2018-07-22 Sun 06:18
はやいもので、20日から、東京・錦糸町のすみだ産業会館で開催中の全日本切手展2018(以下、全日展)は本日が最終日となりました。今回は、特別展示の産業図案切手、併催のチェコ切手展に加え、山崎文雄さんの審査員出品“Hawaii”の中に、ぜひともお見逃しいただきたくない1点がありますので、ご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1851年にハワイで発行された“宣教師切手”のうち、13セントです。 1795年以降、ハワイ王朝(カメハメハ王朝)の支配下にあったハワイには、1820年代以降、白人(その中心は米国人)による捕鯨や白檀貿易などが行われるようになり、1835年からサトウキビのプランテーション栽培も始まりました。 こうした状況の下で、1825年以降、ハワイと米本土との郵便の往来が始まります。当初、郵便料金は手紙のレターシート1枚ごと、かつ距離に応じて異なっていましたが、1845年以降、料金は重量で半オンスごとのレート計算になります。さらに、1850年12月にはホノルルにハワイ最初の郵便局が開局して、制度の整備が進み、1851年9月、郵便制度が確立されました。これにあわせて、郵便局長のヘンリー・ホイットニーは、同年10月1日、現地製の切手を発行します。これが、ハワイとして最初の切手で、当時は郵便の利用者が、ほぼ米国人宣教師に限定されていたため、“宣教師切手”と呼ばれています。 宣教師切手には2セント、5セント、13セントの3額面がありますが、13セントに関しては、国名表示が“Hawaiian Postage”となっているものと“H.I. & U. S. Postage”となっているもの(今回ご紹介の切手です)があるため、全部で4種類になります。また、当時の郵便料金では、ハワイ域内の郵便料金は5セントで、米東海岸宛に運ぶ場合には、米国内の料金として6セントと、輸送船の船長の手数料として2セントの“Ship Fee”を加えた13セントが必要でした。“H.I. & U. S. Postage(ハワイ諸島ならびに米国宛郵便料金)”との表示はこうした事情を反映したものです。 ハワイの宣教師切手は、4種類すべてあわせても、現存数はわずか192枚しかなく、オークションに出品されれば最低でも数百万円で落札されています。なかでも、最も稀少な2セント切手は15枚(未使用1枚、使用済み12枚、オンピース1点、カバー1点)しか存在せず、この切手をめぐって、殺人事件が起きたほどでした。今回ご紹介の13セント切手は、50枚(未使用8枚、使用済み32枚、オンピース1点、カバー9点)で、2セント切手に次いで残存数の少ない切手ですが、今回ご紹介の1点は特に状態の良いものとして貴重なマテリアルです。 今回の全日展に審査員出品として展示されている山崎文雄さんのコレクションは、2016年に台北で開催された世界切手展 <PHILATAIPEI 2016>で大金賞を受賞しており、ハワイ切手の分野では、世界的にも著名な作品です。今回ご紹介の13セント切手以外にも、宣教師切手が含まれているほか、1864年以前のハワイ王国の稀少な切手が数多く展示されています。日本国内では、なかなか展示されることのない作品ですので、ぜひ、本日16時までの全日展の会場にて、実物をご覧いただけると幸いです。 *昨日のトークイベントは、無事、盛況のうちに終了いたしました。ご参加いただいた皆様には、この場をお借りして御礼申し上げます。 ★★★ 全日本切手展のご案内 ★★★ 7月20-22日(金-日) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)ならびにチェコ切手展が開催されます。主催団体の一つである全日本郵趣連合のサイトのほか、全日本切手展のフェイスブック・サイト(どなたでもご覧になれます)にて、随時、情報をアップしていきますので、よろしくお願いいたします。 *画像は実行委員会が制作したポスターです。クリックで拡大してご覧ください。 ★★★ 近刊予告! ★★★ えにし書房より、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』が近日刊行予定です! 詳細につきましては、今後、このブログでも随時ご案内して参りますので、よろしくお願いします。 (画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) ★★ 内藤陽介の最新刊 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 ★★ 本体2500円+税 【出版元より】 中東100 年の混迷を読み解く! 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史! 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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