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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 メキシコ大統領、謝罪を要求
2019-03-27 Wed 03:09
 メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール大統領は、25日(現地時間)に公開された演説の動画で、スペインによるアメリカ大陸支配に言及し、スペイン国王フェリペ6世と教皇フランシスコに対して、アステカ王国(現メキシコ)征服及びその後の先住民に対する人権侵害について謝罪するよう求めました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      メキシコ・17世紀の古地図

 これは、1979年にメキシコで発行された“ヌエバ・エスパーニャにおける郵便勅許400年”の切手シートで、切手部分にはかつての郵便船が、シートの余白には17世紀のヌエバ・エスパーニャ地図が地図が取り上げられています。

 1519年、メキシコに上陸したスペイン人のエルナン・コルテスら征服者たちは、アステカの内紛や、アステカの神話を悪用して大虐殺を繰り返した末、王都テノチティトランを破壊。8月13日に捕えられた皇帝クアウテモックは、コルテスの短刀を指さして自分を殺すよう求めたものの、コルテスは彼を殺さず、黄金の場所をつきとめるため拷問にかけたうえ、1525年2月28日、反乱を企てたとして絞首刑にしました。こうしてアステカ帝国を滅したスペインは、この地にヌエバ・エスパーニャ副王領を創設します。

 ヌエバ・エスパーニャは“新スペイン”を意味するスペイン語で、もともとは、パナマ地峡以北の新大陸のスペイン領全てを指す概念で、最盛期には、今回ご紹介の切手シートの地図に示すように、現在のメキシコの領域に加えて米国南西部(現在のカリフォルニア、ネヴァダ、ユタ、コロラド、ワイオミング、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサスの各州)とフロリダ半島、カリブ海諸島も含んでいました。

 ヌエバ・エスパーニャの郵便制度は、当初、アステカ時代の駅伝制度がそのまま継承されていましたが、1579年以降は、ヌエバ・エスパーニャ副王の直轄下で、メキシコ市=ベラクルーズ間を中心に郵便が行われるようになります。その後、1742年から本国・マドリードの郵便長官によるヌエバ・エスパーニャの郵便改革が行われ、1745年以降、メキシコ市=オアハカ間で週1回の定期便が開始され、1748年にはグアテマラまで月1回の定期便が開始されています。そして、1765年、スペイン王室はヌエバ・エスパーニャの郵政権を接収し、同地の郵便は事実上“国有化”されました。

 その後、多少の領土縮小はあったものの、スペインはヌエバ・エスパーニャを300年にわたり支配していましたが、18世紀後半には米国独立戦争フランス革命ナポレオン戦争に影響され、土着のクリオーリョたちの間に独立の気運が高揚。1809-10年、キト、ラパス、サンティアゴ、カラカス、ボゴタ、ブエノスアイレスなど南米各地でスペインからの独立戦争が始まると、1810年9月15日には、メキシコでもミゲル・イダルゴ神父らにより、スペイン打倒を叫ぶメキシコ独立革命が勃発。スペイン本国で自由派が政権を握ると、1821年9月15日、保守派クリオーリョを代表した独立の指導者アグスティン・デ・イトゥルビデがメキシコシティに入城し、メキシコの独立が宣言されました。

 さて、今回問題となった演説の動画は、古代マヤ文明のコマルカルコ遺跡で撮影されたもので、大統領は「かつて大虐殺と抑圧があった。剣と十字架による侵略が行われ、彼らは先住民たちの神殿の上に教会を築いた」と述べ、「和解の時が訪れた」とした上で、その前にまずスペイン側からの謝罪が必要だと主張しました。

 これに対し、スペイン政府は直ちに声明を発表し、「我が国の国王に送付した書簡の内容を、メキシコ大統領が公にしたことに深い遺憾を覚える」と反発。書簡の内容は断固として受け入れられないと表明し、「500年前のスペイン人による現在のメキシコ領土進出を、現代の尺度で判断することは不可能だ」としたうえで、「これまで我々は常に兄弟国として、共有する過去について怒りを抱かず建設的な視点で向き合ってきた」、「我々は歴史を共に歩み、素晴らしい影響を与え合った自由な民族なのだ」などと反論しているそうです。
 

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