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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手の中の日本と韓国:解放切手
2008-04-21 Mon 09:34
 雑誌『表現者』の第18号が出来上がりました。僕の連載「切手の中の日本と韓国」という連載では、1946年発行の南朝鮮(大韓民国ができるのは1948年のことです)の正刷切手である“解放切手”と(画像はクリックで拡大されます)と日本との関係について取り上げました。

 解放切手

 1946年5月1日、アメリカ軍政下の南朝鮮で“解放切手”と称する6種類の切手が発行されました。解放切手は、オフセット印刷で、3銭、5銭、10銭、20銭、50銭、1円の6種類で、低額4種には上の画像に示すような家族と太極旗が、高額2種には太極文様が、それぞれ描かれています。

 解放切手は、名目上は“(米軍による南朝鮮)解放の記念切手”でしたが、総計4470万枚発行され(うち、1946年の製造数は3000万枚)、実質的に通常切手として用いられました。ちなみに、1946年に南朝鮮郵政が発行した他の記念切手の発行枚数は30万枚もしくは50万枚ですから、解放切手の発行枚数は突出しています。

 当時の南朝鮮内には、これだけの量の切手を短期間に確実に製造しうる印刷所はありまsんでしたから、解放切手は、デザイナーの金重鉉がソウルで作成した原画をもとに、日本の印刷局の彫刻課長・加藤倉吉が原版を彫刻し、印刷局で印刷するという方式で調製されました。ただし、当時は日本国内でも、切手には目打や裏糊がないのが当たり前でしたから、解放切手も日本で印刷された後、目打作業は現地で行われています。

 ところで、日本側が南朝鮮の切手の印刷を受注した背景には、一種の賠償のような意味合いがあったと説明する人がときどきいるのですが、むしろ、当時の日本人の多くは、敗戦後の朝鮮で資産を没収ないしは接収されたことに対して、賠償を求めるのは自分たちのほうだという意識のほうがはるかに強かったとおもわれます。実際、1953年の日韓国交正常化交渉に際して、日本側首席代表の久保田貫一郎は「日韓併合は負の側面ばかりではなく日本は朝鮮半島の工業・農業基盤を整備し、日本は年間2000万円も朝鮮半島に持ち出した時もあった。韓国側が“日帝36年”についての請求権を要求するなら、日本も朝鮮半島に投資し、戦後、接収された日本資産についての請求権の行使を要求する」という趣旨の発言をしていますが、おそらくこれが、当時の日本人の標準的な認識だったのではないでしょうか。

 したがって、日本の印刷局が解放切手を製造することになったのは、当時の朝鮮内では大量の切手を短期間に調整できないという現実に直面した米軍政庁が、日本を占領していたマッカーサー司令部に対して支援を求めた結果と考えるのが自然ではないかとかんがえられます。いずれにせよ、日本時代の過去と訣別するために発行されたはずの“解放切手”が、実は、日本の印刷局によって製造されたものであったというのは、なんとも皮肉な話ではありますが…。

 さて、昨日(20日)、韓国の李明博大統領が来日しました。“実利主義”を掲げる現大統領は、就任直前の外国メディアとの会見では、「私自身は新しい成熟した韓日関係のために、“謝罪”や“反省”は求めない」、「日本は形式的であるにせよ、謝罪や反省はすでに行っている」、「こちらが要求しなくても、日本は(謝罪と反省を)言うくらいの成熟した外交をするだろう」と述べ、 未来志向の関係構築に向け、歴史認識問題で日本に謝罪を求める考えはないことを明らかにするとともに、日本側の自発的取り組みを促すという姿勢をとっていますが、先代の盧武鉉も就任当初は、さかんに“未来志向”と言っていましたからねぇ。韓国の歴代政権には、国内の政局運営がうまくいかなくなると“反日”でガス抜きを図ろうとする悪癖がありますが、李政権がそれを克服できるかどうか、我々としても注視していきたいところです。

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