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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ナゴルノ・カラバフで紛争再燃
2016-04-03 Sun 10:02
 アゼルバイジャンとアルメニアの係争地、ナゴルノ・カラバフで、きのう(2日)未明、両国軍の戦闘が再発し、アゼルバイジャン政府は自国の兵士12人が死亡したと発表、一方、アルメニア側は18人が死亡したと発表。両国は、相手が攻撃を始めたとして互いに非難しています。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ナゴルノ・カラバフ自治州加刷

 これは、ソ連崩壊後の1991年、ナゴルノ・カラバフ自治州で暫定的に発行された加刷切手です。
 
 アゼルバイジャン西部のナゴルノ・カラバフの地域は、第一次大戦まで帝政ロシアの支配下に置かれていました。

 1917年のロシア革命を経て、1918年5月、アルメニアとアゼルバイジャンが相次いで独立を宣言します。その際、ムスリム国家アゼルバイジャンの領域内にありながら、キリスト教徒のアルメニア人が多数居住している“飛び地”のナゴルノ・カラバフをめぐりアルメニアとアゼルバイジャンは激しく対立しましたが、1920年には赤軍の進駐により両国はいずれも崩壊。翌1921年、ロシア革命政府はナゴルノ・カラバフを“自治州”としてアゼルバイジャンに帰属させました。

 1922年末に成立したソ連においては、アゼルバイジャンとアルメニアはともに連邦を構成する社会主義共和国となったため、ナゴルノ・カラバフ問題もとりあえず棚上げとなります。しかし、1985年以降、ゴルバチョフの下でソ連のペレストロイカ改革が進むと、ナゴルノ・カラバフのアルメニア人は自治州のアルメニアへの編入を請願。ゴルバチョフはこれを拒否しましたが、1988年2月、自治州政府は公式にアルメニアへの移管を要請。さらに、2月22日、ナゴルノ・カラバフのアスケランで起きたアゼルバイジャン人青年の殺害事件を機に、対立は一挙に暴力化します。6月15日には、アルメニア共和国最高会議がナゴルノ・カラバフ自治州の自国への移管を決議すると、翌16日にはアゼルバイジャン共和国最高会議がこれを否認する決議を採択し、ソ連の枠内での内戦に発展しました。

 1991年には、ソ連が崩壊し、アルメニアとアゼルバイジャンは再独立。これに伴い、ナゴルノ・カラバフ紛争は内戦から国際紛争になり、1992年1月6日には“ナゴルノ・カラバフ共和国”の独立が宣言されました。今回ご紹介の切手は、こうした状況の中で、ソ連時代の切手に、ナゴルノ・カラバフの多数派住民の言語であるアルメニア語での暫定的な加刷を施して発行されたものです。

 さて、国際社会はナゴルノ・カラバフ共和国を承認しませんでしたが、戦況はアルメニア有利に展開され、1994年5月12日には停戦が成立。ナゴルノ・カラバフ共和国は事実上、アゼルバイジャンの統制が及ばない“独立国”となりました。さらに、アルメニア側は、ナゴルノ・カラバフとアルメニア本国を連結する形で旧自治州の領域を越えてアゼルバイジャンの領土を占領し、実行支配を続けており、停戦合意後も、小規模な衝突が散発的に続いていました。

 南カフカースの親露国アルメニアと、カスピ海沿岸の産油国でトルコ(NATO加盟国)との友好関係にあるアゼルバイジャンの対立は、最悪の場合、ロシアとNATO との関係に重要な影響が生じる可能性も否定できません。今後も、情勢をフォローしつつ、このブログでも、折に触れて、関連のマテリアルをご紹介していきたいと思います。


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