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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 テヘランの英国大使館襲撃
2011-11-30 Wed 22:12
 イランの首都テヘランの英国大使館に、きのう(29日)、体制派の民兵組織「バシジ」に所属する大学生ら300人以上が集まり、イランに経済制裁を強める英国政府に激しく抗議。警官隊の警備を無視した群衆の一部が大使館内に乱入し、英国国旗を焼いたり、車両に放火、公文書を盗んで破り捨てる事件が発生しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      イラン・アメリカ大使館占拠(1988)
 
 これは、1988年にイランが発行した米国大使館占拠9周年の記念切手で、大使館前の門扉を背景に、振り上げられた拳と崩れ落ちるハクトウワシ(米国の国鳥)のシルエットが描かれています。イランでは、一時期、米国大使館占拠事件の周年記念切手を毎年発行していましたが、これもその1枚です。

 1979年2月のイスラム革命は、開発独裁政策を進めてきた親米パーレビ体制に対する不満が爆発したものでした。このため、パーレビ王制崩壊後、国民の矛先は旧王制を支え続けてきた米国へも向かうことになります。そして、亡命中の国王が治療を名目に米国に入ったことで、急進革命派の反米感情は沸騰。1979年11月、国王の身柄引渡しを求めて急進派学生らがテヘランのアメリカ大使館を占拠する事件が発生しました。

 これが、いわゆるテヘランの米国大使館占拠事件で、これを機に、イランと米国は国交を断絶。現在にいたるまでの両国の険悪な関係が決定的になりました。

 ちなみに、今回の事件が起きたテヘランの英国大使館は、通りを挟んで旧米国大使館と反対側にありますので、この切手に描かれている構図は英国大使館側から見たものではないかと思います。もっとも、当時、通りの反対側の米国大使館での騒擾事件を見ていた英国大使館員のうち、自分たちのところでも同じようなことが起こると予想していた人がどれほどいたかはわかりませんが…。

 なお、イランのプロパガンダ切手については、拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でもいくつかご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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