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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 豪、ソロモン諸島に188億円支援 
2019-06-04 Tue 03:15
 オーストラリアのモリソン首相は、きのう(3日)、訪問先の南太平洋のソロモン諸島でソガバレ首相と会談し、「太平洋島嶼国の平和的な独立と主権のための支援」を表明。今後10年間で2億5000万豪ドル(約188億円)の経済支援やソロモン諸島首相府の建築補助などを約束しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ソロモン諸島・郵便史

 これは、1970年、英領時代のソロモン諸島が発行した“(ガダルカナル島ホニアラの)中央郵便局新庁舎完成”の記念切手で、ソロモン諸島初期の郵便印と現地で使用されていたニュー・サウス・ウェールズの切手が描かれています。

 1893年に英領となったソロモン諸島には、1896年に弁務官としてチャールズ・モリス・ウッドフォードがツラギに派遣されましたが、当初、この地域では近代郵便は実施されておらず、外部との通信は幸便に託され、オーストラリアに持ち込まれた後に、持ち込んだ人が差出人から預かったお金で切手を購入して投函するという形式が取られていました。
 
 このため、ウッドフォードはニューサウスウェールズ切手を持ち込んで欧米系の住民に販売。ニューサウスウェールズ切手を貼った郵便物はツラギに集められた後、一括してシドニー郵便局長宛に送られ、シドニーで消印された後宛先地に届けるという方式が採用されます。

 ウッドフォードは、ソロモン諸島独自の切手発行を目指して、1903年、フィジー駐在のイギリス太平洋地域の高等弁務官ヘンリー・ジャクソンに対して、ニュー・ヘブリデスギルバート&エリスの先例に倣い、フィジー切手に“Solomon Islands”と加刷した切手をソロモン諸島でも使用したいと申し出ましたが、却下されてしまいました。ただし、1906年になると、ツラギでのニューサウスウェールズ切手の販売は停止され(今回ご紹介の切手で、ニューサウスウェールズ切手の下に1896-1906の年号が入っているのはこのためです)、代わりに、切手の左側に描かれているような“BRITISH SOLOMON ISLANDS PAID”の印が使用されるようになります。この印が押された郵便物は、シドニー以遠の料金相当の小切手とともに一括してシドニーに送られ、シドニーでニューサウスウェールズ切手を貼り、宛先地へ届けられるようになりました。

 こうした経緯を経て、翌1907年2月、ウッドフォードはシドニーのW.E.スミス社に切手の製造を委託し、地元のカヌーを描くソロモン諸島最初の切手が発行されています。

 ところで、ソロモン諸島は、1978年の独立後、1983年に中華民国(以下、台湾)と国交を樹立。台湾が外交関係を有する太平洋の国6カ国のうち、同国は面積(2万8450平方キロ)、人口(約60万人)ともに最大の国となってきました。

 ところが、近年、中国が台湾を外交的に追い詰めるべく、ソロモン諸島への進出を急速に拡大。この結果、中国はソロモン諸島の輸出額の6割超を占め、貿易相手国として第1位となりました。こうした背景の下、台湾と断交して中国との国交樹立を求める勢力も伸長し、4月に発足した現在の連立政権の与党議員中にも、半年以内に中国と国交を樹立しなければ不信任案を提出すると圧力をかけている者もあるほどで、ソロモン諸島が外交関係を台湾から中国に切り替えれば、地域でドミノ現象が起きることが懸念されています。

 このため、歴史的に太平洋島嶼国を“縄張り”としてきたオーストラリアは近年の中国の動きに対して敏感になっており、2017年、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)がソロモン諸島に高速インターネットの敷設を提案した際は、直ちに対抗策を提案。1億3700万豪ドル(約103億円)を投じ、パプアニューギニアを含む海底インターネットケーブルを建設しました。今回の経済支援も、こうした過去の経緯を踏まえてのことです。

 さて、ソロモン諸島といえば、日本人にとっては先の大戦中のガダルカナルの戦いのイメージが強いのですが、1568年にスペイン人が上陸して以来の歴史をひも解いてみると、いろいろと興味深いエピソードがあります。いずれそれらをまとめて、いままでとはちょっと違った視点から、複合的に“ガダルカナル”の過去と現在を考える物語を書いてみたいと思っているのですが…。


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