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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 イランとサウジ、国交断絶
2016-01-05 Tue 10:51
 おととい(3日)、在イランのサウジアラビア大使館が暴徒の襲撃を受けたことを主な理由として、サウジアラビアがイランとの外交関係を断絶しました。さらに、きのう(4日)になって、サウジ外務省は、イランへの民間機の発着や国民のイラン渡航を禁止し、経済関係も断絶する考えを明らかにしました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      イラン・サウジ非難

 これは、1987年7月、イラン人のメッカ巡礼団とサウジの治安部隊が衝突し、イラン人巡礼者に死傷者が出たことを非難するイラン切手です。

 1979年のイラン・イスラム革命後、周辺アラブ諸国はイランによる“革命の輸出”を警戒し、ペルシャ湾を挟んで向かい合うサウジとイランの関係は緊張。サウジは革命の防波堤としてイランと戦うイラクを支援していました。1987年のメッカでの衝突事件は、こうした背景の下で起きたもので、事件後、イランは、イスラムの聖地を信徒の血で汚した不正なるイスラム体制としてサウジアラビアを激しく非難。これに対して、サウジ側は衝突事件で負傷した治安部隊の隊員がその後亡くなったことを理由に、イランとの国交を断絶しました。

 湾岸戦争終結後の1991年、両国はオマーンの仲介で国交を回復しましたが、その後も、たとえば、アフガニスタンでの内戦ではイランが反タリバンの北部同盟を、サウジがパキスタンとともにタリバンを支援するなど、各地の紛争では、しばしば、イランの勢力拡大を嫌うサウジがイランの支援を受けた勢力の敵対勢力を支援し、結果的に、両者の代理戦争ともいうべき状況が現出してきました。

 今回の国交断絶は、今月2日、サウジアラビア東部州出身で、反政府運動の精神的な支柱となっていたシーア派指導者ニムル・バーキル・ニムルを含む47人の死刑が執行されたことをサウジ外務省が発表したことから、翌3日、ニムルの死刑執行に抗議する市民が暴徒化し、テヘランのサウジ大使館、マシュハドのサウジ領事館を襲撃したことが直接の理由となっています。

 ニムルは、2011年に東部州で発生した抗議活動を扇動した容疑で2012年に拘束され、2014年に死刑判決を受けていましたが、この判決に関しては、シーア派国家としてのイランがサウジを非難していたほか、欧米諸国からも地域の宗派対立を煽るものとして懸念する声があがっていました。ただし、ニムルと同時に処刑された47人の大半はシーア派ではなく、スンナ派の過激派で、サウジ政府としても(ニムルがそれに該当するかどうかはともかく)テロリストに対しては厳しい姿勢で臨まなければならないという事情があるわけで、結果的にイランと対立することは承知しつつも、イランを挑発することが処刑の主たる目的ではないというのが実情でしょう。

 また、イラン政府も、サウジの外交施設を襲撃した暴徒を強制的に排除し、彼らを厳しく非難していますが、これは、過去のイラン政府が革命直後の学生による米国大使館占拠事件を称賛し、2011年の英国大使館襲撃事件では暴徒に対して寛容な態度をとっていたことと比べると、はるかにまともな対応です。ただ、大使館の襲撃というのは国交断絶の理由としては十分ですから、テロリストの処刑という国内問題への“内政干渉”を拒絶する意思を示すために、サウジとしては強硬姿勢を取らざるを得なかったという面があることも見逃せません。

 今回のサウジの対イラン断交を受けて、バーレーンとスーダンもイランとの断交を宣言し、アラブ首長国連邦(UAE)も駐イラン大使の召還など“外交関係の格下げ”を表明するなど、周辺諸国にも波紋は広がっていますが、現実の問題としては、おそらく、1988-91年の国交断絶の時と同じように、両国関係は“冷戦”状態がしばらく続くものの、すぐに直接的な衝突にいたるという可能性は低いのではないかと思います。それよりも、一連の騒動のそもそもの発端となったサウジ・東部州では、3日にも警察とデモ隊の衝突で犠牲者が出るなど緊張が高まっており、そちらの方がひょっとすると大事になるかもしれません。

 いずれにせよ、この問題はしばらくニュースを賑わすことになるでしょうから、このブログでも、折に触れて関連のマテリアルなどをご紹介していければ…と考えております。


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