2008-10-29 Wed 14:57
(財)日本郵趣協会の機関誌『郵趣』2008年11月号ができあがりました。『郵趣』では、毎月、表紙に“名品”と評判の高い切手を取り上げていて、原則として僕が簡単な解説文をつけていますが、今月は、こんなモノを取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1933年3月1日に満洲国で発行された“建国1周年”の記念切手のうちの10分(1角)切手です。“建国1周年”の記念切手は4種セット(デザインは2種)で発行され、『郵趣』の表紙にもセットで載せているのですが、地図と国旗のデザインのモノは以前の記事でもご紹介しましたので、今回は旧国務院庁舎を取り上げたモノをご紹介することにします。 満洲国の国務院庁舎は、後に新国家の首都である新京の都市計画の一環として新築されますが、建国当初は、旧長春市公署の建物が接収され、使用されていました。この建物は、もともとは、清代にこの地域を管轄していた地方役所、道台衙門の建物で1908年の竣工です。満洲国の建国後は国務院のほか、参議府(執政・溥儀の諮問機関。日本の枢密院に相当)、外交部(日本の外務省に相当)、法制局などにも用いられ、国務院の新庁舎完成後は、一般に“旧国務院庁舎”と呼ばれていました。 切手に取り上げられているのは庁舎の玄関部分で、その両脇には、高粱と並ぶ満洲国の主要農産物である大豆が配されています。 ところで、今回ご紹介の切手では“建国一周年記念”と“記念”の表示が使われている点も見逃せません。 実は、“記念”という表記は日本式のものであって、中国語で同様の意味内容を伝える場合には“紀念”と表記するのが一般的です。これは、切手のデザインを担当したのが、日本人の吉田豊であったがゆえの結果なのでしょうが、そうしたところからも、満洲国の支配下で生活している人々は、彼らを統治している政府が日本人によって作られたものであることを結果的に見せつけられていたと解釈することは可能でしょう。 さて、今回の『郵趣』では、いよいよ今週末から開催の<JAPEX>を前に、満洲・東北切手展とブラジル切手展の2大特別展示の誌上予告特集となっています。このうち、満洲・東北切手展は、リニューアルされた旧水原コレクションをはじめ、日本国内はもとより、台湾・香港から満洲・東北地域に関する超一流のコレクションが一堂に会する滅多にない機会です。また、ブラジル切手展では、世界的な名品として名高い“牛の目”のコレクションをはじめ、こちらも見逃せない内容となっています。みなさまのお越しを心よりお待ちしております。 イベントのご案内 11月1日(土)-3日(月・祝) 全国切手展<JAPEX> ことしも、東京・池袋のサンシャインシティ文化会館と目白の切手の博物館の2ヶ所で開催します。今年の目玉は、何といっても“満洲・東北切手展”ですが、トーク関係での僕の出番は、以下のとおりです。 11月1日(土) 13:00 “満洲・東北切手展”特別シンポジウム(池袋会場) 16:00 特別対談「満洲における写真、絵葉書、郵趣」(池袋会場) 11月2日(日) 13:00 “戦後日本切手展”ギャラリー・トーク(目白会場) 15:00 中公新書ラクレ presents 『大統領になりそこなった男たち』刊行記念トーク(池袋会場) 11月3日(月・祝) 11:00 “戦後日本切手展”ギャラリー・トーク(目白会場) トークそのものの参加費は無料ですが、<JAPEX>への入場料として、両会場共通・3日間有効のチケット(500円)が必要となります。あしからずご了承ください。皆様のお越しを心よりお待ち申しております。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ アメリカ史に燦然と輝く偉大な「敗者たち」の物語 『大統領になりそこなった男たち』 中公新書ラクレ(本体定価760円+税) 出馬しなかった「合衆国生みの親」、リンカーンに敗れた男、第二次世界大戦の英雄、兄と同じく銃弾に倒れた男……。ひとりのアメリカ大統領が誕生するまでには、落選者の累々たる屍が築かれる。そのなかから、切手に描かれて、アメリカ史の教科書に載るほどの功績をあげた8人を選び、彼らの生涯を追った「偉大な敗者たち」の物語。本書は、敗者の側からみることで、もう一つのアメリカの姿を明らかにした、異色の歴史ノンフィクション。好評発売中! もう一度切手を集めてみたくなったら 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。 |
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