2016-03-27 Sun 16:51
きょう(27日)はイースターです。というわけで、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1942年4月5日、ヴォルテンベルク捕虜収容所で発行された“イースター・ポスト”用の切手です。 1939年9月、ドイツ軍がポーランドを占領すると、42万人のポーランド軍兵士と2万人の将校が捕虜となり、その収容施設の確保が深刻な問題となりました。当初、捕虜たちはテント村を含め28カ所に分けて収容されていましたが、1942年以降、収容所はヴォルテンベルク(現ポーランド:ドビエグニエフ)、ノイブランデンブルク(ドイツ・メクレンブルク=フォアポンメルン州)、グロス・ボルン(現ポーランド:ボルネ・スリノヴォ)、ドッセル(ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州)、ムルナウ・アム・スタッフェルゼー(ドイツ・バイエルン州)の5ヵ所に集約されました。 そうしたなかで、ヴォルテンベルク収容所では、1942年4月5-7日のイースター期間にあわせて、“イースター・ポスト”と称する実験的なローカル郵便が実施されます。 イースター・ポストは、収容所内の捕虜同士がイースターのグリーティング・カードを有料で交換することを通じて、ポーランドの戦争未亡人・孤児のための募金を集めるという趣旨のもとに行われたもので、収容されている捕虜間の通信実験も兼ねていました。そして、その料金を徴収する手段として、4月5日、未亡人と孤児を描く“切手”が収容所内で製造されました。 今回ご紹介の切手はそのうちの1枚で、ほかにも、同図案で赤、茶、灰緑、青など刷色の異なる切手が総計2万枚発行され、グリーティング・カード(こちらも収容所内で製造)の交換に用いられました。ちなみに、右上の“FWS”の表示は“未亡人・孤児基金”を意味するポーランド語“ Fundusz dla Wdów i Sierót”の頭文字で、切手上部の“Poczta obozowa”は“収容所郵便”を意味しています。 この時のイースター・ポストがトラブルなく運営されたことを受けて、1942年5月7日以降、ヴォルテンベルク収容所内での日常的な通信手段として、ローカル郵便が正式に発足。その後、ノイブランデンブルク、グロス・ボルン、ムルナウ・アム・スタッフェルゼーの各収容所でも類似の制度が導入されました。ちなみに、ヴォルテンベルク収容所では、ソ連軍の接近に伴い、1945年1月28日に捕虜たちは西方に向けて移動させられますが、ローカル郵便は、その直前の1月25日まで扱われています。 ★★★ 講座のご案内 ★★★ ・よみうりカルチャー荻窪 「宗教と国際政治」 4月から毎月第1火曜の15:30より、よみうりカルチャー荻窪(読売・日本テレビ文化センター、TEL 03-3392-8891)で講座「宗教と国際政治」がスタートします。ぜひ、遊びに来てください。詳細は、こちらをご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の新刊 『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 2350円+税 【出版元より】 若く美しい女王の横顔に恋しよう! 世界最初の切手 欲しくないですか/知りたくないですか 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。 ★★★ 内藤陽介の新刊 『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 2000円+税 【出版元より】 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。 インターネット放送「チャンネルくらら」にて、本書の内容をご紹介しております。よろしかったら、こちらをクリックしたご覧ください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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