2018-07-30 Mon 03:35
きのう(29日)、カンボジア総選挙(下院、定数125)の投開票が行われ、与党・カンボジア人民党のソク・イーサン広報官は「投票数の80%を獲得した」と発表しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1993年にカンボジアが発行した“国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)”の切手のうち、UNTACによる武装解除を描いた1枚です。 1991年10月23日、カンボジア内戦を終結させるための「カンボジア紛争の包括的な政治解決に関する協定」(パリ和平協定)が調印されました。同協定にもとづき、国際連合事務総長の下、自由で公正な選挙で選ばれた議会が憲法を制定し政府を設立するまでの間、カンボジアの統治を担う機関として設立されたのがUNTACで、自衛隊にとっては初の国連PKOへの参加となりました。 すでに、1991年10月、国連はカンボジア先遣隊 (UNAMIC) を設立していましたが、UNTACの任務はこれを拡大し、選挙の組織・管理を初めとして、停戦の監視、治安の維持、武装勢力の武装解除、難民・避難民の帰還促進など、多岐に渡る業務を担当。1992年3月15日から現地に展開し、UNAMICはこれに改編・吸収されました。 その後、1993年5月、UNTAC監視の下、憲法を制定するための国民議会選挙が行なわれてフンシンペックが第一党となり、9月23日に新憲法が公布され、翌24日にはノロドム・シハヌークが国王に復位してカンボジア王国が再建されたことを受け、UNTACは同日付けで任務を終了。同年末までに撤収されしています。 さて、今回の選挙は、1993年の制憲議会選挙から数えて通算6回目となります。前回2013年の選挙では、全議席(当時の定数は123)を人民党(68議席)と野党のカンボジア救国党(55議席)の2党が分け合いったほか、昨年(2017年)の地方選挙でも救国党が躍進。1998年以来の長期政権を担ってきたフン・セン首相は、これに危機感を抱き、救国党の党首を逮捕し、最高裁は同党に解散を命じるなど、強引な手法で野党を抑え込みました。さらに、今月27日以降は、政権に批判的な複数のメディアのウェブサイトの閲覧できなくなっていました。 このため、元救国党幹部らは逃亡先の国外から、国民に投票ボイコットを呼び掛けていましたが、人民党は選挙の“正統性”を示すため、国民に対して投票を行くようさまざまな圧力をかけたため、投票率は前回の69.61%を大きく上回る80%超(選管発表による)を記録。これにより、計算上は、人民党の獲得議席も100議席となる見通しだそうです。 ただし、上述のような状況のため、米国やEUは選挙支援を停止。わが国も、投票箱提供などの選挙協力を続けるものの、監視員派遣は見送り、最大野党の解体などについて懸念を伝えています。UNTAC監視下の政権選挙から、ことしはちょうど25周年ですが、その節目の年に、“自由で公正な選挙”がカンボジアで行われなくなってしまったのは、何とも残念な話ですね。 ★★★ 近刊予告! ★★★ えにし書房より、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』が近日刊行予定です! 詳細につきましては、今後、このブログでも随時ご案内して参りますので、よろしくお願いします。 (画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) ★★ 内藤陽介の最新刊 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 ★★ 本体2500円+税 【出版元より】 中東100 年の混迷を読み解く! 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史! 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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