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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 タイの総選挙
2007-12-23 Sun 16:04
 昨年9月のクーデター以来、軍部主導の暫定体制が続いているタイで、今日(23日)、民政移管に向けた下院選挙の投開票が行われます。というわけで、今日はこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

旧国会議事堂

 これは、1969年2月10日の総選挙に際して発行された切手で、旧アナンタ・サマーコム宮殿(当時は国会議事堂として利用されていた)が描かれています。

 旧アナンタ・サマーコム宮殿は、1907年に当時のラーマ5世の命で着工され、国王が亡くなった後、次のラーマ6世時代の1915年に完成しました。完成当時は、迎賓館と国家的行事の宮殿という位置づけです。

 旧宮殿の外壁は、近隣のワット・ベンチャマボーピットと同じカララ産の大理石が貼られており、彫刻が施されています。また、建物の中には、イタリア人画家、ガリレオ・チニによる歴代国王(ラーマ6世まで)をたたえるフレスコ画が掲げられているとのことですが、残念ながら一般公開はされていないので、僕たちは柵越しに中の様子を想像することしかできません。

 1932年の立憲革命で議会が開設されることになり、アナンタ・サマーコム宮殿は国会議事堂として利用されるようになりましたが、現在は旧宮殿の北隣に建てられた新議事堂が議場として使用されており、旧宮殿は歴史的建造物として保存されています。

 ところで、今回ご紹介の切手にちなむ1969年の総選挙は、1968年憲法に基づいて、1957年12月以来、じつに11年ぶりに実施されたものでした。

 すなわち、1957年9月、サリット元帥による軍部クーデターの後、タイでは軍事政権が続いており、1963年12月のサリット病死後、政権を引き継いだのは、サリットの片腕とみなされたタノーム・キティカチョーン国軍最高司令官と、プラパート・チャールサティアン陸軍司令官でした。このうち、首相兼国防大臣となったタノームは、副首相で内務大臣のプラパートとともに、サリット時代以来の懸念であった憲法制定に着手。1968年にようやく、恒久憲法を公布しました。この憲法公布により、議会に内閣不信任決議権が認められるとともに、政党活動も解禁され、1969年2月の総選挙実施にいたったというわけです。

 選挙の結果、タノームひきいるタイ国民連合党(サハプラチャータイ)が第一党となり、タノームは引き続き政権を担当することになります。しかし、タノームは、1971年に国会の非効率な運営を理由に、自己クーデターを起こして憲法・国会・内閣および政党を廃止。このため、1973年10月に民主化を要求する学生運動が起こり、タノーム政権は退陣に追い込まれました。

 なお、タイではこれまで、国会議事堂時代を含め、何度かアナンタ・サマーコム宮殿の切手が発行されていますが、それぞれの切手が発行された当時の政治状況については、拙著『タイ三都周郵記』でもご説明しています。機会がありましたら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。
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