2019-04-16 Tue 03:03
フィンランドで、今月14日、任期満了に伴うフィンランド議会(一院制、定数200)選挙の投開票が行われ、社会民主党が得票率17.7%(割り当て議席数は40)で第1党になり、2003年以来、16年ぶりに社会民主党首班の左派政権が誕生する見込みです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2006年にフィンランドが発行した“議会100年”の記念切手です。 ナポレオン戦争中の1809年、ロシア帝国はフィンランドを獲得。ロシア皇帝がフィンランド大公を兼ねる同君連合として、フィンランド大公国が創設されました。これに対して、欧州諸国の1848年革命以降、フィンランド人の間でも、絶対主義に固執するロシア政府に対して独立を求めるナショナリズムが高揚し、1863年からはフィンランド議会が定期的に招集されるようになります。 1899年、ロシア皇帝ニコライ2世は二月詔書を発してフィンランド人の自治を剥奪し、フィンランド語を禁止してロシア語を公用語として強要する強攻策を取ります。このことは、フィンランド人の強い反発を招き、日露戦争のさなかの1904年6月17日、民族主義者オイゲン・シャウマンによるフィンランド総督ニコライ・ボブリコフの暗殺事件が発生。1905年には第一次ロシア革命が起こったこともあり、ニコライ2世は、フィンランドの自治権廃止を撤回せざるを得なくなりました。 この結果、一院制議会であるエドゥスクンタが成立し、1906年、世界で初めて、女性に参政権と被選挙権を同時に認めた普通選挙で議員が選出されました。今回ご紹介の切手は、ここから起算して100周年になるのを記念して発行されたものです。 1917年のロシア2月革命を受けて、ロシア皇帝兼フィンランド大公のニコライ2世が同年3月15日に退位すると、フィンランド側はロシアとの同君連合は法的基礎を失ったとして、ロシア臨時政府とも交渉。 フィンランド議会は「権力法(ヴァルタラキ)」を成立させ、フィンランド議会が外交と軍事を除く立法権を握ることを規定しましたが、ロシア臨時政府はこれを認めず、フィンランド議会を解散してしまいます。 しかし、ロシア10月革命後の1917年11月15日、ボリシェヴィキはロシア人権宣言で「全ロシア人民」の完全分離を含む民族自決権を認めたため、同日、フィンランド議会は一時的にフィンランドの主権を受け取ることを宣言。同月27日に発足したペール・エヴィンド・スヴィンフッヴド内閣は、12月4日、独立宣言案と共和制の制度案を議会に提出し、12月6日、議会がこれを承認。この日がフィンランドの独立記念日となりました。 現行のフィンランド議会は一院制で、任期は4年(解散有)。議員は、200議席を15の選挙区に分け、比例代表制選挙で選出され、現役で兵役義務のある軍人と、高位の司法官を除いて、18歳以上のすべての国民に被選挙権があります。 1906年の議会創設以来、首相は国民連合党、中央党、社会民主党から選ばれていましたが、1916年に社会民主党が103議席を取ったのを唯一の例外として、いずれの党も現在までに単独過半数を得たことはありません。今回の選挙結果でも、第1党の社会民主党についで、反移民を掲げる右派のフィン人党が得票率17.5%(同39)で改選前の17議席から大きく躍進して第2党に、連立与党を組んでいた国民連合と中央党の得票率はそれぞ17%と13.8%となっており、社会民主党を筆頭とする左派勢力3党は76議席を獲得したものの過半数には足りないため、今後、中道政党を取り込むための連立工作が進められることになります。 ★★★ メディア史研究会で発表します! ★★★ 4月20日(土) 14:00から、東京・水道橋の日本大学法学部三崎町キャンパス4号館地下1階 第4会議室A(地図はこちらをご覧ください)にて開催のメディア史研究会月例会にて、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』の内容を中心に、「メディアとしての“英雄的ゲリラ”」と題してお話しします。 なお、メディア史研究会はまったく自由な研究会で、会員以外の方でも気楽にご参加いただけますので(もちろん、無料)、よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。 ★★ 内藤陽介の最新刊 『チェ・ゲバラとキューバ革命』 好評発売中!★★ 本体3900円+税 【出版元より】 盟友フィデル・カストロのバティスタ政権下での登場の背景から、“エルネスト時代”の運命的な出会い、モーターサイクル・ダイアリーズの旅、カストロとの劇的な邂逅、キューバ革命の詳細と広島訪問を含めたゲバラの外遊、国連での伝説的な演説、最期までを郵便資料でたどる。冷戦期、世界各国でのゲバラ関連郵便資料を駆使することで、今まで知られて来なかったゲバラの全貌を明らかする。 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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