2018-07-12 Thu 08:36
今月9日、リビア国営石油が不可抗力条項に伴い閉鎖していた石油輸出港4施設を再開し、数時間内に生産・輸出量を通常水準に戻すと発表したことで、きのう(11日)、原油先物相場は急落。米中貿易摩擦の高まりによる需要への悪影響もあり、1日としては2年ぶりの下げ幅となる5%安となりました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1968年にリビアが発行した“ズウェイティナ石油ターミナル”の切手です。 リビアはアフリカ第1位(世界第9位)の原油埋蔵量(約471億バーレル)を誇る資源大国ですが、独立以前は農業国で、1951年の独立後、1955年から油田開発が進められ、1959年に産油国となりました。 王政時代の油田開発の中心になったのはオクシデンタル・ペトロリウム社等の国際石油資本で、ゼルテン、サリール、アマルなどを有する東部のキレナイカはリビア最大の油田地帯となりましたが、1969年の革命後、石油産業は国有化され、リビア国営石油の管理下に置かれています。 リビアの油田は陸上シルテ盆地・キレナイカに存在し、海上油田からも生産していますが、なかでも、今回ご紹介の切手のズウェイティナと、ラス・ラヌフ、エスシダーのターミナルが三大石油積出港とされています。また、リビアの輸出の9割は石油関連ですが、貿易黒字を維持するために輸出量は調節されています。 1970-80年代、リビアは300万BD(バレル/日)を超える原油生産量を誇っていましたが、パンナム機爆破事件により1992年から1999年まで行われた国連の経済制裁により生産量が低下。さらに、2011年の内戦の影響により、160万BDあった原油生産量がほぼ停止に追い込まれます。内戦終結後の2012年5月には150万BDまで回復したものの、その後も不安定な治安状況が続いたため、2013年は25-80万BDの水準で推移。2016年には、ISことダーイシュによる石油貯蔵タンクへの攻撃もありましたが、徐々に石油施設が再開され、同年11月には約50万BDの生産量を取り戻します。 その後、128万BDにまで増産が進んだものの、ことし(2018年)2月、武力衝突が発生。リビア東部を実効支配するハリファ・ハフタル将軍の武装組織は、対立する武装勢力から奪還した港湾の管理権を、ベンガジの別の石油当局に引き渡したため、85万BD前後の輸出が停止されていました。このため、7月10日の時点での生産量は52万7000BDと、半年足らずの間にほぼ半減していましたが、今回の施設再開により、ことし2月の水準に回復することが見込まれたため、今回の急落につながったというわけです。 ★★★ 全日本切手展のご案内 ★★★ 7月20-22日(金-日) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)ならびにチェコ切手展が開催されます。主催団体の一つである全日本郵趣連合のサイトのほか、全日本切手展のフェイスブック・サイト(どなたでもご覧になれます)にて、随時、情報をアップしていきますので、よろしくお願いいたします。 *画像は実行委員会が制作したポスターです。クリックで拡大してご覧ください。 なお、会期中の21日、内藤は、以下の3回、トーク・イベントをやります。 13:00・9階会議室 「国際切手展審査員としての経験から テーマティク部門」 14:30・8階イベントスペース 「アウシュヴィッツとチェコを往来した郵便」 16:00・8階イベントスペース 『世界一高価な切手の物語』(東京創元社) ★★★ 近刊予告! ★★★ えにし書房より、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』が近日刊行予定です! 詳細につきましては、今後、このブログでも随時ご案内して参りますので、よろしくお願いします。 (画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) ★★ 内藤陽介の最新刊 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 ★★ 本体2500円+税 【出版元より】 中東100 年の混迷を読み解く! 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史! 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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