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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 聖ペトロの祝日
2021-06-29 Tue 05:02
 きょう(29日)は、イエスの直弟子にして初代ローマ教皇とされる聖ペトロ(ペテロとも)の聖名祝日です。というわけで、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ヴァティカン・聖ペトロ十字

 これは、1969年にヴァティカンが発行した“サンピエトロ会(1869年に設立の教皇庁を支援する組織)100周年”の記念切手で、聖ペトロの逆十字と交差する2本の鍵(天国の鍵)をデザインした同会の紋章が描かれています。

 伝承によると、ペトロはローマで皇帝ネロによって磔刑に処せられる際、自分はイエスと同じ状態(頭が上の状態)で処刑されるに値しないとして、頭を下にして(通常とは逆の状態で)十字架に掛けられることを望んだとされており、ここから、いわゆる逆十字は“聖ペトロ十字”として、カトリック教会では、聖ペトロ十字を謙虚さの象徴として扱ってきました。

 したがって、ローマ教皇が儀式の際に逆十字を使うことは何ら不思議ではなく、実際、2000年3月、ヨハネ・パウロ2世のイスラエル行幸の際には、聖ペトロの後継者としての教皇の背後には、教皇権の象徴として聖ペトロ十字が掲げられました。

 これに対して、英国でオカルト団体を主宰していたアレイスター・クローリー(1875-1947)は、そうした伝統的なキリスト教世界の常識を無視して、聖ペトロ十字を神の恩寵への反駁・主の恩寵からの離脱などの象徴と主張しましたが、一般社会からはほとんど相手にされませんでした。

 クローリーのオカルト的な主張や麻薬の常習、バイセクシャルとしての奔放な性生活などは、彼の存命中は一般社会から猛烈なバッシングを受けましたが、その結果、1960年代以降のカウンター・カルチャーの文脈で彼に対する再評価を生み出すことになります。そして、逆十字を神への反抗の象徴とするクローリーの主張は、反逆の音楽としてのロック・ミュージックの世界に取り込まれ、逆十字のアクセサリーをつけて演奏するミュージシャンも多数登場しました。

 その結果、聖ペトロ十字の本来の意味を知らない人の中には、クローリーに由来する逆十字=神への反逆という解釈のみに依拠して、ネット上では、時々、逆十字を悪魔崇拝と結び付けて語るケースがあります。実際、陰謀論者の一部は、2000年3月の教皇のイスラエル行幸の際の写真に対して、「滑稽な間違いだろうか。それとも隠れた意味があるのだろうか」とのキャプションをつけ、カトリック教会が悪魔崇拝と関係性があるかのように印象付ける悪質なデマを拡散させてきました。(下の画像)

      逆十字プロパガンダ

 しかし、上述の通り、キリスト教に関する常識レベルの知識があれば、「滑稽な間違いだろうか。それとも隠れた意味があるのだろうか」という疑問文に対しても、ローマ教皇として至極当然の正しい使い方であり、そうした問いを発することじたいが滑稽で恥ずかしいのだとすぐにわかるわけです。

 なお、拙著『誰もが知りたいQアノンの正体』では、事実を捻じ曲げて悪質なデマを拡散させ続けてきたQアノンと、それに追従する人々について、1990年代の米国のネットメディア史も踏まえてまとめております。機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。

 * 昨日(28日)の文化放送「おはよう寺ちゃん」の僕の出番は、無事、終了いたしました。リスナーの皆様には、この場をお借りして御礼申し上げます。次回は来週月曜日・7月5日に登場の予定です。引き続きよろしくお付き合いください。
    

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 7月3日(土)~ 武蔵野大学の生涯学習講座
 7月3日・10日・17日・24日・31日、8月7日の6回、下記のふたつの講座でお話しします。 

 13:00~14:30 「日本の郵便150年の歴史 その1 ―“大日本帝国”時代の郵便事情―」
 15:15~16:45 「東京五輪と切手ブームの時代 ―戦後昭和社会史の一断面―」
 対面授業、オンラインのライブ配信、タイム・フリーのウェブ配信の3通りの形式での受講が可能です。お申し込みを含め、詳細については、こちらをクリックしてご覧ください。

 7月5日(月) 05:00~  おはよう寺ちゃん
 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。


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 出版社からのコメント
 なぜQアノンにみんなハマったのか?
 ネットならではの引き寄せ構造と、現代格差社会の生んだ分かりやすい解釈。
 これは米国だけじゃない!
 人はみんなQを求めている!? (笑)

 * 編集スタッフの方が個人ブログで紹介してくれました。こちらをご覧ください。

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