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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 楽しく学ぼう シリア現代史(新番組)
2017-02-17 Fri 10:25
 インターネット放送・チャンネルくららにて、きのう(16日)から、内藤がレギュラー出演する新番組「楽しく学ぼう シリア現代史」がスタートしました。というわけで、きょうは、新番組スタートのご挨拶を兼ねて、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます。昨日配信分はこちらをクリックしてご覧ください)

      おすまん帝国・ダマスカス発カバー(1918)

 これは、1918年1月17日、ダマスカスからイスタンブル宛に差し出されたカバーで、当時のダマスカスの主権者であるオスマン帝国の切手が貼られています。

 地域概念としての“シリア”は、歴史的には、現在のシリア・アラブ共和国の領域にとどまらず、現在の国名でいうギリシャ、トルコ、シリア、キプロス、レバノン、イスラエル・パレスチナ、エジプトにまたがる地域として、アラビア語ではシャーム、欧米語ではレヴァントと呼ばれていました。

 こうした歴史的シリアは、第一次大戦以前、オスマン帝国の支配下に置かれており、1841年以降、オスマン帝国はベイルートからダマスカス、アッカを経てエルサレムにいたる郵便物の定期輸送を行っており、その料金を徴収するためにオスマン帝国の切手が使われていました。

 一方、地中海東岸の歴史的シリアでは、オスマン帝国の郵政とは別に、列強諸国の郵便局が活動していました。その先鞭をつけたのはロシアで、1721年にサンクトペテルスブルグ=イスタンブール間で外交文書を運んだのが最初です。その後、ロシアは1774年にイスタンブールの領事館で郵便物の定期的な取り扱いを開始。以後、ロシアが“治外法権”を援用するかたちで郵便網を拡充していったことで、列強諸国もこれに続くことになります。ただし、今回ご紹介のカバーのダマスカスには、列強諸国の郵便局は設けられませんでした。

 第一次大戦中、敵国であるドイツとオスマン帝国に対抗するため、英国はオスマン帝国の支配下にあったアラブ地域に目をつけ、メッカの太守であったシャリーフ・フサインに接近。1915年から16年にかけての、いわゆるフサイン・マクマホン書簡を通じて、「アラブがイギリスと共にオスマン帝国と戦えば、戦後、アラブの独立国家をつくる」との密約を結びます。これにしたがって、シャリーフ側は、1916年6月、シャリーフの影響下にあったアラブがオスマン帝国に対して反旗を翻しました。これが、いわゆるアラブ叛乱で、映画「アラビアのロレンス」でご存じの方も多いかと思います。

 オスマン帝国に対して反旗を翻したアラブ軍は、メソポタミアの英印軍とも共同して対オスマン帝国のゲリラ戦を展開しながら北上し、翌1917年にはアカバを攻略し、エルサレムにも進撃します。

 しかし、その裏でイギリスは、サイクス・ピコ協定を結んで大戦後の中東分割をフランスとの間で密約し、さらに、バルフォア宣言を発して、パレスチナにユダヤ人の民族的郷土を作ることに同意するなど、フサイン・マクマホン書簡の密約と矛盾する内容の外交を展開していました。

 こうした英国の“三枚舌外交”は、アラブ側に英国に対する不信感を抱かせることになりましたが、それでも、1918年に入ると、ファイサル率いるアラブ軍とアレンビー率いる英軍は、共同作戦を展開して勝利を重ね、9月30日にはダマスカスを占領。ファイサルを首班とするアラブ政府の樹立が宣言され、レヴァント内陸部の広大な地域は英国の占領下に置かれました。

 こうして、歴史的に“シリア”と呼ばれていた地域が、第一次大戦後のオスマン帝国の解体に伴い、分割されることでシリアの現代史がスタートします。「楽しく学ぼう シリア現代史」では、その後、フランス委任統治時代を経て現在のシリア国家が建国され、2011年の内戦にいたるまで、どのような歴史をたどっていったのか、僕の専門である切手や郵便物も使いながら、できるだけわかりやすく解説していこうというものです。

 配信は毎週木曜日の18:00を予定しており、どなたでも無料でご覧いただけますので、来週以降もご贔屓のほど、よろしくお願いいたします。

 * 2015年4月から配信していた「きちんと学ぼう!ユダヤと世界史:ユダヤ陰謀論を叱る」は、無事、今年(2016年)2月1日に最終回を迎えました。いままでご視聴いただいた皆様には、この場をお借りしてお礼申し上げます。なお、同番組は、今後も、こちらでご覧いただけますので、よろしかったら、ご覧ください。
 

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