放送の「おはよう寺ちゃん 活動中」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時のスタートですが、僕の出番は6時台になります。皆様、よろしくお願いします。


★★ イベント・講座等のご案内 ★★

 今後の各種イベント・講座等のご案内です。詳細については、イベント名・講座名をクリックしてご覧ください。

・よみうりカルチャー 荻窪
 宗教と国際政治
 毎月第1火曜日 15:30~17:00
 3/31、4/7、5/5、6/2、7/7、8/4、9/1(1回のみのお試し受講も可)

★★  内藤陽介の最新刊 『日韓基本条約』 ★★

      日韓基本条約・表紙 本体2000円+税

 出版社からのコメント
 混迷する日韓関係、その原点をあらためて読み直す!
 丁寧に読むといろいろ々発見があります。

 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。

別窓 | 韓国:李承晩時代 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 世界切手展(WSC)< INDONESIA 2020>延期 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  奴隷及び大西洋間奴隷貿易犠牲者追悼国際デー>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
<!-【↑2カラムテーブルここまで↑】-->
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/