2020-07-05 Sun 02:36
日本の大手広告代理店・電通が、現在、新型コロナウイルスに対する“疫病退散”のキャラクター的な存在として、国民各層が広く使っている“アマビエ”について、6月30日付で商標登録を出願していることがわかりました。(特許庁の商標照会はこちらに出ています)というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、ことし5月25日の緊急事態宣言解除を受けて、僕の友人が、アマビエのフレーム切手(利用者が枠内に好きなデザインを入れて制作を依頼することができる切手。枠内のデザインはあくまでもプライベートなもので、周囲の枠のみが“切手”として有効)を貼り、拙宅宛に送ってくれた記念カバーです。なお、カバーの左下には、新型コロナウイルス感染症拡大阻止を呼び掛けるため、アマビエをモチーフに厚生労働省が作成したアイコンがデザインされています。 弘化3年(1846年)4月中旬に刊行された瓦版には、ある時期、肥後国で毎晩光るものが出現したため、地元の役人が調査に赴いたところ、アマビエと名乗るものが出現し、「自分は海中に住むアマビエという者だ。今後6年間は諸国で豊作が続くが、その一方で疫病も流行するから、いますぐ、私の姿を描き写して人々に見せるように」と告げ、海の中へと帰って行ったとの記述と、アマビエの図が掲載されています。 このエピソードをもとに、1984年には、『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる水木しげるが、弘化3年の瓦版に掲載された図を基に、『水木しげるの続・妖怪事典』のためにアマビエの絵を描いたほか、さまざまな創作で取り上げられるようになりました。 2020年に入り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に拡大し、わが国でもその防止対策として、イベントの休止や学校の休校措置など、さまざまな“自粛”が始まる中で、2月27日、妖怪掛け軸専門店「大蛇堂」が、「疫病退散にご利益があるというアマビエの力を借りよう」、「コロナウィルス対策としてアマビエのイラストをみんなで描こう」との趣旨で、アマビエの解説とイラスト作品をツイッターに投稿。これに賛同した多くの人々が、アマビエを自己流にアレンジしたさまざまなジャンルの作品を次々に投稿するようになりました。 さらに、2020年4月7日、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に緊急事態宣言が発令され、社会全体への自粛要請がさらに進むと、「新型コロナウイルスの終息」をうたってアマビエを模した商品やアマビエをデザインしたラベル等が続出。厚生労働省も新型コロナウイルス感染症のWeb向け対策啓発の広報アイコンとしてアマビエのイラストを使い始めました。さらに、アマビエは、各地の寺社の護符やご朱印の印判などにも「疫病退散」のシンボルとして、広く用いられています。 このように、今回、電通が商標登録を出願したアマビエは、もともと江戸時代から人々に語り継がれていた妖怪で、いわば、伝承文化として日本人の共有財産として受け継がれてきたものです。たしかに、その存在を広く世に知らしめるきっかけを作った水木しげるの作品や、今回のコロナ禍のなかで多くの人々が制作した個々の作品には、それぞれの著作権がありますが、その多くは電通とは無関係です。それにもかかわらず、一民間企業の電通が“アマビエ”について包括的な商標権を主張するというのは、仮に法の不備を上手く利用したことで違法性はないにせよ、疫病退散を願い、思い思いのアマビエを作っている多くの日本人の気持ちを踏みにじるもので、決して理解を得られるものではないでしょう。 2014年、焼物の“有田焼”の名称について、中国・福建省の業者が勝手に商標登録をしていたため、中国国内で日本人がこの名称が使えなくなっていた問題が明らかになって以来、2015年には北海道や十勝地方とは全く無関係の韓国人が北海道十勝地方のローマ字表記“TOKACHI ”を商標登録出願、2016年には中国・江蘇省の個人が中国商標局に対して“弘前”の文字を商標登録申請、2019年には中国・大連市に住む人物が“香川小豆島”という商標の登録を中国商標局に申請するなど、商標登録をめぐっては、外国人による理不尽な動きが目についていましたが、まさか、日本を代表する巨大企業が同胞である日本人に対して同様のことをやろうとしているとは…獅子身中の虫にしてはあまりにも巨大すぎます。 ちなみに、米国では、2013年、ウォルト・ディズニー・カンパニーが、メキシコの伝統的なお祭りの名である“Día de los Muertos(スペイン語で死者の日)”を米特許商標庁に商標登録を出願したところ、国際世論の囂囂たる非難を受けて出願の撤回に追い込まれたことがあります。 今回のアマビエの件も、このまま商標登録がなされてしまうことのないよう、多くの国民が声を上げていくことが必要ではないかと思います。 ★★ 内藤陽介の最新刊 『みんな大好き陰謀論』 ★★ 本体1500円+税 出版社からのコメント 【騙されやすい人のためのリテラシー入門】 あなたは大丈夫?賢い人ほどダマされる! 無自覚で拡散される負の連鎖を断ち切ろう まずは定番、ユダヤの陰謀論を叱る! ! 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
初めまして。夜分に失礼致します。fc2ブログトップに表示されたこちらの記事が目に留まりました。商標照会を見て「アマビエ」という言葉表記そのものを出願していると分かり怒りを禁じ得ません。仰る通り「アマビエ」は古から日本人共有の財産です。知的財産基本法の第一章第三条に書かれている内容にも反すると思います。極端かもしれませんが独占禁止法違反にも抵触する恐れがあるのではないでしょうか。すでにアマビエを使ってお商売をなさっている方がたくさんおられます。公共の利に資していると言えないと感じます。日本の名だたる企業がこういうことをするなんて情けないです。特許庁が公正な判断を下すことを祈ります。拡散させて頂きます。
先ほどコメントした者です。ツイッターに電通が出願を取り下げたとの情報がありました。拡散する必要はなかったです。ホッとしました。大変失礼いたしました。
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