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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ローラアシュレイ破綻
2020-03-18 Wed 03:08
 英国の生活雑貨ブランド、ローラアシュレイは、きのう(17日)、管財人の傘下に入り経営破綻することになったことを明らかにしました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      オランダ・ローラアシュレイMS

 これは、1992年3月10日、オランダ南部のフェルドホーフェンのローラアシュレイの店舗からアペルドールン宛に差し出された郵便物で、同社の広告入りメータースタンプが使われているのがミソです。

 ローラアシュレイは、1953年、バーナードとローラのマウントニー夫妻が創業しました。

 1949年の結婚後、ローラはロンドンのピムリコで働きながら2人の子どもを育てる傍ら、ナプキンやテーブルマット、ティータオルをデザインをし、これを夫のバーナードが自作の機械を使ってプリントしていました。

 1953年、ローラはヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で開催された手工芸品の展覧会に触発され、プリント柄布地の生産を決意。自らの旧姓を冠した“アシュレイ・マウントニー”を立ち上げ、ヴィクトリア朝スタイルのスカーフの生産を開始しました。

 奇しくも、同年、オードリー・ヘプバーンが映画『ローマの休日』で着用していたヘッドスカーフが世界的に流行したことから、アシュレイ夫妻のスカーフも人気を集め、経営の基礎を確立。正式な会社組織となるにあたって、「扱う商品を考えると女性の名前を使ったほうがいい」とのバーナードの提案により、社名もローラアシュレイに変更されました。

 1955年、ローラアシュレイ社はケントに移転しましたが、1958年の洪水によって機械設備や材料が大きな被害を受けたこともあり、1961年にローラの故郷でもあるウェールズに移転。1966年には、長い丈のシルエットを特色とする社交用ドレスの生産も開始すると、折からのロングスカートの流行により、会社の業績はさらにアップし、1970年までには年間30万ポンドの売り上げを誇るまでに成長しました。

 ロンドンでは、1968年、ローラ アシュレイの1号店がサウス・ケンジントンにオープン。その後、国内ではイングランド中西部のシュルーズベリーとバースに店舗を開業したのに加え、1974年にはパリおよびサンフランシスコにも出店。この間、1971年にはオーストラリア、カナダ、日本の百貨店などでも商品の販売が始まり、1975年までに、ローラアシュレイ社は全世界で1000人以上を雇用する巨大企業になりました。

 この功績により、1977年、英国政府はローラに大英帝国勲章 (OBE) 授与の申し出ましたが、彼女は、バーナードに対する褒賞がなかったことを理由に受章を辞退。このため、英国女王賞(貿易部門)を受賞しています。また、1979年からは香水の販売も開始。その後は、家庭用品の分野にも進出しました。

 1985年、ローラが60歳で亡くなると、会社は株式の公開に踏み切りましたが、この頃から、ローラアシュレイのデザインは流行遅れとなって業績は低迷。さらに、過剰な出店と高コスト化が経営を圧迫したため、1989年には赤字転落。そこで、1991年、米国人のジェームズ・マクスミンがCEOに就任して経営再建に乗り出し、フェデラル・エクスプレスとの提携により配送システムを一新したことで、1992年には黒字を回復しました。

 ところが、1994年、マクスミンがバーナードとの意見の対立からCEOを辞任。その後も、短期間のうちにCEOが交代するなど経営は迷走し、1997年には深刻な危機に陥りましたが、1998年5月、マレーシアの企業グループMUI Asiaが筆頭株主となり、2006年1月にCEOに就任したリリアン・タンは、商品ラインアップの中で家庭用品が最も利益を上げていることを踏まえ、店舗では衣料品スペースを削って家庭用品に回すなどの変革を行い、業績も回復しました。

 それでも、近年は、イケアやザラなどの低価格ライフスタイルブランドが多く登場したことにくわえ、従来からの客層が高齢化したことなどから業績は低落傾向が続き、2019年6月期のグループ売上高は前期比9.6%減の2億3250万ポンド(約302億円)、税前法定損益は1430万ポンド(約18億円)の赤字となっていました。

 そこへ、年初からの新型コロナウイルス問題による客数の減少と売上げの低迷が追い打ちとなり、親会社のヒルコ・キャピタルなどから運転資金を確保するための交渉も不調に終わったため、ついに2700人のスタッフを抱えての営業継続は困難との判断から、今回の経営破綻に至ったというわけです。

 ちなみに、今回の経営破綻に関して、英スカイニュースは「コロナウイルスによる小売業の初めての犠牲」と報じていますが、昨年10月の消費増税でそもそも景気が冷え込んでいたわが国にとっても、ウイルスがとどめの一撃となっての大型倒産は十分に考えられるだけに、他人事とは思えませんね。


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