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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ピシュペク・フルンゼ・ビシュケク
2016-08-31 Wed 10:08
 中央アジアのキルギスが1991年8月30日に旧ソ連から独立して、きょうでちょうど25年ですが、その節目を狙うかのように、きのう(29日)、首都ビシュケク(ビシケクとも)の中国大使館で門を突き破った車が敷地内で爆発してキルギス人の職員3人が負傷する自爆テロが発生しました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ロシア・ピシュペク消

 これは、1922年、ビシュケクで使用されたロシア切手で、当時のロシア語の地名“ピシュペク”表示の消印が押されています。この切手が使用された時点では、すでに、1917年の革命によりロシア帝国は崩壊していますが、ピシュペクでは郵便物の取扱量が少なかったこともあり、1922年のソ連成立までは、帝政時代の切手もそのまま有効とされていました。

 ビシュケクは、キルギス北部、カザフスタンとの国境にも近いアラ・トー山地の麓、チュイ川の流れる標高750mのチュイ峡谷に位置しています。

 もともと、この地は天山山脈を通るキャラバンの停泊地としてソグド人が築いたものと考えられており、キルギス人の進出は15世紀以降のことです。また、ビシュケクの地名の由来には諸説あり、①キルギスの国民酒である馬乳酒 を作る際の攪拌器の名前、②18世紀にこの地を支配していたキルギス人の名、③“山の下の地”を意味するソグド語またはペルシャ語、などが挙げられています。

 1825年、ウズベク系のコーカンド・ハン国が要塞を建設したのが都市としての原点で、1845年以降、ロシア帝国が侵攻を開始。その後、ロシアとコーカンド・ハン国による争奪戦の後、1862年、ロシア軍が占領し、この地をピシュペクと命名した。これを機に、ロシア各地から農民の入植がはじまり、キルギス人はパミール高原やアフガニスタンに脱出していくことになります。

 1917年のロシア革命を経て、1922年末にソヴィエト社会主義共和国連邦が成立すると、中央アジアでは民族別の領域区分が導入されることになり、1924年、民族・共和国境界画定が行われます。これにより、キルギス人の居住地域は、ロシア共和国に帰属するカラ・キルギス自治州とされました。カラ・キルギス自治州は、1925年にはキルギス自治州に改称され、1926年にキルギス社会主義自治共和国となります。これに伴い、同地出身でロシア革命時の赤軍司令官、ミハイル・フルンゼ(1925年没)にちなんで、ピシュペクはフルンゼと改名され、自治共和国の首都となったフルンゼはキルギスの政治・経済・文化の中心となります。なお、1936年、自治共和国は、ソ連邦の構成共和国として、キルギス・ソヴィエト社会主義共和国に昇格しました。

 ソ連末期、ペレストロイカの進展により各地で民族対立が噴出しますが、キルギス南部のオシュでは、1990年6月4日、キルギス人とウズベク人の衝突により、600人以上の死者・行方不明者と4000人以上の負傷者が発生。これを機に、既存の共産党体制に対する住民の不満が高まり、同年10月に行われた共和国最高会議では、キルギスタン共産党第一書記のアブサマト・マサリエフを破って、民主派の支持を受けたキルギス科学アカデミー総裁のアスカル・アカエフが当選します。

 こうした中で、1991年2月、キルギス民族主義の高揚に伴い、フルンゼはビシュケクの旧称に戻り、同年8月のソ連保守派によるクーデターに反対し、8月31日、キルギスタン共和国のソ連からの独立が宣言されました。これが、現在のキルギス国家の直接のルーツとなります。

 なお、ソ連時代のフルンゼはロシア人が多数を占めていたが、現在のビシュケクは人口の大半はキルギス人で、その他、ロシア人、高麗人やウイグル人、タタール人、ドンガン人、ウクライナ人などが混在する多民族都市となっています。


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