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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:名刹・内蔵寺
2021-04-05 Mon 00:58
 ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』2021年3月12日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、3月5日に全羅北道井邑市の名刹、内蔵寺での放火事件の直後の号でしたので、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・内蔵寺

 これは、1972年12月10日に韓国が発行した国立公園シリーズ第3集の“内蔵山国立公園(内蔵寺)”の切手です。

 放火事件のあった内蔵寺は、636年、霊隠祖師が創建し、当初は霊隠寺と呼ばれていました。周囲は全羅北道の名山として知られる内蔵山国立公園の中にあります。

 内蔵山は、智異山・月出山などとともに、湖南地方(全羅道など)の5大名山の一つとして知られ、500年以上前の朝鮮王朝の時代から紅葉の名所として知られてきました。今回ご紹介の切手では、紅葉が始まった時期の山々を望む内蔵寺の境内が取り上げられています。なお、内蔵山は、紅葉の時季だけでなく、春には緑の山麓に咲く桜やつつじ、夏には山の緑、冬には雪景色など、年間を通じて楽しめる景勝地です。

 内蔵山は最高峰の神仙峰(763m)をはじめ9の峰で構成されており、望海峰(679m)の西南に突き出た蓮池峰(670m)の山中には湖南平野南部を潤す東津江の水源があります。また、蓮池峰に雲が立ち込めれば雨が来るという話が伝えられています。

 寺の山門である一柱門から先の境内には、かつては50を超える大伽藍がありました。ちなみに、一柱門から大雄殿の方へ向かうのとは別に、右に分かれた小道を上がっていくと、“古内蔵寺址”として地方記念物第73号に指定されている碧蓮庵があります。碧蓮庵は、660年に幻海禅師が創建した寺で、古くはこちらが内蔵寺と呼ばれていました。

 実は、現在の内蔵山は、古くは霊隠寺にちなんで霊隠山と呼ばれていたのですが、朝鮮王朝時代、山の中に隠されたものが無尽蔵にあるということから内蔵山と呼ばれるようになり、それに伴い、霊隠寺も内蔵寺に改称され、もともとの内蔵寺は白蓮庵と改称されたという経緯があります。白蓮庵は僧侶たちの学堂として使われていましたが、朝鮮王朝時代の書家、秋史・金正喜が碧蓮庵への改称を勧め、自ら扁額を書いたそうです。

 内蔵寺は、1592年、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に焼失しましたが、全州史庫から山中の金仙渓谷にある洞窟の“龍窟”に隠されていた『朝鮮王朝実録』は危うく難を逃れました。

 その後、寺は再建され、1768年には、全羅南道長興郡の宝林寺が廃寺になったことを受け、高さが1メートルほどの“朝鮮銅鐘”が内蔵寺の観音殿に移されます。この銅鐘は、現在、全羅北道の有形文化財に指定されており、今回の火災でも無事でした。

 1950-53年の朝鮮戦争では寺は再び全焼。戦後の1958年にはとりあえず大雄殿が再建され、その他の建物も1970年代までに再建されており、今回ご紹介の切手にも、この時に再建された伽藍が取り上げられています。

 ところが、2012年10月、漏電による火災で大雄殿が再び全焼し、堂内の仏像・仏画も焼失。井邑市の予算と市民の寄付など計25億ウォンが投入され、2015年7月に復元されたばかりでした。

 今回の火災ですが、道警察庁によると、容疑者の僧侶は、3月5日午後6時30分ごろ、内蔵寺の大雄殿にガソリンをまいて放火。最近、容疑者は寺の関係者たちとトラブルを起こしており、この日も事件現場の大雄殿内でいさかいがあったそうです。また、逮捕当時、容疑者は酒に酔った状態でした。

 放火により、大雄殿は全体が炎に包まれて全焼しましたが、消防によって、5日午後7時53分ごろ、大きな火は鎮火。人命被害はなく、山火事にも広がることもありませんでした。

 僧侶が自らの寺に火をつけた事件としては、日本では、1950年7月2日、林承賢による金閣寺放火事件が有名で、三島由紀夫『金閣寺』や水上勉『五番町夕霧楼』など文学作品の題材にもなっています。まぁ、放火事件そのものは不幸な出来事ではあるのですが、現在、世界的にも高い評価を得ている韓国映画界の中から、今回の事件を題材に秀れた作品が生まれてくるとしたら、それはそれで、怪我の功名ということになるのかもしれません。

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