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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 中共の海瑞
2015-11-10 Tue 19:04
 中国現代史最大の惨劇、プロレタリアート文化大革命(以下、文革)の発端となった姚文元の論文「新編歴史劇『海瑞罷官』を評す」が、1965年11月10日上海の日刊紙『文匯報』に掲載されてから、今日(10日)でちょうど50年です。というわけで、この切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      彭徳懐

 これは、1988年に発行された彭徳懐生誕90年の記念切手です。

 彭徳懐は、1898年、湖南省湘潭で生まれました。当初、蒋介石の国民革命に参加し、国民革命軍の営長・師長をつとめていたものの、1927年の上海クーデターを機に国民党に見切りをつけ、1928年、共産党に入党。国民党軍とたたかうことになります。そして、紅軍第五軍を率いて湘鄂贛地区を転戦し、井崗山で朱徳・毛沢東らの紅軍第四軍と合流しました。

 その後、彭は長征にも参加。朱徳の下で八路軍副総司令をつとめ、華北抗日根拠地を築いたほか、国共内戦では、第一野戦軍司令員・西北辺区副司令などをつとめました。

 1949年、中華人民共和国が成立すると、中国共産党中央西北局第一書記、人民解放軍副総司令に任ぜられ、元帥のひとりとなりました。そして、朝鮮戦争の際には、中国人民志願軍の総司令となり、米軍を中心とする国連軍と戦いました。

 中国人民志願軍総司令としての彭は、当初こそ、人海戦術で米軍を打倒できると考えていたものの、犠牲者数が予想をはるかに上回ったため、後に陣地戦へと作戦を変更。1951年夏以降、中国側の犠牲者を減少させています。そして、朝鮮戦争の功績により、休戦後の1954年、彭は国防部長(国防大臣に相当)兼国務院副総理となりました。

 1958年に毛沢東は大躍進政策を発動しますが、これは惨憺たる失敗に終わります。その総括のため、1959年7-8月、廬山会議が開催されますが、会議を前に、故郷・湖南省の農村を視察した彭徳懐はその惨状を目の当たりにし、会議の期間中、毛沢東に対して私信の形式を取って政策転換を求めました。この結果、毛の逆鱗に触れた彭は国防部長と中央軍事委員会委員の地位を解任されますが、反面、劉少奇・鄧小平らの官僚グループにより、大躍進の失敗を修復するための調整政策が行われることになります。

 これに対して、調整政策に反発した毛沢東と林彪らは大衆を動員し、共産党の実権を握っていた劉少奇ら“実権派”の追い落としをはかろうとしました。

 その端緒となったのが、1965年11月10日、姚文元が上海の新聞『文匯報』に発表した論説「新編歴史劇『海瑞罷官』を評す」でした。

 この論説は、北京市副市長で歴史家の呉晗が執筆した戯曲『海瑞罷官』(明代の官僚、海瑞が嘉靖帝を諫める上訴をして罷免された事件を題材にした史劇)を、プロレタリア独裁と社会主義に反対する“毒草”として攻撃するもので、当初の政治的な意図は呉の上司にあたる北京市長の彭真を失脚に追い込むことにありました。しかし、1965年12月21日、毛が「嘉靖皇帝は海瑞を罷免した。59年、我々は彭徳懐を罷免した。彭徳懐も“海瑞”だ」と述べたことで、彭徳懐への批判と結び付けられ、後の文革の端緒となりました。

 なお、文革が始まると、彭は紅衛兵により、1966年中に隠棲先の成都から北京に連行され、1967年7月9日には批闘会と称するリンチで7度地面に叩きつけられ、肋骨を2本折られ下半身不随となります。その後、江青の医療服従専案の監督下に置かれ、1974年、弾圧の中で亡くなりましたが、1976年に文革派四人組が失脚すると、1978年11月には名誉回復が行われ、生誕90周年にあたる1988年、今回ご紹介の切手が発行されたというわけです。
      

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