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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 サン=ジェルマン条約100年
2019-09-10 Tue 01:28
 第一次大戦後のオーストリアと連合国との講和条約であるサン=ジェルマン条約(サン=ジェルマン=アン=レー条約)が1919年9月10日に締結されてから、きょうで100周年です。というわけで、きょうはこんなものを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ポーランド・暫定加刷葉書

 これは、1920年1月27日、ハプスブルク帝国崩壊後のポーランド領オシフィエンチムからクラクフ宛の葉書で、ハプスブルク時代の軍事郵便用の葉書を接収し、“ポーランド郵政”を意味する“POCZTA POLSKA”の文字と新額面の15ヘラーを加刷した暫定的な葉書が使われています。

 1918年11月11日、第一次大戦に敗れたハプスブルク帝国は、皇帝カール1世が退位を表明して崩壊します。これを受けて、新たに成立したドイツ=オーストリア共和国とオーストリアから分かれたハンガリー王国は別々に連合国と講和することとなり、1919年5月、オーストリアとの講和会議がサン=ジェルマン=アン=レーで始まりました。

 1919年9月10日に締結された講和条約では、旧ハプスブルク帝国領のうち、ハンガリーチェコスロヴァキア、ポーランド、セルブ=クロアート=スロヴェーン(後のユーゴスラヴィア)の独立が承認され、トリエステ、南チロル(トレンティノ)などのイタリア割譲が決定されました。さらに、オーストリアはドイツとの併合を禁止され、軍備が制限されたほか、賠償金が課せられたりしました。

 このうち、第一次大戦以前はロシアドイツ・ハプスブルク帝国の3国によって分割されていたポーランドでは、大戦末期の1918年10月28日、クラクフに“ポーランド清算委員会”が発足し、ハプスブルク帝国に代わって、オシフィエンチムを含むガリツィアの行政の実務を担当していました。郵便に関しては、当面の処置として、各地の郵便局で、在庫として残されていたオーストリア切手を接収して、地域ごとにローカルな加刷を施した暫定的な切手が発行されています。

 その後、1918年11月14日、ポーランドは独立を回復し(ただし、現在のポーランドはこの日ではなく、ハプスブルク帝国が崩壊した11日を“独立記念日”としています)、ユゼフ・ピウスツキを国家主席とする第二共和国が発足して、国家としての再統一が達せられました。

 しかし、その後も郵便に関しては統合が遅れ、旧ハプスブルク帝国地域では、ひとまず、同地域内の切手を統一するため、1919年1月2日、郵便局に残されていた旧オーストリア切手・葉書が回収され、クラクフ市内のA.コハンスキならびにF.ジェリンスキの2ヵ所の印刷所で“ポーランド郵政”を意味する“POCZTA POLSKA”の文字を加刷した暫定切手・葉書が発行され、同月20日以降、無加刷の旧オーストリア切手は無効となりました。

 さらに、1919年2月25日、ポーランド清算委員会は、ヤン・ミカルスキーが原画を制作し、ジェリンスキ社で製造した切手を発行し、オシフィエンチムを含むガリツィア全域で使用させましたが、全国統一の切手が発行されたこともあって、これらの暫定的な切手は、1919年5月31日限りで使用停止とされています。

 なお、拙著『アウシュヴィッツの手紙』では、そもそも、ハプスブルク時代のオシフィエンチム(アウシュヴィッツ)についても、1章を設けてまとめております。機会がありましたら、ぜひお手にとってご覧いただけると幸いです。


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