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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 北方領土切手の発行
2005-08-22 Mon 10:45
 今日、ふるさと切手の北海道版として「最北の自然・北海道」が発行されました。

     最北の自然・北海道(実物)
 
 日本郵政公社のHPでは、今回の切手発行を以下のように説明しています。

 「最北の自然・北海道」は、日本列島の最北の地である北海道の自然に息づく「ハマナス」、「ラッコ」、「チシマザクラ」、「エトピリカ」を題材としたふるさと切手です。北海道の地図を背景に最北の自然をデザインしました。
 ハマナスは、「純朴、野性的で力強い」「花の色が鮮明で、葉も美しい」など、北海道にふさわしい花という多くの意見により、昭和53年7月26日に北海道の花として指定されています。背景には択捉島に現存する旧逓信省紗那郵便局をデザインしています。
 ラッコは、主に北海道東部の太平洋沿岸に生息しています。子供を腹の上に乗せた親子などかわいい姿を見ることができます。一部には舟に近づいてくるかわいらしいラッコもいます。
 チシマザクラは、寒さの厳しい北国や高山などに咲く桜で主に北海道東部や北部で5月末頃から6月にかけてと、本州よりも遅い時期に薄紅色の花をつけます。ソメイヨシノとは違った北国ならではの美しさをもっています。
 エトピリカは、北海道東部に生息する潜水性の海鳥です。エトピリカと言う名前はアイヌ語で「美しいくちばし」という意味で、その名のとおり黒い身体に美しいオレンジ色のくちばしが特徴の海鳥です。

 択捉島の旧逓信省紗那郵便局以外は、“北方領土”とすぐに分かるような説明はありませんが、今回の切手は、北方領土返還運動を担当する内閣府が日本郵政公社に要請して発行の運びとなったもので、今年の日露修好通商条約150年(日本とロシアの千島での国境を画定した条約)を記念する意味合いも込められているようです。

 このような切手の発行というと、昨年、韓国で発行された竹島切手の事例を持ち出して、「切手の政治利用はいかがなものか」という意見が出ると思います。しかし、そもそも、国家というものは自分たちの政策なり主張なりをあらゆるチャンネルを通じてアピールするのが本来の姿なのですから、北方領土の返還を求めている日本の郵政が(公的機関である限り)北方領土が日本固有の領土であることを、切手というメディアを通じて内外に発信するのは当然のことであり、それを非難するのは完全な筋違いです。切手において表現されている主張そのものに反対するということなら、郵政公社に対する国民的な抗議活動をするなりして、発行中止を求めればよいだけのことです。日本は言論の自由が保証されている国なのですから、合法的な活動である限り、郵政の切手発行政策を正面から批判してもなんら問題はないはずです。

 これまで、日本の記念切手は、「国家的に重要な出来事を記念し、あわせてその周知・宣伝を図るために発行する」という建前とは裏腹に、国家ないしは政府として切手というメディアをどう活用するかという大局観も意思もないまま、各省庁から申請された題材を調整するだけという安直な姿勢で発行されてきました。これでは、切手や郵便のメディアとしての側面をむざむざ捨ててしまっているようなもので、非常にもったいない。

 その意味では、今回の北方領土切手は、デザインその他については改善の余地はあるものの、日本の切手としては珍しく、国家のメディアとしての機能を果たしうるものとして、僕は評価したいと思います。

 なお、国民運動や公共広告機構のようなかたちで切手をメディアとして活用するのであれば、たとえば、地球温暖化防止のためのチーム-6%だとか、覚醒剤乱用防止キャンペーンなど、誰もが納得できる題材はまだまだ沢山あるはずです。

 ポケモンやガンダムの切手をやめろとは良いませんが、もう少し、日本の郵政にはメディアとしての切手の役割を真面目に考えてほしいというのが僕の意見です。

 *今日の内容は、純粋に内藤一個人の意見で、僕の関係している組織・団体の見解とは全く関係ありません。
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