2020-02-23 Sun 00:27
1970年2月23日、世界で最も高価な切手“英領ギアナの1セント”の国としてしられるガイアナが共和制に移行し、“ガイアナ協同共和国”に改称してから、50周年となりました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1980年2月23日にガイアナが発行した“協同共和国10周年”の記念切手です。 南米大陸北部の大西洋に面したギアナ地方は、オランダ、フランス、英国の3国によって分割されていましたが、このうちの英領ギアナは、1621年以降、オランダ西インド会社の管轄下にあった地域のうち、エセキボ・デメララ・バービスの3植民地が、ナポレオン戦争を経て1814年に英領となり、1831年、英領ギアナとして統合されました。 英国の支配下では、1834年、奴隷制が廃止されましたが、これに伴い、英領ギアナでも、砂糖工場の労働力として、英本国のみならずアイルランド、マルタ、ドイツ、ポルトガルなどからの移民がその欠を補うことになりますが、1838年以降、インド系の労働者が大量に流入。その数は、英領インド政府によりインド人移民が禁止される1917年までに34万人にも達します。当初、インド系移民とその子孫は農業に従事していましたが、次第に、首都ジョージタウンをはじめ都市部に出て商業などで財を成すようになりました。 第二次大戦後の1953年、ガイアナでは初の総選挙が行われましたが、その結果、インド系のチェディ・ジェーガンを党首としてスターリン主義を掲げる人民進歩党(PPP)(PPP)が勝利。このため、ガイアナの社会主義化を恐れた英国は、同年年10月、4隻の軍艦と1600名の兵士を派遣し、ガイアナ憲法を停止して暫定政府による統治が開始します。 一方、インド系の急進左派政党であったPPPの躍進に危機感を持ったアフリカ系は、PPPから分裂するというかたちをとって、弁護士のフォーブス・バーナムを党首として穏健左派政党の人民国民会議(PNC)を結成して、対抗しました。 1961年8月に行われた総選挙ではPPPが第1党となり、同年9月、首相に就任したジェーガンは、アフリカ系労働者が多数を占めていた砂糖産業を国有化使用としましたが、このことはアフリカ系の猛反発を招きます。インド系とアフリカ系の対立は先鋭化し、1962年4月5日にはゼネストが宣言され、ガイアナ全土で暴動が発生。混乱の後、1964年12月に行われた総選挙では、PNCが白人とも連携して勝利を収め、PNCのバーナムが首相に就任しました。これに対して、ジェーガンは選挙の無効を主張しましたが、バーナム政権は憲法改正によって、ジェーガンを追放します。 当初、バーナム政権は、ガイアナの主要産業であるボーキサイトを国有化するなど、社会主義的政策を推進し、1966年5月26日には英連邦の一国として独立を達成。1970年2月23日には、協同組合制度を基礎にした社会主義政策を推進するとして、“ガイアナ協同共和国”(Co-operative Republic of Guyana)の成立を宣言しました。今回ご紹介の切手は、ここから起算して10年になるのを記念して発行されたものです。 当初、協同共和国の国家元首である大統領には中国系のアーサー・チュンが就任しましたが、彼の地位はあくまでも形式的なもので、政治的な実権はバーナムが掌握し続けました。しかし、PPPとPNCの対立は独立後も収まらず、経済状況も悪化。強権によってこれを乗り切ろうとしたバーナムは、1980年に憲法を改正し、大統領の権限を大幅に強化するとともに、みずから大統領に就任し、1985年10月に亡くなるまで、その地位にとどまりました。 バーナムとPNCは、穏健左派を標榜して政権を獲得したものの、実質的には紛れもない社会主義政権で、バーナムに対する個人崇拝も行われていました。結局、バーナムの存命中は、経済がどれほど悪化しても、路線転換は行われず、彼の死後、大統領に昇格した副大統領のヒュー・デズモンド・ホイトが、ようやく、社会主義路線を放棄し、自由化路線に転換しました。 ちなみに、ガイアナでは、バーナム時代の1980年憲法が現行憲法として有効で、その規定では、現在なお正式な国名は“ガイアナ協同共和国”です。しかしながら、現在ではガイアナ政府自ら、この名称を使うことはほとんどなく、日本の外務省も“ガイアナ共和国”を事実上の正式国名として使用しています。 ★★ イベント・講座等のご案内 ★★ 今後の各種イベント・講座等のご案内です。詳細については、イベント名・講座名をクリックしてご覧ください。 ・よみうりカルチャー 荻窪 宗教と国際政治 毎月第1火曜日 15:30~17:00 3/3、4/7、5/5、6/2、7/7、8/4、9/1(1回のみのお試し受講も可) ★★ 内藤陽介の最新刊 『日韓基本条約』 ★★ 本体2000円+税 出版社からのコメント 混迷する日韓関係、その原点をあらためて読み直す! 丁寧に読むといろいろ々発見があります。 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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