2011-02-07 Mon 13:22
きょう(7日)は北方領土の日です。というわけで、この切手をもってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2002年にロシアが発行したサハリン州の切手で、彼らが主張するサハリン州の領域の地図が描かれています。同時に発行されたロシア各地を題材にした切手には地図は取り上げられていませんので、彼らとしても、サハリン州に関しては地図が重要だという認識をもっていることがうかがえます。 ロシアのサハリン州は、樺太(ロシア名サハリン)と千島列島(ロシア名クリル諸島)で構成されています。このうち、北樺太を除く南樺太と千島全島は、第二次大戦以前はわが国の領土として日本の支配がきちんと及んでいましたが、1945年8月、当時のソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄して侵攻し、以後、占拠を続けていることは周知のとおりです。 このうち、南千島に関しては、わが国固有の北方領土として日本政府としても不法占拠を続けるロシアに対して返還要求を行っていますが、北千島と南樺太に関しては、サンフランシスコ講和条約でわが国が領有権を放棄した後はロシアが条約を調印していないため、国際法上の帰属は未定というのが公式見解です。 ロシア側は、彼らが不法占拠している地域を自国の正式な領土であると主張し、その一環として今回ご紹介しているような切手を発行したわけで、我々としては、こうした切手を黙過すべきではありません。ただし、国家というものはありとあらゆるチャンネルを通じて、国益のための自己主張を行うのが本来の姿であるわけで、その意味では、彼らが彼らの主張(その内容がどれほどおかしなものであっても)を宣伝するために切手というメディアを使うのは、至極当然のことだといえます。 2002年といえば、韓国・盧武鉉政権の竹島切手が問題となる2年前のことですが、当時、この切手が問題となったという話は聞いたことがありません。こういうところできちんと抗議をしておかないと、「日本もこの切手を認めている、つまりは、我々の主張するサハリン州を認めているということではないか」と彼らに主張させる口実を与えることになってしまいます。 もちろん、確信犯的に北方領土切手を発行しているロシア当局が、日本からの抗議を受けて切手の発行を撤回することなどないでしょうが、それでも、言うべきことを主張せず、彼らの主張を黙認しているかのように受け止められるのは、国益という観点から絶対に避けなければなりません。 ところが、わが国の切手では、いままで北方4島すらまともに描かれたことがなく、昨年は、シート地の北海道の地図から択捉島を外して描いたものを発行し、発売中止になるという体たらくです。 このあたりの事情については、拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でもまとめてみましたが、ホント、情けない気持ちでいっぱいになりますな。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ マカオ紀行:世界遺産と歴史を歩く 彩流社(本体2850円+税) マカオはこんなに面白い! 30の世界遺産がひしめき合う街マカオ。 カジノ抜きでも楽しめる、マカオ歴史散歩の決定版! 歴史歩きの達人“郵便学者”内藤陽介がご案内。 全国書店・インターネット書店(amazon、bk1、boox store、coneco.net、DMM.com、HMV、JBOOK、livedoor BOOKS、Yahoo!ブックス、カラメル、紀伊国屋書店BookWeb、ゲオEショップ、ジュンク堂、セブンネットショッピング、丸善、楽天ブックスなど)で好評発売中! |
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