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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 太陽節
2019-04-15 Mon 01:52
 きょう(15日)は、1912年4月15日に金日成が生まれた(とされる)ことにちなんで、北朝鮮では“太陽節”の祝日です。というわけで、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      キューバ・北朝鮮国交50年

 これは、2010年にキューバが発行した“キューバ=朝鮮民主主義人民共和国外交関係50周年”の記念切手で、金日成と並ぶフィデル・カストロの写真が取り上げられています。

 キューバと朝鮮半島の関係は、1921年5月25日、1905年に仁川からメキシコへ渡った朝鮮人移民の一部が砂糖労働者としてキューバ島へ渡ったのが最初です。その後、1948年に南北両政府が発足すると、当時の親米政権は韓国と国交を樹立しましたが、1959年の革命を経て、カストロ政権は1960年8月29日、北朝鮮と国交を樹立しています。今回ご紹介の切手は、ここから起算して50周年になるのを記念して発行されました。

 1960年10月、チェ・ゲバラを団長とするキューバ外交使節団が経済支援を求めて東側諸国を歴訪しましたが、その一環として、同年12月2日、中国との協定を調印した使節団は二手に分かれ、北朝鮮と北ヴェトナムに向かいました。このうち、団長のゲバラは北朝鮮に向かい、平壌で数千の群衆に歓呼のうちに迎えられています。

 ゲバラが行き先として北朝鮮を選んだのは、以前から、読書経験を通じて北朝鮮に興味を持っていたということに加えて、当時の北朝鮮当局が、朝鮮戦争からの復興が順調に進み、経済的に韓国を凌駕していると大々的に宣伝していたという事情もあったと思われます。
 
 12月2日に平壌入りした一行は、翌3日、金日成と会見。6日には協定を調印してモスクワに戻っていますが、その慌ただしい日程の中でも、ゲバラは「(北朝鮮の)都市には何もない」、「工業は破壊され、動物は死に、一軒の家も残っていない」、「北朝鮮は死でできている国だ」と、北朝鮮の印象を書き記しています。

 1962年10月のいわゆるミサイル危機は北朝鮮にも大きな衝撃を与え、同年末の朝鮮労働党中央委員会全員会議では「国防建設と経済建設の併進路線」が採択され、1961年から開始されていた7ヵ年計画を後退させても、国防力を増強することが決定されました。当時、北朝鮮当局は“併進”の建前の下、国防建設によって国民経済を犠牲にするわけではないと強調していましたが、実際には、経済建設を犠牲にして国防建設が優先されていきます。

 今回ご紹介の切手に取り上げられた写真は、1986年、カストロが平壌を訪問した際に撮影されたものです。カストロの証言によれば、当時、金日成は軍事援助として10万丁のAK-47をキューバに送っており、これに応えて、キューバはソウル五輪をボイコットし、北朝鮮が開催した第13回世界青年学生祭典に参加しています。

 また、近年では、2013年7月15日、北朝鮮の貨物船・清川江号が、キューバから北朝鮮へ向かう途中、違法薬物類を運んでいるという通報を受けたパナマ当局によって抑留され、船内を捜索した結果、25万袋のブラウン・シュガーの下にミサイル等が隠されていたことが明らかになったのは、記憶に新しいところです。これに対して、キューバは船内にあったのは北朝鮮へ修理のために送られた“旧式の武器”であると表明。たしかに、船内から発見された対空ミサイル統制装置2器、防空ミサイルの部品9本分、戦闘機MiG-212機のエンジン15基などは、いずれも20世紀半ばに製造されたソ連製のものでした。ただし、北朝鮮へのいかなる武器の持ち込みも持ち出しも国連決議に反していますから、2014年3月の国連安保理・北朝鮮制裁委員会の年次報告書では、大量の武器を搭載した北朝鮮船「清川江号」について「(安保理決議が初採択された)2006年以降、最大の武器取引だった」と指摘した上で安保理決議違反と断定しています。

 もっとも、その後も北朝鮮とキューバとの友好関係は維持されており、2016年1月には両国間でバーター協定が結ばれただけでなく、朝鮮労働党キューバ共産党の間で関係を強化するための会談が行われました。また、同年11月25日、フィデル・カストロが亡くなった際には、北朝鮮は3日間の喪に服すことを宣言し、金正日が自ら平壌のキューバ大使館を弔問に訪れています。こうしたこともあって、2018年、ラウル・カストロに代わって国家評議会議長‎に就任したミゲル・ディアス=カネルも、就任早々の外遊で北朝鮮を訪問しています。

 なお、キューバと北朝鮮の歴史的な関係については、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひお手にとってご覧いただけると幸いです。


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 4月20日(土) 14:00から、東京・水道橋の日本大学法学部三崎町キャンパス4号館地下1階 第4会議室A(地図はこちらをご覧ください)にて開催のメディア史研究会月例会にて、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』の内容を中心に、「メディアとしての“英雄的ゲリラ”」と題してお話しします。

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 盟友フィデル・カストロのバティスタ政権下での登場の背景から、“エルネスト時代”の運命的な出会い、モーターサイクル・ダイアリーズの旅、カストロとの劇的な邂逅、キューバ革命の詳細と広島訪問を含めたゲバラの外遊、国連での伝説的な演説、最期までを郵便資料でたどる。冷戦期、世界各国でのゲバラ関連郵便資料を駆使することで、今まで知られて来なかったゲバラの全貌を明らかする。

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