窃盗団が主人公のハリウッド映画「オーシャンズ11」をまね、自動車盗やスリを繰り返していた中学生グループが捕まったそうです。というわけで、ストレートに“盗人”の文字が入った切手をもってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1970年5月29日、日本復帰以前、アメリカ施政権下の沖縄で発行された「組踊りシリーズ」の切手で、「人盗人(ちゅぬすっと。“ちうぬすど”とも)」の一場面が取り上げられています。
組踊りは、1719年、中国からの冊封使をもてなす踊奉行の玉城朝薫が、重陽の宴にあたって創作・上演した楽劇で、「組踊りシリーズ」の切手には、朝薫が創作した5作品(“朝薫の五番”とよばれる)「執心鐘入(しゅうしんかねいり)」、「銘苅子(めかるしぃ)」、「孝行之巻(こうこうのまき)」、「人盗人」、「二童敵討(にどうてきうち)」が取り上げられています。
このうち、今回ご紹介の「人盗人」は、別名「女物狂(おんなものぐるい」とも呼ばれる作品で、謡曲の「桜川」や「隅田川」に想を得たといわれる物語は、以下のようなストーリーになっています。
子供が風車で遊んでいるところに盗人が現れ、人形をだしに言葉巧みに子供を誘い(切手にはこの場面が取り上げられています)、ついには鎌を振り上げすざましい形相で脅し、かどわかします。盗人は子供を売り飛ばしに遠く山原(ヤンバル=沖縄本島北部の山岳地帯)をめざす途中、日が暮れたため、寺へ一夜の宿を乞いました。
盗人が寝静まると、子供がこれまでのいきさつを寺の者へ話して助けを求めたので、寺の者たちは一計を案じ、偽の手配状を仕立て、寝入る盗人を叩き起こし、荒々しい人相の盗人の顔だちや身なりの特長を読み上げます。このため、追っ手が迫ってきたと誤解した盗人は逃げ出していきました。
一方、子供を失った母親は、あてどなく子を捜し歩き、道中、出くわす子供らに狂人扱いされながらも、子供をかくまった寺へ辿り着きます。そこで、住職から事情を尋ねられた女は「人盗人に子供をさらわれ、この状態になった」と返答。住職が「もしやあなたが捜す子はこの子ではないか」と彼女に子供を会わせると、女は正気に戻り、再会を果たした母子は首里にもどる・・・というものです。
まぁ、犯罪(者)を題材とする文学作品や演劇、映画の類は古今東西いろいろあって、その中には切手になっているものも少なからずありますから、“犯罪”をテーマにしたコレクションというのも作ろうと思えば作ることができると思います。実際、以前の国際切手展には“殺人”をテーマにしたコレクションが出品されたこともありましたが(たしか、出品者はアメリカの牧師さんで、命の尊さを表現するため、あえて、このテーマを選んだというようなことを言っていた記憶があります)、日本で同じことをやったら、どうでしょうかねぇ。少なくとも、僕がやったら「悪趣味だ」と大いに顰蹙を買いそうな気がします。