2007-02-03 Sat 00:44
今日は節分。というわけで、“鬼”にからめて、こんな1枚を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、<昔ばなしシリーズ>の第3集として、1974年6月10日に発行された「一寸法師」の1枚で、姫の供をして出かけた一寸法師が鬼に出会い、縫い針の刀を振り回して鬼に切りつけている場面(切手としてのタイトルは“鬼退治”)を取り上げたものです。原画は切り絵画家の滝平二郎でした。 “昔ばなし”の多くは、文字に記録されたものではなく、代々口伝えに伝えられてきたものですから、当然のことながらさまざまなバリエーションがあります。このため、<昔ばなしシリーズ>の切手に関しては、発行されるたびに「自分の知っている話とは違う!」と文句を言う収集家が少なからずいたようです。 ところで、切手に取り上げられた「一寸法師」は、御伽草子のテキストを基にしてデザインを作ったのですが、御伽草子の「一寸法師」は、よくよく調べてみると、我々が子供の頃に聞かされたものとは若干、内容が違っているようです。 すなわち、絵本などでは、一寸法師は武士になるために京へ出たことになっていますが、御伽草子によると、一寸法師が全く大きくならないので化け物ではないかとおじいさん・お婆さんが気味悪く思っていたのを察し、一寸法師は自分から家を出ることにしたとなっています。 これじゃぁ、一寸法師が心に大きなトラウマを追うのも無理からぬことで、彼の性格も相当歪んでしまったことでしょう。実際、御伽草子の記述はそのようになっています。 すなわち、宰相殿の娘に一目惚れし、妻にしたいと考えた一寸法師は、神棚に供えてあった米粒を持ってきて、寝ている娘の口につけ、自分は空の茶袋を持って泣きまねをし、宰相殿に、自分が貯えていた米を娘が奪ったのだと嘘をつきます。それを信じた宰相殿が激怒し、盗みを犯した娘(もちろん、一寸法師の策略による冤罪です)を殺そうとしたものの、一寸法師は白々しく、その場をとりなし、娘と共に家を出たというのです。 絵本などでは、たまたま、娘の宮参りに一寸法師が同伴したということになっていることを考えると、御伽草子の一寸法師はかなりダーティーです。 さらに、打ち出の小槌で体が大きくなった後の彼は、絵本などでは、娘と結婚し、金銀財宝も打ち出して末代まで栄えたということになっていますが、御伽草子では、一寸法師の噂が世間に広まり、宮中に呼ばれた(元)一寸法師は帝に気にいられ、中納言にまで出世したとなっています。たしかに、陰謀渦巻く宮中で出世を果たす人物ということであれば、一寸法師がお人よしであるはずはないので、御伽草子での一寸法師の人物設定にリアリティを感じてしまうのは僕だけではないでしょう。 さて、2001年に刊行の『濫造・濫発の時代 1946-1952』からスタートした<解説・戦後記念切手>シリーズですが、第5巻の『沖縄・高松塚の時代』が来月、いよいよ刊行となります。今回は、封書15円時代の全記念特殊切手を扱った昨年刊行の第4巻『一億総切手狂の時代 1966-1971』の後を受けて、1972年の札幌オリンピックから1979年の国土緑化運動までの記念・特殊切手をまとめました。もちろん、今日ご紹介の一寸法師の切手についての解説も掲載されています。 無事刊行の暁には、是非、お手にとってご覧いただけると幸いです。 |
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